相棒のジレンマ
(Aiを、恋人扱いしないようにしないと……)
(遊作にペット扱いされないようにしねぇと……)
「おはよう、相棒のAi」
「オハヨー、相棒の遊作ちゃん」
ベッドの中、Aiは身構えて遊作に抱っこされないようにする。
遊作はAiを抱きしめようとする自身の手を叩いた。
「……何してんの?」
「何、変なポーズしてる」
「遊作、抱っこしねぇの?」
「……しないな」
「な、ナヌー!! 川で乗るのはカヌー!」
Aiは補食態になってベッドに倒れた。
いつもと違う遊作の様子に胸がもやもやする。面白くない。
こんな魅力的な体を抱っこしないなんて。
触手で手招きして尾を叩きつける。
触手は柔らかく触ったら気持ちいいはずだ。
遊作は誘惑されそうになる。頭を振って欲をはらった。
「うふ~ん、抱き心地よさMAXよ~ん。今なら抱き放題」
「……しばらくお前には触れない」
「え? な、何で?」
「昨日、お前の体が……いや、何でもない……」
「……普通の相棒同士なら、抱っこやハグはしないと思う」
「……そ、そうだよな。普通の相棒同士なら……」
「手握ったり一緒に寝たりしねーよな……はは……」
Aiの目元からは涙が零れ落ちる。
泣いてることに気づいたAiは不具合かなと目をこすった。
胸が切り刻まれるようだった。
過剰接触はAiの体や心に負担がある。
せめてもう少しAiが成長してから……。
■■
(どういうことだってばよ)
Aiは遊作のストーキングに入った。洗面所の遊作をドアから隠し見る。
ペット扱いは確かにされなくなった。だが避けるようなこの態度はなんだ。
(いつも朝起きたら、抱っこしてくれんのに……)
(俺が遊作との接触を避けてたからか……?)
(だからって極端すぎんだろ)
目も合わせてくれないなんて。
Aiは壁に寄りかかって脱力した。
(クソ……これならペットのがいいな。何が相棒だよ)