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カイジたちの夜5

オレは横になったまま小屋の天井を見つめていた。
平山くんは隣で眠ってる。さっきの鋭い殺気は見る影もない……。

物音がしてオレは暗闇の中を見渡す。ドアがゆっくり開き、影は眠ってるオレたちを見下ろしている。いや、オレたちじゃない。影は香山さんだけを見てる。

シルエットからして女性……。

「春子さんですか……?」

影がピクリと震えてオレに向き直る。
ランタンをつけようと近くの床を探った。
春子さんは泣いてるらしかった。鼻をすする音と泣き声がして、ランタンをつける手が止まる。

「あの……大丈夫ですか。台所に……暖かい飲み物があるから、取って来るんで……!」

気の利いた言葉さえ出てこない。
オレは慌ててランタンを持って廊下にでる。
廊下の玄関にはうみたんが座っていた。真夜中だと言うのにバンダナも防寒具も着込んで完全防備だ。
ランタンを掲げるとズボンが膝下までぐっしょりと濡れていた。傍らには凍りついたシャベルが置いてあった。
どこかに行ってたのか……?

「おい、アンタ……!」
「な……何、なん、何や……あんたかい。夜中に出歩くなや!」
「春子さんが泣いてた。あんたが何かしたんじゃないのか」
「おばさんが……? 知らんわ、ボケェ。 あんまチョロチョロすんなや」
「お前たちもマインドブレイク狙いなのか?」
「……そうやな。アンタらは先に解放してやるわ。アンタと白髪の兄ちゃんだけな」

「アイツは交渉には応じない。香山さんは捕まったら自己責任と言っていた」

ランタンをかかげると、うみたんは顔を覆った。
拳銃を持ってる腕すら顔を隠すのに使ってる。
目をすがめているがまばたきはしない。よく見ると目蓋の周辺が凍ってるようだった。

「交渉がまとまらなかったら、お前たちはどうするつもりだ?」
「そんなん……。どうにもならへんわ………」
「?」
「……さっさと行き。5分以内に戻らんと、痛い目見るで」


どうも調子が狂う。昼までのピリピリした雰囲気がなくなってる。
それに何か違和感が……。
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