デイジー・ベル
毎日飽きもせずキバナはリネアを送る。時々コーヒーとカフェラテを買って公園でしゃべることもあった。それがリネアにとって最大の癒しでもあり幸せでもある。さらにゴム底靴の人物もあの日以降、耳にすることはなかった。
「商店街で追いかけていた人も気配がなくなりましたし、明日から一人で帰ってみます」
「それはいいんだけどよ…」
キバナはリネアに肩を寄せる。何か言いたげな雰囲気にじっと待つ。
「オレさまはリネアと一緒にいてぇんだけど」
キバナはとっくの昔にそんなこと気づいていたのだ。返すべき言葉もない。リネアもキバナと一緒にいたいから。
「けど、あんまりリネアを困らせるのも良くないよな」
「いえ、そんなことはないです……キバナさんは無知な私を笑わずにいろんなことを教えてくれますし、とても楽しいです」
「それならいいけど…ほら、オレさまって人気だろ?リネアに迷惑かけてねぇかなって思ってたところだ」
「迷惑……?例えば?」
キバナはハッとする。リネアには写真を撮ってSNSにアップするという概念が薄い。そのためキバナの言う事にピンときていないようだった。
「いや、こっちの話だ。今度レコードの話聞かせてくれよ」
「はい!キバナさんにぴったりな曲があるんです!」
「オレさまに?」
意味深に笑う。イタズラを仕掛けたような顔をみて子供らしさを感じた。キバナの存在がそうさせているのならこんなにも嬉しいことはない。
「楽しみにして待ってるぜ」
「はい!」
手を握り夕日の中を進む。そんな二人を見ている人物が居るとも知らずに。
実は兼ねてよりナックルシティを盛り上げるため、別の地方の商業施設のバイヤーたちの会合が開かれていた。ナックルジムはナックルシティの顔であるため当然キバナもその会議に出席する。だが経理だの予算だの、キバナ自身この場にいる意味を感じられなかった。もし関わりがあるとするならば広告塔で写真を撮るくらいだろう。
会議が終わるとめざとい会社の社長がキバナに名刺を渡してくる。他地方の…特にポケモンジムという形態をとっていないアローラ地方ではキバナの知名度も高が知れている。便利な広告塔くらいにしか思っていないのだろう。
愛想良く挨拶を交わすが時間が経つとともに顔も名前もぼんやり忘れていくはずだ。そう感じている中、一人だけキバナが顔を覚える人物が現れる。
「どうも、私はアローラのマリエシティで広告代理店を経営しています。ウォンテツと言います」
「初めまして」
「突然なのですが……先日、年末のエキシビジョンマッチを拝見したのですが、リネアさんが出場していて驚いたんです」
「リネアを、ご存じで」
「はい、うちの息子と幼い頃遊んでいました」
へえ!とキバナの顔つきが変わる。
「リネアはアローラ出身って言ってたんで、出身地までは聞かなかったんですが…マリエシティ、ですか」
「とはいえうちのバカ息子がご迷惑ばかりかけていて…ガラルに引っ越しすると聞いた時は驚きましたよ」
「リネアはうちの自慢のアドバイザーです。ウォンテツさんのことも伝えますよ」
「そりゃありがたい」
禿げた頭を自分でぺちんと叩いておどける。人の良さそうな笑顔にキバナも同じく笑顔で応えた。
意外なところでリネアのことを知ることができたキバナはマリエシティについて聞いてみようと軽い足取りでジムへ戻る。会議は面倒だが今回は悪くない、などと思いつつ城の外周を通っていく。
ジムへ入るとキバナが来た、ということでファンが遠巻きから声援を送る。スタッフ通用口を抜けて事務局へようやく帰還した。
「ただいまー」
「お疲れ様ですキバナさま」
事務局にトレーナーたちがいないのはいつものことだがリネアもいない。メールを確認後、トレーニングをしているであろうフィールド場に顔を出そうと思っていた。
だがヒトミがリネアを連れて戻ってきたことでキバナの表情は一変する。まるで逃げ込むようにドアを開けてリネアを椅子に座らせた。キバナは即座に状況を確認する。
「何があった」
「キバナさま…実はリネアさんのお知り合いが本日の講習にいたようで…」
ヒトミが言葉を濁すため、あまり人前で言うような内容ではないと察する。リネアは俯いて自分の手をずっと握りしめていた。
「リネア、大丈夫か」
「はっ、はい!なんとも、ありません!」
笑顔を作りきれていないのがリネアの精神を如実に表している。キバナは金庫から鍵を取り出し手首に引っ掛けた。クレッフィのように多くの鍵を束ねた古めかしくも大きな輪っかはリネアが持つとバッグのように見えるだろう。
「リネア、ちょっと来い」
ヒトミがその鍵束を見て察した。やはりリネアは辛い状況であり、見抜いたキバナが落ち着ける場所を提供するのだと。ジムは大丈夫だとアイコンタクトを送り、二人を見届けた。
ジムを出て城壁に備えられた扉を開ける。今日の宝物庫担当がキバナを見て挨拶する。リネアも会釈をしてついていった。
さらに扉。次も扉。奥へと進むがキバナは足を止める。
「よし、リネアちょっと抱き上げるぞ」
「はい?」
キバナはひょいっとリネアを抱えて階段を登る。長く続く階段を一歩一歩登るたびに振動が伝わり、申し訳なくなる。
そしてジムのフィールド場で起こった出来事を思い出し悲しくなっていた。
「よし、到着だ」
抱きかかえたままキバナはナックルシティにそびえる城の教会、今は使われなくなったステンドグラスの場所を訪れていた。ジムトレーナーたちに何かあるたびにキバナはここに案内し、光を通して教会内が彩られる光景をみせていたのだ。だがリネアには何も映らない。少しでも色が感じるようにと、ステンドグラスの色がついた光る影に足を踏み入れる。
「あっ……今…何か」
「お!じゃあこっちはどうだ」
「薄い、青?」
「そうだ!こっちはピンク!」
飛ぶように色の箇所へ移る。リネアの光を受け取る器官が息を吹き返したようだ。
「どうして、色のあるライトがこんなにあるんですか?」
「ここは昔使われてた教会だ。ステンドグラスっていってガラスに色をつけて模様を描いた作品が窓にそのままつけられてる。だから太陽の光を通して色が見えるってわけだ」
本当に微かだが、リネアにも色がわかってキバナは安心した。そしてゆっくりとおろす。
「落ち込んだり、なんかやらかす時には全員ここに連れてくる。落ち着くまで黙ってるのもいいし吐き出すのもいい」
「……ありがとうございます、キバナさん」
「オレさまはみんなにやってることをやっただけだ。そして、これはリネア専用」
柔らかく包むように抱きしめる。リネアはキバナの匂いを吸って、強く抱き返す。
「なんかあったんだろ。やなこと言われたか?」
リネアは頷いた。こんなに可愛いリネアになんてことを、と思うのは恋という色眼鏡がついているからだろう。できるだけ客観的に中立でいるよう自身に命令を下した。
そうして年相応に泣きじゃくる。涙がぼろぼろと落ちてひゃっくりまで出る始末。キバナは背中を撫でて今はじっと慰めるのみ。
「あ……パーカー…涙で汚しちゃった、かも」
「んなこと気にしないでいいんだよ!」
最後に力を込めて潰さない程度にぎゅっと抱きしめてやる。すぐ力を緩めるとリネアはおかしそうに笑っていた。それが可愛くて何度も強く抱きしめては緩め、遊んでいた。
ようやく泣き止み、リネアは何があったのか話す気になったようだ。
「実は…とても小さい時に数軒隣に住んでいた幼馴染がナックルジムの見学にきていたんです」
キバナの顔に影がかかる。やはり会議に出て良かった。少なくともウォンテツの親族であると当たりをつけられたからだ。
「私がガラルにきた理由は目のことだけじゃなくて、その子も一因だったんです。あまり……いい思い出がなくて」
「そうか……」
ナックルシティというキバナのフィールドに来たのが運の尽きだ。どう料理してやろうか考えているとリネアは言う。
「エキシビジョンで勝てたのはたまたまだって言うから、他の地方の番組わざわざ見てたの?って聞いたんです」
キバナはつい吹き出す。リネアはなぜ笑っているのか分からず首を傾げていた。十中八九、その幼馴染とやらはリネアに片想いなのだろう。
「それで?」
「逆上されて、すごく怒鳴られて……昔のこと思い出して苦しくなって……」
「あーあ、リネアが口で一枚上手だったから悔しくてひどい言葉しか出なかったんだなそいつは」
頬を撫でながら、キバナはリネアの頭にキスをする。キバナの家へ行った時以来のキスだ。ただ頭にされただけなのにリネアは顔が赤い。キスの音が反響してよく聞こえてしまう。
「き、キバナさん」
「悪い記憶は追い出しちまおう。よっと」
また簡単に…ぬいぐるみのように抱き上げられて何度もキスを受ける。軽くするものばかりだったのに突然、惜しむようにじっとりと側頭部に。
リネアの指先に静電気が流れたような感覚がした。
「はず、かしいです」
「はは、オレさまも」
ちゅ…っと耳のそばでキスを打つ。そのまま唇を離さず、甘く、とろけるように囁いた。
「やなこと言われるたびオレさまがキスしてやる」
リネアはあっという間にキバナの檻の中。鍵があいているのに逃げる選択肢すらない。少女の顔が少しずつ変化していく。美しい表情にキバナは酔いしれた。
「これから、ずっとですか……?」
「リネアが飽きるまでずっとだ」
口元を覆って困った顔をしていたが、嫌ではないらしい。
「じゃあ、私もキバナにキスしていいですか?」
「それはいつでも大歓迎」
リネアはキバナの首に腕を絡めて、頬にキスした。キバナを真似てちゅっと音を出す。
「っほ、っぺたは、まだ早いだろ!」
「ええ!?」
「もっとこう、段階を、踏んでだな……」
「キバナさんって……意外と……奥手?」
「悪かったな!好きな子には真剣なんだよ!」
こういうところがリネアは大好きだ。普段ナルシストであるが努力を怠らず他人も磨こうとし、内面は優しい。しっかり抱きついて呟く。
「キバナさんだーいすき」
キバナは囁きのように聞こえて勝手に心臓が跳ねた。心臓に最も近いリネアが腹に響くような鼓動を感じて驚く。
「キバナさん心臓すっごく大きいですね!?」
「あ、あのなぁ……オレさま今リネアにドキドキしてんだけど状況わかってんのか?」
リネアのためと行動する度にすぐリネアからお釣りが返ってくる。それが意図的でないことが恐ろしい。魔性的で、キバナをどこまでも虜にさせるだろう。
外堀を埋めるどころか、埋められて逃げられないのはキバナの方だった。
その日、リネアの幼馴染は大人しくジムを去ったようだ。だが翌日の夕方、リネアがジムを出る時間帯になると入り口付近でスマホロトムを触る彼がいた。ヒトミがキバナに報告すると、しめしめと不敵な笑みを浮かべる。
「キバナさま…大人気ないことはやめてくださいよ」
「まだ何もしてないだろ」
これからするから釘を刺したのだが効果はないらしい。
「リネア、遠回りになるが裏門から出るか?」
「は…はい……そうします」
あのリネアが逃げることを迷うことなく選択する。つまりそういうことだ。キバナは裏門からリネアと共に出る。大通りまで送りあとは一人でも家へ帰れるだろう。キバナはこのあとあの幼馴染にお灸を据えてやらなくてはならない。
が、また明日と挨拶したとたんサーナイトが出てきたのだ。いつもと様子が違う。首を何度も横に振ってリネアの行手を阻んでいる。
「どうしたのサーナイト、何かあったの?」
何も言わずにそこに佇む。
「何か“見た”感じだな。サーナイトはトレーナーの未来を察知する。やっぱり家までついていくがいいか?」
「はい…ここまで頑ななサーナイト初めてですし…お願いします」
一緒に帰ると理解した途端ボールへ戻る。やはり一人でいることがまずいのだろう。キバナは気を引き締めて進む。
「おいリネア!」
後ろから不躾に呼ぶ声。
共に振り返るとリネアと同じ年頃の子供がいた。ツンツンとした髪型とリネアを見下す目。まさにこいつが幼馴染だ。
キバナはリネアを背後にやる。
「よお、リネアの幼馴染なんだってな」
「誰だよおじさん、すっこんでろよ」
「お、おじ」
キバナの自認はまだ「お兄さん」だ。ただでさえリネアのことではらわた煮えくり返っているのに、怒りのボルテージが上がっていく。
「キバナさんはおじさんじゃないよ、シンテツ」
「どうだっていいだろ。お前マリエシティから逃げておじさんと手なんか繋いでさ。恥ずかしくねーの?」
シンテツ、と呼ばれた子どもはキバナの後ろのリネアに近づこうとするため肩を掴み阻んだ。
「近づくな。離れろ」
「触るんじゃねーよ!」
「お前、わかってねーのか?リネアに怖がられてるぞ」
「だったらなんだよ!」
「オレが黙ってない」
低い声で威圧する。ようやくキバナの怒りを理解したようだ。少し怖気付いた顔をしたため畳み掛ける。
「アローラからガラルまでご苦労なことだな。そこまで気にかけておいて好きな女の感情すら見誤るなんざ、可哀想でしかたがない」
「説教のつもりかよ!だいたいその女なんか目も見えねーし好きになるわけねーだろ!」
リネアはキバナの手を両手で握っている。そんなリネアに耳元で囁いた。
「あとでおまじないしような」
それだけでリネアの頬が熱くなる。たくさんのキスがくると知って思い出すのはキスの音。
「は……?何言ってんだよ、おいリネアこっち見ろよ!聞いてんのかブス!」
シンテツが暴言を吐く度にリネアは顔を赤らめる。キバナの作戦勝ちだ。
「じゃあな、リネアはオレさまがもらっていく」
「何言って」
「それ以上踏み込んだらバトルだ。お前ボール持ってるだろ。相手になってやるよ」
動くことはなかった。キバナはリネアの肩を抱いて悠々と歩く。悔しくなったシンテツはリネアに罵詈雑言を浴びせていたものの後にその分キスされるのでリネアは耳まで真っ赤にさせていた。
キバナが次に気にするのは、サーナイトの予知だ。おそらくシンテツに遭遇すること以上の何かがあるはずだ。リネアはシンテツと遭遇することは忌避していたが耐えられないものではない。なぜなら久々にシンテツと出会ったあの日、サーナイトはひとつも警告していなかったからだ。
リネアの人生および精神に強い負荷がかかる場合にのみサーナイトは警告するのだろう。
キバナは警戒を緩めない。リネアを落ち着かせながら今まで何度も往復した道を進む。だが拍子抜けするくらい何もない。あっという間に玄関が見えた。
「キバナさん…先ほどはありがとうございました」
「にしたって性格の悪いガキだったな。あんなの逃げて正解だ」
「でも…キバナさんがいてくれたから、平気でした」
可愛いリネアのためならあんな言葉喜んで跳ね返す。もうリネアは一人で戦わなくていいのだ。
「あの、よかったら…お茶飲みませんか?」
「気持ちだけもらうぜ。ありがとな」
「キバナさんならそう言うと思った」
ふふっと笑いながらリネアは鍵を取り出す。
「今日は早めに休め。疲れたろ」
「はい、キバナさんもゆっくりお休みください」
扉に鍵を差し込み、玄関を開けた。キバナがにこやかに挨拶しようとしたのだが、玄関の奥にいる人物を見て思考が止まる。
「リネア、来い」
咄嗟に腕を引いて玄関を閉めた。足で玄関を押さえつける。
「え?え?」
「ここにいろ」
流石にキバナも驚いて心臓がバクバクしている。整然とした部屋の奥にいたのはシンテツの親族、ウォンテツだ。リネアはわからないのも当然だが、おそらく帰ってくるのを待ち構えていたのだろう。しっかりとキバナと目があってしまい、ウォンテツは大慌てで玄関を叩く。
内側から響くノックにリネアはキバナに飛びついた。
「え!?え!?」
「何も聞くな。いいか、何も考えるな」
上着を脱いでリネアの頭にかける。その直後、ウォンテツの声が聞こえた。
「ち、違うんです、これは、リネアさんの両親に頼まれていて」
キバナは何も言わない。玄関が開かないよう足で押さえつけているだけだ。そしてスマホロトムで迅速に通報する。
仮に頼まれていたとしても、リネアを裸で待ち構える必要性はないはずだ。
程なくして警察がやってくる。パトカーの音に気付き窓から逃げたがガーディの追跡力に勝てるはずがない。程なくして逮捕されることとなった。
「あの……もしかして家の中に、だっ、だれか、いたんですか」
「まぁ、そうだな」
リネアは未成年だ。そのため保護者である祖父が駆けつけた。普段は威厳のある顔つきなのだろうが孫の危機に心配の色を露わにしている。
「リネア!お前怪我はないのか!?」
「おじいちゃん……私は大丈夫……キバナさんがいてくれたから」
しっかり抱きしめた後、キバナと向き合い深く礼をした。
「孫を助けていただきありがとうございます」
「オレはただ通報しただけですよ。いつも助けられてるのはこっちです」
「いつも孫からキバナさんのことは聞いています。親身になって話をしてくれると喜んでおります。どうぞこれからも仲良くしてやってください」
「あ、いや、こちらこそ」
一瞬、好意を寄せていることを知られているのかと思ったがそうではないらしい。今、この状況でリネアにそういう気持ちがあると知られたならばナックルシティの城壁に磔にされてしまうだろう。
「すみません、リネアさん、当時の状況を伺いたいのですがいいですか?」
「は、はい」
「キバナさんも、後程お話を聞かせてください」
「ああ」
リネアは警察の手に引かれて車両の中で事情聴取される。この場に残ったキバナと祖父。夜の景色に赤いランプがぐるぐると回っている。
「キバナさん、たとえ恩人でもうちの孫に手を出すとどうなるか想像は難くないでしょう」
「…………………はい」
「そういう気が無くとも、御自覚なさってください」
「おっしゃる通りです………………」
やはりリネアの祖父には見抜かれていた。キバナは今一度、理性を持って接しなければならない。
「とはいえ孫が喜んでいるのは確かです。知らないことを笑わず丁寧に教えてくれると…その話をきいて安心しております。どうかリネアを今後もよろしくお願いします」
「こちらこそ、リネアさんにはいつもオレの知らない世界を見せてくれています。責任持って今後も見守らせてください」
双方深く頭を下げる。祖父もキバナの態度を見てようやく笑い皺を浮かばせた。その笑顔はリネアとそっくりでキバナも朗らかな気持ちにさせられた。
ウォンテツの所持品からゴム底の靴が見つかったようでリネアを追いかけていた人物も判明した。ウォンテツが逮捕されたのはマリエシティでも衝撃だったようで両親も事件の翌日には寝ずにガラルへやってきた。わざわざナックルジムへキバナに挨拶に来た時の表情にクマを抱えておりキバナも心配するほどだった。
だがリネアが両親の来訪に喜んでいたのも事実だ。子どもらしい表情を浮かべて母親の手を喜んで握る。安心して笑う様子をキバナは静かに見守っていた。
「商店街で追いかけていた人も気配がなくなりましたし、明日から一人で帰ってみます」
「それはいいんだけどよ…」
キバナはリネアに肩を寄せる。何か言いたげな雰囲気にじっと待つ。
「オレさまはリネアと一緒にいてぇんだけど」
キバナはとっくの昔にそんなこと気づいていたのだ。返すべき言葉もない。リネアもキバナと一緒にいたいから。
「けど、あんまりリネアを困らせるのも良くないよな」
「いえ、そんなことはないです……キバナさんは無知な私を笑わずにいろんなことを教えてくれますし、とても楽しいです」
「それならいいけど…ほら、オレさまって人気だろ?リネアに迷惑かけてねぇかなって思ってたところだ」
「迷惑……?例えば?」
キバナはハッとする。リネアには写真を撮ってSNSにアップするという概念が薄い。そのためキバナの言う事にピンときていないようだった。
「いや、こっちの話だ。今度レコードの話聞かせてくれよ」
「はい!キバナさんにぴったりな曲があるんです!」
「オレさまに?」
意味深に笑う。イタズラを仕掛けたような顔をみて子供らしさを感じた。キバナの存在がそうさせているのならこんなにも嬉しいことはない。
「楽しみにして待ってるぜ」
「はい!」
手を握り夕日の中を進む。そんな二人を見ている人物が居るとも知らずに。
実は兼ねてよりナックルシティを盛り上げるため、別の地方の商業施設のバイヤーたちの会合が開かれていた。ナックルジムはナックルシティの顔であるため当然キバナもその会議に出席する。だが経理だの予算だの、キバナ自身この場にいる意味を感じられなかった。もし関わりがあるとするならば広告塔で写真を撮るくらいだろう。
会議が終わるとめざとい会社の社長がキバナに名刺を渡してくる。他地方の…特にポケモンジムという形態をとっていないアローラ地方ではキバナの知名度も高が知れている。便利な広告塔くらいにしか思っていないのだろう。
愛想良く挨拶を交わすが時間が経つとともに顔も名前もぼんやり忘れていくはずだ。そう感じている中、一人だけキバナが顔を覚える人物が現れる。
「どうも、私はアローラのマリエシティで広告代理店を経営しています。ウォンテツと言います」
「初めまして」
「突然なのですが……先日、年末のエキシビジョンマッチを拝見したのですが、リネアさんが出場していて驚いたんです」
「リネアを、ご存じで」
「はい、うちの息子と幼い頃遊んでいました」
へえ!とキバナの顔つきが変わる。
「リネアはアローラ出身って言ってたんで、出身地までは聞かなかったんですが…マリエシティ、ですか」
「とはいえうちのバカ息子がご迷惑ばかりかけていて…ガラルに引っ越しすると聞いた時は驚きましたよ」
「リネアはうちの自慢のアドバイザーです。ウォンテツさんのことも伝えますよ」
「そりゃありがたい」
禿げた頭を自分でぺちんと叩いておどける。人の良さそうな笑顔にキバナも同じく笑顔で応えた。
意外なところでリネアのことを知ることができたキバナはマリエシティについて聞いてみようと軽い足取りでジムへ戻る。会議は面倒だが今回は悪くない、などと思いつつ城の外周を通っていく。
ジムへ入るとキバナが来た、ということでファンが遠巻きから声援を送る。スタッフ通用口を抜けて事務局へようやく帰還した。
「ただいまー」
「お疲れ様ですキバナさま」
事務局にトレーナーたちがいないのはいつものことだがリネアもいない。メールを確認後、トレーニングをしているであろうフィールド場に顔を出そうと思っていた。
だがヒトミがリネアを連れて戻ってきたことでキバナの表情は一変する。まるで逃げ込むようにドアを開けてリネアを椅子に座らせた。キバナは即座に状況を確認する。
「何があった」
「キバナさま…実はリネアさんのお知り合いが本日の講習にいたようで…」
ヒトミが言葉を濁すため、あまり人前で言うような内容ではないと察する。リネアは俯いて自分の手をずっと握りしめていた。
「リネア、大丈夫か」
「はっ、はい!なんとも、ありません!」
笑顔を作りきれていないのがリネアの精神を如実に表している。キバナは金庫から鍵を取り出し手首に引っ掛けた。クレッフィのように多くの鍵を束ねた古めかしくも大きな輪っかはリネアが持つとバッグのように見えるだろう。
「リネア、ちょっと来い」
ヒトミがその鍵束を見て察した。やはりリネアは辛い状況であり、見抜いたキバナが落ち着ける場所を提供するのだと。ジムは大丈夫だとアイコンタクトを送り、二人を見届けた。
ジムを出て城壁に備えられた扉を開ける。今日の宝物庫担当がキバナを見て挨拶する。リネアも会釈をしてついていった。
さらに扉。次も扉。奥へと進むがキバナは足を止める。
「よし、リネアちょっと抱き上げるぞ」
「はい?」
キバナはひょいっとリネアを抱えて階段を登る。長く続く階段を一歩一歩登るたびに振動が伝わり、申し訳なくなる。
そしてジムのフィールド場で起こった出来事を思い出し悲しくなっていた。
「よし、到着だ」
抱きかかえたままキバナはナックルシティにそびえる城の教会、今は使われなくなったステンドグラスの場所を訪れていた。ジムトレーナーたちに何かあるたびにキバナはここに案内し、光を通して教会内が彩られる光景をみせていたのだ。だがリネアには何も映らない。少しでも色が感じるようにと、ステンドグラスの色がついた光る影に足を踏み入れる。
「あっ……今…何か」
「お!じゃあこっちはどうだ」
「薄い、青?」
「そうだ!こっちはピンク!」
飛ぶように色の箇所へ移る。リネアの光を受け取る器官が息を吹き返したようだ。
「どうして、色のあるライトがこんなにあるんですか?」
「ここは昔使われてた教会だ。ステンドグラスっていってガラスに色をつけて模様を描いた作品が窓にそのままつけられてる。だから太陽の光を通して色が見えるってわけだ」
本当に微かだが、リネアにも色がわかってキバナは安心した。そしてゆっくりとおろす。
「落ち込んだり、なんかやらかす時には全員ここに連れてくる。落ち着くまで黙ってるのもいいし吐き出すのもいい」
「……ありがとうございます、キバナさん」
「オレさまはみんなにやってることをやっただけだ。そして、これはリネア専用」
柔らかく包むように抱きしめる。リネアはキバナの匂いを吸って、強く抱き返す。
「なんかあったんだろ。やなこと言われたか?」
リネアは頷いた。こんなに可愛いリネアになんてことを、と思うのは恋という色眼鏡がついているからだろう。できるだけ客観的に中立でいるよう自身に命令を下した。
そうして年相応に泣きじゃくる。涙がぼろぼろと落ちてひゃっくりまで出る始末。キバナは背中を撫でて今はじっと慰めるのみ。
「あ……パーカー…涙で汚しちゃった、かも」
「んなこと気にしないでいいんだよ!」
最後に力を込めて潰さない程度にぎゅっと抱きしめてやる。すぐ力を緩めるとリネアはおかしそうに笑っていた。それが可愛くて何度も強く抱きしめては緩め、遊んでいた。
ようやく泣き止み、リネアは何があったのか話す気になったようだ。
「実は…とても小さい時に数軒隣に住んでいた幼馴染がナックルジムの見学にきていたんです」
キバナの顔に影がかかる。やはり会議に出て良かった。少なくともウォンテツの親族であると当たりをつけられたからだ。
「私がガラルにきた理由は目のことだけじゃなくて、その子も一因だったんです。あまり……いい思い出がなくて」
「そうか……」
ナックルシティというキバナのフィールドに来たのが運の尽きだ。どう料理してやろうか考えているとリネアは言う。
「エキシビジョンで勝てたのはたまたまだって言うから、他の地方の番組わざわざ見てたの?って聞いたんです」
キバナはつい吹き出す。リネアはなぜ笑っているのか分からず首を傾げていた。十中八九、その幼馴染とやらはリネアに片想いなのだろう。
「それで?」
「逆上されて、すごく怒鳴られて……昔のこと思い出して苦しくなって……」
「あーあ、リネアが口で一枚上手だったから悔しくてひどい言葉しか出なかったんだなそいつは」
頬を撫でながら、キバナはリネアの頭にキスをする。キバナの家へ行った時以来のキスだ。ただ頭にされただけなのにリネアは顔が赤い。キスの音が反響してよく聞こえてしまう。
「き、キバナさん」
「悪い記憶は追い出しちまおう。よっと」
また簡単に…ぬいぐるみのように抱き上げられて何度もキスを受ける。軽くするものばかりだったのに突然、惜しむようにじっとりと側頭部に。
リネアの指先に静電気が流れたような感覚がした。
「はず、かしいです」
「はは、オレさまも」
ちゅ…っと耳のそばでキスを打つ。そのまま唇を離さず、甘く、とろけるように囁いた。
「やなこと言われるたびオレさまがキスしてやる」
リネアはあっという間にキバナの檻の中。鍵があいているのに逃げる選択肢すらない。少女の顔が少しずつ変化していく。美しい表情にキバナは酔いしれた。
「これから、ずっとですか……?」
「リネアが飽きるまでずっとだ」
口元を覆って困った顔をしていたが、嫌ではないらしい。
「じゃあ、私もキバナにキスしていいですか?」
「それはいつでも大歓迎」
リネアはキバナの首に腕を絡めて、頬にキスした。キバナを真似てちゅっと音を出す。
「っほ、っぺたは、まだ早いだろ!」
「ええ!?」
「もっとこう、段階を、踏んでだな……」
「キバナさんって……意外と……奥手?」
「悪かったな!好きな子には真剣なんだよ!」
こういうところがリネアは大好きだ。普段ナルシストであるが努力を怠らず他人も磨こうとし、内面は優しい。しっかり抱きついて呟く。
「キバナさんだーいすき」
キバナは囁きのように聞こえて勝手に心臓が跳ねた。心臓に最も近いリネアが腹に響くような鼓動を感じて驚く。
「キバナさん心臓すっごく大きいですね!?」
「あ、あのなぁ……オレさま今リネアにドキドキしてんだけど状況わかってんのか?」
リネアのためと行動する度にすぐリネアからお釣りが返ってくる。それが意図的でないことが恐ろしい。魔性的で、キバナをどこまでも虜にさせるだろう。
外堀を埋めるどころか、埋められて逃げられないのはキバナの方だった。
その日、リネアの幼馴染は大人しくジムを去ったようだ。だが翌日の夕方、リネアがジムを出る時間帯になると入り口付近でスマホロトムを触る彼がいた。ヒトミがキバナに報告すると、しめしめと不敵な笑みを浮かべる。
「キバナさま…大人気ないことはやめてくださいよ」
「まだ何もしてないだろ」
これからするから釘を刺したのだが効果はないらしい。
「リネア、遠回りになるが裏門から出るか?」
「は…はい……そうします」
あのリネアが逃げることを迷うことなく選択する。つまりそういうことだ。キバナは裏門からリネアと共に出る。大通りまで送りあとは一人でも家へ帰れるだろう。キバナはこのあとあの幼馴染にお灸を据えてやらなくてはならない。
が、また明日と挨拶したとたんサーナイトが出てきたのだ。いつもと様子が違う。首を何度も横に振ってリネアの行手を阻んでいる。
「どうしたのサーナイト、何かあったの?」
何も言わずにそこに佇む。
「何か“見た”感じだな。サーナイトはトレーナーの未来を察知する。やっぱり家までついていくがいいか?」
「はい…ここまで頑ななサーナイト初めてですし…お願いします」
一緒に帰ると理解した途端ボールへ戻る。やはり一人でいることがまずいのだろう。キバナは気を引き締めて進む。
「おいリネア!」
後ろから不躾に呼ぶ声。
共に振り返るとリネアと同じ年頃の子供がいた。ツンツンとした髪型とリネアを見下す目。まさにこいつが幼馴染だ。
キバナはリネアを背後にやる。
「よお、リネアの幼馴染なんだってな」
「誰だよおじさん、すっこんでろよ」
「お、おじ」
キバナの自認はまだ「お兄さん」だ。ただでさえリネアのことではらわた煮えくり返っているのに、怒りのボルテージが上がっていく。
「キバナさんはおじさんじゃないよ、シンテツ」
「どうだっていいだろ。お前マリエシティから逃げておじさんと手なんか繋いでさ。恥ずかしくねーの?」
シンテツ、と呼ばれた子どもはキバナの後ろのリネアに近づこうとするため肩を掴み阻んだ。
「近づくな。離れろ」
「触るんじゃねーよ!」
「お前、わかってねーのか?リネアに怖がられてるぞ」
「だったらなんだよ!」
「オレが黙ってない」
低い声で威圧する。ようやくキバナの怒りを理解したようだ。少し怖気付いた顔をしたため畳み掛ける。
「アローラからガラルまでご苦労なことだな。そこまで気にかけておいて好きな女の感情すら見誤るなんざ、可哀想でしかたがない」
「説教のつもりかよ!だいたいその女なんか目も見えねーし好きになるわけねーだろ!」
リネアはキバナの手を両手で握っている。そんなリネアに耳元で囁いた。
「あとでおまじないしような」
それだけでリネアの頬が熱くなる。たくさんのキスがくると知って思い出すのはキスの音。
「は……?何言ってんだよ、おいリネアこっち見ろよ!聞いてんのかブス!」
シンテツが暴言を吐く度にリネアは顔を赤らめる。キバナの作戦勝ちだ。
「じゃあな、リネアはオレさまがもらっていく」
「何言って」
「それ以上踏み込んだらバトルだ。お前ボール持ってるだろ。相手になってやるよ」
動くことはなかった。キバナはリネアの肩を抱いて悠々と歩く。悔しくなったシンテツはリネアに罵詈雑言を浴びせていたものの後にその分キスされるのでリネアは耳まで真っ赤にさせていた。
キバナが次に気にするのは、サーナイトの予知だ。おそらくシンテツに遭遇すること以上の何かがあるはずだ。リネアはシンテツと遭遇することは忌避していたが耐えられないものではない。なぜなら久々にシンテツと出会ったあの日、サーナイトはひとつも警告していなかったからだ。
リネアの人生および精神に強い負荷がかかる場合にのみサーナイトは警告するのだろう。
キバナは警戒を緩めない。リネアを落ち着かせながら今まで何度も往復した道を進む。だが拍子抜けするくらい何もない。あっという間に玄関が見えた。
「キバナさん…先ほどはありがとうございました」
「にしたって性格の悪いガキだったな。あんなの逃げて正解だ」
「でも…キバナさんがいてくれたから、平気でした」
可愛いリネアのためならあんな言葉喜んで跳ね返す。もうリネアは一人で戦わなくていいのだ。
「あの、よかったら…お茶飲みませんか?」
「気持ちだけもらうぜ。ありがとな」
「キバナさんならそう言うと思った」
ふふっと笑いながらリネアは鍵を取り出す。
「今日は早めに休め。疲れたろ」
「はい、キバナさんもゆっくりお休みください」
扉に鍵を差し込み、玄関を開けた。キバナがにこやかに挨拶しようとしたのだが、玄関の奥にいる人物を見て思考が止まる。
「リネア、来い」
咄嗟に腕を引いて玄関を閉めた。足で玄関を押さえつける。
「え?え?」
「ここにいろ」
流石にキバナも驚いて心臓がバクバクしている。整然とした部屋の奥にいたのはシンテツの親族、ウォンテツだ。リネアはわからないのも当然だが、おそらく帰ってくるのを待ち構えていたのだろう。しっかりとキバナと目があってしまい、ウォンテツは大慌てで玄関を叩く。
内側から響くノックにリネアはキバナに飛びついた。
「え!?え!?」
「何も聞くな。いいか、何も考えるな」
上着を脱いでリネアの頭にかける。その直後、ウォンテツの声が聞こえた。
「ち、違うんです、これは、リネアさんの両親に頼まれていて」
キバナは何も言わない。玄関が開かないよう足で押さえつけているだけだ。そしてスマホロトムで迅速に通報する。
仮に頼まれていたとしても、リネアを裸で待ち構える必要性はないはずだ。
程なくして警察がやってくる。パトカーの音に気付き窓から逃げたがガーディの追跡力に勝てるはずがない。程なくして逮捕されることとなった。
「あの……もしかして家の中に、だっ、だれか、いたんですか」
「まぁ、そうだな」
リネアは未成年だ。そのため保護者である祖父が駆けつけた。普段は威厳のある顔つきなのだろうが孫の危機に心配の色を露わにしている。
「リネア!お前怪我はないのか!?」
「おじいちゃん……私は大丈夫……キバナさんがいてくれたから」
しっかり抱きしめた後、キバナと向き合い深く礼をした。
「孫を助けていただきありがとうございます」
「オレはただ通報しただけですよ。いつも助けられてるのはこっちです」
「いつも孫からキバナさんのことは聞いています。親身になって話をしてくれると喜んでおります。どうぞこれからも仲良くしてやってください」
「あ、いや、こちらこそ」
一瞬、好意を寄せていることを知られているのかと思ったがそうではないらしい。今、この状況でリネアにそういう気持ちがあると知られたならばナックルシティの城壁に磔にされてしまうだろう。
「すみません、リネアさん、当時の状況を伺いたいのですがいいですか?」
「は、はい」
「キバナさんも、後程お話を聞かせてください」
「ああ」
リネアは警察の手に引かれて車両の中で事情聴取される。この場に残ったキバナと祖父。夜の景色に赤いランプがぐるぐると回っている。
「キバナさん、たとえ恩人でもうちの孫に手を出すとどうなるか想像は難くないでしょう」
「…………………はい」
「そういう気が無くとも、御自覚なさってください」
「おっしゃる通りです………………」
やはりリネアの祖父には見抜かれていた。キバナは今一度、理性を持って接しなければならない。
「とはいえ孫が喜んでいるのは確かです。知らないことを笑わず丁寧に教えてくれると…その話をきいて安心しております。どうかリネアを今後もよろしくお願いします」
「こちらこそ、リネアさんにはいつもオレの知らない世界を見せてくれています。責任持って今後も見守らせてください」
双方深く頭を下げる。祖父もキバナの態度を見てようやく笑い皺を浮かばせた。その笑顔はリネアとそっくりでキバナも朗らかな気持ちにさせられた。
ウォンテツの所持品からゴム底の靴が見つかったようでリネアを追いかけていた人物も判明した。ウォンテツが逮捕されたのはマリエシティでも衝撃だったようで両親も事件の翌日には寝ずにガラルへやってきた。わざわざナックルジムへキバナに挨拶に来た時の表情にクマを抱えておりキバナも心配するほどだった。
だがリネアが両親の来訪に喜んでいたのも事実だ。子どもらしい表情を浮かべて母親の手を喜んで握る。安心して笑う様子をキバナは静かに見守っていた。
