白い蜜月
左肩の単純骨折、右上腕骨の割創。
単純に言えば、カイジの両手は使えない状態にある。
左肘はピクリとも動かないし、触っても冷たく石みたいだった。
逆に矢を受けた右肩は、傷自体が泣き叫ぶように熱を発していた。
その統合性の取れない痛みについていけず、ベッドの上にいるだけでも嫌になってくる。
24時間テレビのあと、黒服たちの襲撃に耐える頃には視界も途絶え、意識も手放していた。
気づいたら病院のベッドに寝かされていたというわけだ。
勿論そばにはアカギがいた。
ベッドの上は恐ろしく退屈な世界だった。
白く色彩のない病室、変わりばえしないその景色、退屈なテレビ……。出歩くことすら禁止されて、ここに押し込まれ続けて数日。
これならまだ一条の説教に付き合う方がマシだ。
大木を中からノミで削っていくように、カイジは中から精神が消耗していくのを感じた。
(あっつい……)
微熱か閉め切った病室のせいかはわからないが、額や患者衣の背中がじっとりと湿ってくる。
ベトベトした体に益々気が滅入ってくる。
アカギにも看護婦にも頼めず、痛む腕でおざなりにやっていたけど、今日こそはちゃんと体を拭かないと……。
患者衣の紐を引っ張って前をはだけさせる。
下着さえ脱ぐのに苦労して、足首に下着がかかる頃にはベッドの上でカイジは一汗掻いていた。
「あら、カイジ君。身体を拭きたいの?」
はかったような看護婦の登場にカイジは悲鳴をあげていた。
力が入らない指から濡れ布巾を取られて、ただあたふたするしかない。
「ふふふ、遠慮しないで言ってくれればいいのに」
これが気のいいおばさん看護婦ならまだいい。
看護婦は二十代だ。なまじ若いのがいけない。
「い、いい……いいです……!! 結構です……!」
「大丈夫よ。優しくしてあげるわ」
「ひぃい……!」
た、助けてアカギ……!
いきなり現れたアカギに心底ホッとした。
看護婦はそれならと、布巾を渡して用事を思い出して去っていく。
「しげる~!」
「カイジさん、拭いてあげるからおいで」
ベッドに座るアカギの目は険しい。前人未到の深山幽谷よりも。
単純に言えば、カイジの両手は使えない状態にある。
左肘はピクリとも動かないし、触っても冷たく石みたいだった。
逆に矢を受けた右肩は、傷自体が泣き叫ぶように熱を発していた。
その統合性の取れない痛みについていけず、ベッドの上にいるだけでも嫌になってくる。
24時間テレビのあと、黒服たちの襲撃に耐える頃には視界も途絶え、意識も手放していた。
気づいたら病院のベッドに寝かされていたというわけだ。
勿論そばにはアカギがいた。
ベッドの上は恐ろしく退屈な世界だった。
白く色彩のない病室、変わりばえしないその景色、退屈なテレビ……。出歩くことすら禁止されて、ここに押し込まれ続けて数日。
これならまだ一条の説教に付き合う方がマシだ。
大木を中からノミで削っていくように、カイジは中から精神が消耗していくのを感じた。
(あっつい……)
微熱か閉め切った病室のせいかはわからないが、額や患者衣の背中がじっとりと湿ってくる。
ベトベトした体に益々気が滅入ってくる。
アカギにも看護婦にも頼めず、痛む腕でおざなりにやっていたけど、今日こそはちゃんと体を拭かないと……。
患者衣の紐を引っ張って前をはだけさせる。
下着さえ脱ぐのに苦労して、足首に下着がかかる頃にはベッドの上でカイジは一汗掻いていた。
「あら、カイジ君。身体を拭きたいの?」
はかったような看護婦の登場にカイジは悲鳴をあげていた。
力が入らない指から濡れ布巾を取られて、ただあたふたするしかない。
「ふふふ、遠慮しないで言ってくれればいいのに」
これが気のいいおばさん看護婦ならまだいい。
看護婦は二十代だ。なまじ若いのがいけない。
「い、いい……いいです……!! 結構です……!」
「大丈夫よ。優しくしてあげるわ」
「ひぃい……!」
た、助けてアカギ……!
いきなり現れたアカギに心底ホッとした。
看護婦はそれならと、布巾を渡して用事を思い出して去っていく。
「しげる~!」
「カイジさん、拭いてあげるからおいで」
ベッドに座るアカギの目は険しい。前人未到の深山幽谷よりも。
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