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中学生戦記2

アカギと一緒の下校中、カイジは鞄からスーパーのチラシを取りだした。
アカギはそれを横目に声をかけた。

「またおばさんの手伝い?」
「ああ」


学生寮の食事を作るおばさんはかなりの高齢だ。
おばさんを見かねてカイジはたまに買いだしを手伝っていた。
チラシに丸がついてるのはおばさんの受け入りなのか、こなれた物だ。

「北区に新しいスーパーができたらしいんだ。行ってみようぜ」
「……北区」

区の名前がでるとアカギが詰まる。北区は一区とも呼ばれ、地下街の外れにある。
外と地下を隔てる門と壁があり、24時間軍が常駐してる物騒な地域だ。

「ああ、そういえばお前の中学はあっちだっけ」

できればアカギは北区には近寄りたくなかった。
しかしカイジが行くならついて行くべきだ。黒服や信者たちに遭遇する場合もある。

「わかりました。じゃあ、学校裏のマンホールから入って、下水道を経由、北区の公園の駐車場のマンホールから出ましょう」
「なに逃亡者みたいな真似してんだよ。ただ買い物に行くだけだぞ。しげるは心配性だな」

カイジに可愛く笑われ、黙った。
カイジがこう言うなら仕方ない。
覚悟はしている。カイジが行くなら、たとえ地獄の果てでもついていくつもりだった。
保護者とはそういうものだ。

「ヒィイ……出た……!」
「アカギだ……! 逃げろ……!」
「きゃあああ!!」
「殺さないでくれぇえ!」
「………」

北区に入った途端に、人々が二人の周りから逃げていく。

「しげる……お前なにしたんだ?」
「何もしてませんけど」
「何もしてないわけないだろ。中学の時に、また危ないことしてたんだな?」
「さぁね……」
「しげる、待てよ……」


カイジはうなだれる。この恋人は自分がいないと危ない遊びばかりしている。
アリの巣潰しだとか連コインとかチキンレースだとか、それはもう、子供の頃から千差万別。


「オレが側にいたら……そんなことさせなかったのに」


アカギにも少なからず傷がある。
自分が側にいたら守ってやれたのに。

「また、オレのことを守ろうとか考えてるのか、カイジさんは……懲りないな」

アカギはカイジに助けてもらうのを極端に嫌がる。
何故嫌がるのかはわからないが、拒否されると悲しくなる。

結局中学校時代のアカギのことは聞けずじまいだった。
自分がいないのに、アカギは平穏無事に暮らせていたんだろうか?


買い物から帰ってきて、そんなことを考えながら談話室のソファーに寝転んでいると、段々と眠たくなってきた。

中学生のアカギを救ってやりたい。
あの頃のアカギは養母やカイジからも離れて一人きりだった。

アカギの苦しみをもっとわかってやれば……。離れることもなかっただろう。


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