カイジたちの夜3
「これがあれば……、訓練もしないで、簡単に死を恐れない兵士を作ることができます。たとえそれが……子供や女性であっても」
「日本政府はそんなことしないわ。お金はちゃんと払うし、マインドブレイクは厳重に保管します。さぁ、トランクを渡してちょうだい」
「真理、やめるんだ!」
真理さんの前に透くんが立ちふさがった。
いつもヘラヘラしてて、馬鹿なことを言ってる透くんはそこにはいなかった。
今の透くんなら、たとえ戦車がきても道を譲らないだろう。
「こんなの、真理らしくないよ」
「何を言ってるのよ、あなたに私の何がわかるの? これが本当の私よ。透は騙されてただけ」
「違う。真理は無抵抗のローズさんを撃つような人間じゃない」
「……いい加減にそこをどかないと撃つわよ」
「真理になら撃たれてもいい」
「……な、何を……!」
真理さんが動揺する一瞬の隙に、ローズさんはトランクを投げた。
鋼鉄製のトランクは真理さんの体にぶつかって、いとも簡単に真理さんをふっ飛ばした。
トランクを回収するアカギに向かって、小林さんが飛び出してきた。
服をまくって包帯をといた中には拳銃があり、小林さんはそれを取って躊躇もなくアカギを撃ってくる。
アカギはトランクの影に隠れる。そこへ弾が二発、吸い込まれていく。
「止めてください、薬が割れてしまいます!」
その言葉で銃撃が躊躇する。隙を縫ってアカギの銃弾が小林さんの肩を射止めた。
「今です、逃げましょう!」
ローズさんはトランクを開けて、入ってた防寒具をオレたちに投げつけた。
慌てて引っかけて、周囲を警戒しつつ、裏口へ向かうアカギとローズさんの後ろに続いた。
「逃げるって……?!」
「フランスは別働隊がいるはずです。ここにいたら包囲されるだけです。アカギさん、あなたにも仲間がいるんでしょう?」
「ああ。さっき連絡を入れた。合流ポイントまで行けば会える」
「ではそこへ」
「待ってくれ、おっちゃんと美心は……?!」
「オレの仲間が回収しますよ」
「本当だな……?」
「……よほど好きなんだな、あのおっさんのことが。どこがいいんだ」
「誤解するようなことを言うなっ………!」
とりあえず今はアカギを信じるしかない。
おっちゃん、美心、無事でいてくれよ……!