栄華代役舞台 パリ

立香がインコを助けたと同時に微少特異点が現れた。現れたインコに関係があるかもしれないと言って治療をアスクレピオスに任せつつ立香は司令部へ向かった。

スライド式の扉を抜けると皆すでに解析を始めていて、いつものことながら頼りになるなぁと感動を覚える。

「ダヴィンチちゃん」
「やっほー、立香ちゃん。今回の微少特異点なんだけどまだ確立されていなくてね。もしかすればすぐに任務は終わるかもだ」
「はい、先輩、場所はフランスのパリと判明しています。比較的攻略しやすい地形と思われます」
「そっかぁ、大変じゃないならそれがいいや」

そう言って近くの座席に座る。皆が手を動かしている様は圧巻だ。ぼんやり眺めているとインコを預けたアスクレピオスが司令部にやってきた。

「マスター、喋るインコを治したぞ」
「ありがとう!……って、喋るの?この子」

アスクレピオスの手の上でぴょんぴょん跳ねている。いぶかしげに見つめるとインコは翼を広げた。

「私が美しいからってそんなに見つめないでおくれよ」
「うわあ!しゃべった!」

インコは喋る…否、人の発音を真似るもの。そう思っていたが思った以上に喋るので全員の視線が集まる。

「ちょっと、どういうこと?そのインコ、見るからに怪しいけど」
「廊下に落ちてるのを拾ったんです。やたら身体中バキバキになっていて、死んでるかもと思ったけど生きててよかった」

立香がにこりと笑いかけるとインコは瞳をうるうるさせて立香の膝に降り立つ。

「いい人…!目がキラキラしている!きっと人類にはあなたのような人が必要なはず!」
「正体不明ですが見る目は確かです!」

マシュの言葉に照れ臭くなって笑って誤魔化す。インコは続けて話し始めた。

「私はあのパリからきたんです!もう酷い目にあって…」

翼が指し示す方向はモニターに映し出されている特異点。やはり関係者だったと全員速攻で鳥籠を作り、インコをいれた。

「ってちょっとお!!私はこんなに可愛い見た目なのにどうして監禁するんですか!!」
「特異点関係者の話を聞かないといけないから…」
「だからって檻は必要ないでしょ!」

わざとらしく目元を翼で拭う。嘘っぽい演技はどこか既視感がある。

「それで、どうしてカルデアに?」
「よくぞ聞いてくださいました!私はあの特異点で暴力を受けたのです!それはもう酷い仕打ちでした…」
「そ、そうなんだ」
「あの場所には暴力的なサーヴァントが6騎もいます!どうにか倒してください!私のために!」

皆アイコンタクトを取る。何かあったのは間違いないがあまりにも利己的な発言に要注意人物(鳥)であると判断。
藤丸立香とマシュは鳥籠を持ったままレイシフトを行った。



城内部はかなり入り組んでいる。外に出ることすら困難だったため、召喚された従者たちとマップを作ることにした。

「ここから左に行ったら扉がふたつ…」
「右ね」
「え?さっき左っていったよ」
「お箸持つ方は?」
「右。あっ」

特にカヨが積極的に地図作りと敵を倒していた。もちろんほとんどは従者が行うのだが、見つけた古びた斧を持って骸骨に向かってぶん投げたりしている。

「食糧があったわよ。今日はここまでにして休みなさい」

マラヒートニッツァはカゴいっぱいのジャガイモを持っている。他にもリンゴ、パンなどなど、まるでRPGのように食材が湧き出ている。それはそれで助かるのだがいつまでもここにはいられない。

「せめてこの紙埋めるまでやりたい……」
「カヨちゃん気分悪いんじゃないの?」
「……」
「明日倒れたらどうすんの?病院もないし…って、もう普通の体じゃないけどさ」
「でも…」

俯きがちになり唇を尖らせる。肉体性能の最盛期を採用しているせいか、三姉妹は実年齢よりマイナス10歳の見た目となっている。そのためか一番幼い三女をみると小さい子供を相手にしているような気分だった。

「じゃあカヨちゃんには僕がついてるから。このエリア埋めたら戻るよ」
「そんな、悪いよ。カヨちゃん帰るよ」
「……」

マオの言うことは最も正しい。初日から飛ばしすぎると後が詰まるだろう。それを見越しての発言なのだがカヨは頷かない。

「どっちにしたってさ、この城は魔獣だってたまに出る。あの中央の部屋は安全かもしれないけどいつ襲ってくるかわからないでしょ?安全確保って意味でもフロアの地理は把握してると僕も戦いやすい」

マオは悩んでいたが、ため息をついて承諾した。

「そんなに言うなら…でも、カヨちゃんマジで何もないところで転ぶから、ハンムラビさんも一緒にいてくれない?」
「わかった」
「何もないところで転んでないよ!」
「こないだ転んで膝縫ったじゃん」

ユキの的確な指摘に再び口を閉じる。従者たちは小さく笑う。

「じゃあ私とユキちゃんとマラヒートさんで晩御飯作って待ってるからね」
「足元気をつけなよ!ほんと!」
「男たち、レディの扱いには気をつけなさいよ」

カヨ以外の女性たちはやんややんや言いながらその場を後にした。見送って、いざ調査を再開しようとすると男たちはカヨの頬をそれぞれ摘む。

「は!?にゃに!?」

「前に出過ぎ、まとめて斬りそうになっちゃったじゃん」
「同じく。姉たちを想うのはいいがそのせいで怪我をすれば姉たちの表情は陰るぞ」

説教のために残ってくれたのだろう。カヨにとってはありがた迷惑だ。

「それは…確かに、邪魔やったかもしれん」
「邪魔とかそういう話じゃなくてさ」

カヨの従者はしゃがみ込んで視線を合わせる。ゆるく腕を掴み諭すように言った。

「お姉さんたちが怪我したら悲しいって思うから戦おうとしたんだろうけど、その逆もある。前線は俺たちに任せて後ろでお姉さんたち守ってやんな」
「……でも、今のうち擬似サーヴァントなんでしょ?」
「それは本当の本当に最終手段。別の言い方だと切り札」

守られている。そう実感して眉がしなった。けれど擬似サーヴァントになった影響か、前へ前へと出たがってしまう。ポルトスとの親和性が高いのかもしれない。それはそれでめちゃくちゃ嫌だ。

「わかった…でも、私も強くなって損はないと思うから……厳しくてもいいから色々教えてほしい」
「僕の話きいてた?」
「ならば立ち位置の話をしてやろう」
「勝手に進めるのやめてくれません?」

ハンムラビはカヨを引っ張りながら扉を開ける。調査していない扉の先にはエネミーが数体。ハンムラビは即座に剣を構えた。

「いいか、戦は立ち位置一つで変わる。今一列になった場合もちろん私に攻撃が集中するが…」

カヨの後ろから刀を持って攻撃を仕掛ける。

「こうして奴が出ると一対一で対応する。だがカヨが二人の敵から見えるように立っていれば、敵は常に私とカヨの二人を見なければならなくなる」

ある程度知性を持っていれば意識は分散される。その隙をついてハンムラビは簡単にエネミーを倒した。

「こうやって切り崩せる箇所が増える。まずは立ち位置から考え、戦いを俯瞰して見るべきだ」

ガシャン、と音を立ててもう一体のエネミーも倒れる。

「か、賢っ」
「お前は理解する目があるはずだ。まずはそれを養い、戦況を見極めなさい」
「うん、わかった!」
「ちょっとちょっと…僕抜きで話進めるのやめてもらえます?」

納刀し、またカヨを説得させようと思うがその目つきはマスターそっくりでつい息を飲んだ。

「斎藤さん!うち…私頑張るから、気づいたことあったら言って!」

また素っ頓狂な理由で巻き込まれた子供が増えた。斎藤のあるはずのない胃がキリキリと痛みを出している気がする。



カルデア一行は聳え立つ城の前にいた。というのもインコが従順に案内するのでここに辿り着いたのだが、パリ、と名づけられているもののそれ以外はパリの面影などない。

「さあさどうぞ!この中に奴らがいます!きっと今回の特異点を作り出した張本人がいるはずです!」

他に目ぼしいものもないので仕方がないのだがそれはそれとしてインコの思い通りになっている気がする。

「じゃあ…入ろうか」
「はい」

二人で重い扉を開ける。広いロビーが目に入るが随分と放置されていてきらびやかな雰囲気は全く感じられなかった。

「立派なお城なのに、なんだか物悲しい雰囲気ですね」
「うん……」

明かりはない。立香たちが開けた扉から差し込む光が唯一の光源だった。

「! 敵性エネミー反応あり!」

マシュの警告に身構える。するとロビーの中央にある大階段から兵隊のような骸骨が現れた。見敵するや否やマシュが前に出る。盾を振りかざし骸骨を弾き飛ばしていた。

「やや!あの盾の女性、素晴らしい!」

後輩が褒められて鼻が高い。そうだろう、と頷いている間にマシュはエネミーを倒したようだ。

「ありがとうマシュ」
「いえ!お怪我は?」
「全然、大丈夫だよ」

落ち着いたところで改めて周囲を見渡す。扉がいくつかあるが膨大な数ではない。ひとまず目についたところから調査をしていくことになった。
扉を開ければエネミー。または食糧庫。続いて廊下。想像していたことだが城という見かけ以上に内部は入り組んでいてまるで迷宮だ。

「なんか…すごく広くない?」
「魔力反応があるのでおそらく空間が拡張されているのでしょう」
「なるほど…中の地理には詳しい?」

インコに尋ねるが首を傾げる。無我夢中で逃げてきたと言うが果たしてそういうものなのだろうか。ひとまず一行は内部調査を本格的に開始することにした。
カルデアの司令部と通信をしながら歩きつつ自動マッピングをする。迷宮とはいえ道順が変更されることはないらしい。順調に進むと上層へ続く階段を見つけた。

「階段だ」
『今日は戦闘続きだったし、安全な部屋で休んで明日から上層の調査をしようか』
「うん、わかった。マシュ、今日はここまでにしておこう」

目を見張るほどの脅威はない。簡易的なサーチでも常日頃相手にしているようなエネミーが2、3体うろついているだけだ。長丁場になれど激しい戦闘がない点は立香にとって御の字に等しい。



こうして三銃士は上から、カルデアは下から。それぞれ城のマップを作成しつつ進む。つまり両陣営が鉢合わせするのは時間の問題だった。
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