ピンクのしおり
※カイジたちの夜3、スパイアカギの質問に対してからの総受分岐遊びシナリオです。
「じゃあ……オレに雇われないか」
アカギの目に初めて人間らしい色を見た。見開いた目は、心なしか楽しんでる気がする。
「あんたが……? オレたちの正体を見抜いたのは、褒めてやるが……、
一般人のあんたが報酬を払えるとは思えない」
確かに今は定職についてないし、元よりつく気もない……。
財布の中は札よりもポイントカードの方が多いくらいだ。
だけどオレにはまだ体がある。
体があれば何でもできるんだ。体を資本に金を稼ぐこともできるし、何なら一部を賭けてもいい。
この銃撃戦の中、美心やおっちゃんたちと無事に生きて帰るには……このアカギを味方につけることが最善策に思えた。
だからまずは……相手を信用させる。
「体で払う」
予想だにしなかったのか、アカギだけでなく銃撃戦が一時止まった。
スパイだか何だか知らないが、肉体労働は地下で馴れている。
ちょっとやそっとのしごきでへこたれるもんか。
「……キツいぞ」
「構うもんか………!」
オレを凍らせていた瞳がすっと細くなり、触れられるくらいに近づいてくる。
というか……触れていた。
唇が。
「?!」
心身を凍らせるような力のある唇に、抱かれた背筋がぶるっと震えた。
「な、な……な、なな」
「これで契約成立だ」
「何やってんだよ!!」
「体で払うって言ったのはアンタだろ。前金をもらっただけ……」
「ま、前金ってな! 何かお前、誤解してないか! 体で払うって言うのは……」
アカギがじぃっと見つめてくる。
心を見透かされそうなほどに澄んだ目だ。
「体で払うって言うのは……?」
「あ、あ、あの……、だから……」
「ちゃんと言えよ……。オレは今、嫌らしい妄想してますってさ」
「く……クソッ」
シュプールは完全に沈黙していた。
不思議に思って見てみると、スパイ軍団は銃を下ろして一列に並んでこちらを見ている。
「ズルいじゃない」
「カイジさん……好きです」
「もう日本政府もマインドブレイクもどうでもいい……! カイジ君がいれば!」
はぁ………??
どうなってるんだこれは……。みな一様に頬を赤らめ、興奮した吐息をともにオレを見ている。
普通じゃない。というかちょっと怖い……。
助けを求めようと近くにいた透くんを振り返る。
「カイジさんは僕の物だ……!」
ちょ……ちょっと待て!
透くんまでオレのことを……?!
全然そういう素振りみせなかっただろうが……!
スパイ軍団と透くんは血走った目を通わせながら、持っていた武器をお互いに向けた。
「アキ……! 三人組であんただけキャラが薄いくせに!」
「な、何ですって?!」
「透くん、真理はあげるからカイジくんを譲ってもらおう」
「ストックに刺されたとしても、それは無理な話です、小林さん」
再び争いが勃発してしまった……。
今度はオレが理由で。
「カイジさん、ごめんなさい」
「ローズさん?」
ふっと引きつるような痛みが手首にあった。触ると血玉が浮いていた。
「マインドブレイクを打たせてもらいました」
「マインドブレイク?」
「あなたと私が持っている薬品を配合した物です」
「それで……どんな効果なんだ?」
「今のあなたは数キロ先の人間でさえ、性的興奮させてしまう体なんです」
「はっ……?!」
どんな効果だよ。尋常じゃない。
「近年人間にもフェロモンが発見されたという話を知っていますか?
男性の汗から出る匂いが、女性を興奮させるという実験結果が出たんです」
「はぁ……」
「私たちは実験を重ね、遺伝子改変動物を作り、人間の体にも強く効くフェロモンを持つ動物を作り上げていきました。
本来人間が持つフェロモンを多く分泌させ、
なおかつ動物や虫にあるような、強いフェロモンを一時的に作る……。それがマインドブレイクです」
「ちょ、ちょっとそういうのは、困るんだけど……!
フェロモンって……ローズさんたちには効いてないみたいだけど……?」
「私とミユキたちは、前にマインドブレイクを打ったことがあるんです。それで、免疫のような物ができたらしくて……」
「薬の効果は一日で切れるはずです」
「一日も?!」
「一日もあれば、オレの仲間がフランスの別働隊をどうにかできる」
「私は……隠してある実験結果の入ったSDを処分しに行かなくてはなりません。
薬も……処分しなくては……。カイジさん、箱を渡してくれませんか」
オレはポッケに入れていた宝石箱を渡した。
ローズさんは傷だらけの宝石箱を辛そうに抱きしめる。
「ありがとう……」
「わかったよ……。こいつらはオレが引きつけておけばいいんだろう」
「カイジ……ごめんなさい」
「……ローズさんは大丈夫なのか」
「大丈夫です。私たちが死ぬ気で守りますから」
みゆきちゃんとサトミさんがうなずく。
ローズさんはトランクに箱をつめて、こちらを振り返りつつ裏口へ消えていく。
「お人好しだな」
「一日我慢すればいいんだろ? そのくらい……」
「なら、早速我慢してもらおうか」
談話室には死闘の果てに、倒れた体がいくつも転がっていた。みどりさん以外、血は出ていなく軽傷みたいだった。
アカギは落ちている武器を回収し、オレの手を引いて二階に上がった。
「じゃあ……オレに雇われないか」
アカギの目に初めて人間らしい色を見た。見開いた目は、心なしか楽しんでる気がする。
「あんたが……? オレたちの正体を見抜いたのは、褒めてやるが……、
一般人のあんたが報酬を払えるとは思えない」
確かに今は定職についてないし、元よりつく気もない……。
財布の中は札よりもポイントカードの方が多いくらいだ。
だけどオレにはまだ体がある。
体があれば何でもできるんだ。体を資本に金を稼ぐこともできるし、何なら一部を賭けてもいい。
この銃撃戦の中、美心やおっちゃんたちと無事に生きて帰るには……このアカギを味方につけることが最善策に思えた。
だからまずは……相手を信用させる。
「体で払う」
予想だにしなかったのか、アカギだけでなく銃撃戦が一時止まった。
スパイだか何だか知らないが、肉体労働は地下で馴れている。
ちょっとやそっとのしごきでへこたれるもんか。
「……キツいぞ」
「構うもんか………!」
オレを凍らせていた瞳がすっと細くなり、触れられるくらいに近づいてくる。
というか……触れていた。
唇が。
「?!」
心身を凍らせるような力のある唇に、抱かれた背筋がぶるっと震えた。
「な、な……な、なな」
「これで契約成立だ」
「何やってんだよ!!」
「体で払うって言ったのはアンタだろ。前金をもらっただけ……」
「ま、前金ってな! 何かお前、誤解してないか! 体で払うって言うのは……」
アカギがじぃっと見つめてくる。
心を見透かされそうなほどに澄んだ目だ。
「体で払うって言うのは……?」
「あ、あ、あの……、だから……」
「ちゃんと言えよ……。オレは今、嫌らしい妄想してますってさ」
「く……クソッ」
シュプールは完全に沈黙していた。
不思議に思って見てみると、スパイ軍団は銃を下ろして一列に並んでこちらを見ている。
「ズルいじゃない」
「カイジさん……好きです」
「もう日本政府もマインドブレイクもどうでもいい……! カイジ君がいれば!」
はぁ………??
どうなってるんだこれは……。みな一様に頬を赤らめ、興奮した吐息をともにオレを見ている。
普通じゃない。というかちょっと怖い……。
助けを求めようと近くにいた透くんを振り返る。
「カイジさんは僕の物だ……!」
ちょ……ちょっと待て!
透くんまでオレのことを……?!
全然そういう素振りみせなかっただろうが……!
スパイ軍団と透くんは血走った目を通わせながら、持っていた武器をお互いに向けた。
「アキ……! 三人組であんただけキャラが薄いくせに!」
「な、何ですって?!」
「透くん、真理はあげるからカイジくんを譲ってもらおう」
「ストックに刺されたとしても、それは無理な話です、小林さん」
再び争いが勃発してしまった……。
今度はオレが理由で。
「カイジさん、ごめんなさい」
「ローズさん?」
ふっと引きつるような痛みが手首にあった。触ると血玉が浮いていた。
「マインドブレイクを打たせてもらいました」
「マインドブレイク?」
「あなたと私が持っている薬品を配合した物です」
「それで……どんな効果なんだ?」
「今のあなたは数キロ先の人間でさえ、性的興奮させてしまう体なんです」
「はっ……?!」
どんな効果だよ。尋常じゃない。
「近年人間にもフェロモンが発見されたという話を知っていますか?
男性の汗から出る匂いが、女性を興奮させるという実験結果が出たんです」
「はぁ……」
「私たちは実験を重ね、遺伝子改変動物を作り、人間の体にも強く効くフェロモンを持つ動物を作り上げていきました。
本来人間が持つフェロモンを多く分泌させ、
なおかつ動物や虫にあるような、強いフェロモンを一時的に作る……。それがマインドブレイクです」
「ちょ、ちょっとそういうのは、困るんだけど……!
フェロモンって……ローズさんたちには効いてないみたいだけど……?」
「私とミユキたちは、前にマインドブレイクを打ったことがあるんです。それで、免疫のような物ができたらしくて……」
「薬の効果は一日で切れるはずです」
「一日も?!」
「一日もあれば、オレの仲間がフランスの別働隊をどうにかできる」
「私は……隠してある実験結果の入ったSDを処分しに行かなくてはなりません。
薬も……処分しなくては……。カイジさん、箱を渡してくれませんか」
オレはポッケに入れていた宝石箱を渡した。
ローズさんは傷だらけの宝石箱を辛そうに抱きしめる。
「ありがとう……」
「わかったよ……。こいつらはオレが引きつけておけばいいんだろう」
「カイジ……ごめんなさい」
「……ローズさんは大丈夫なのか」
「大丈夫です。私たちが死ぬ気で守りますから」
みゆきちゃんとサトミさんがうなずく。
ローズさんはトランクに箱をつめて、こちらを振り返りつつ裏口へ消えていく。
「お人好しだな」
「一日我慢すればいいんだろ? そのくらい……」
「なら、早速我慢してもらおうか」
談話室には死闘の果てに、倒れた体がいくつも転がっていた。みどりさん以外、血は出ていなく軽傷みたいだった。
アカギは落ちている武器を回収し、オレの手を引いて二階に上がった。
1/4ページ