蒼く鬱金の 十表

道ばたに古い時計が落ちていた。
十代は時計を拾ってかかげる。
秒針は止まってネジが取れていた。

「お、いいモンみっけ!」
「アニキはもう、またそんなの拾って」
「治せば使えるじゃん。ラッキー」

「と……こんなもんかな」

緩んだネジを入れ治して電池を入れる。
時計から手足が出て十代はベッドから滑り落ちた。

『十代さん、ありがとうございます』
「時計がしゃべった!?」
『私は時の魔術師です』
「何だよ精霊かよ。ビックリしたぁ」
『あなたは命の恩人です。お礼に願い事をひとつ叶えさせてください』
「願い事ぉ~? 本当に?」
『もちろんです』
「うう~ん……急に言われてもなぁ……部屋いっぱいの鮭おにぎりとか……」
『ええ?!』
「冗談だよ、冗談! オレの願い事は決まってるぜ!」
「遊戯さんがオレだけの物になりますように!」
『わかりました……』
『タイムマジック!!』



「って何にも変わらねぇじゃん」
「インチキかよ……っておい」
「お~い、時の魔術師ー?」


時の魔術師が消えたものの、辺りに変化はない。
諦めて十代はベッドに転がり寝てしまった。
うとうとしてると何か変な夢を見た。

「うん……」

寝苦しさに寝返りをうつ。
あたたかくて柔らかいものが身体に触れる。

(……?)

寝ぼけ眼に、少年の姿が目に入った。
タンクトップの遊戯はすやすやと眠っていた。

(ゆ、遊戯さん?! 何でここに?! っていうか……)
(かわいい~! この人めちゃめちゃかわいい!)

小さくて目が大きくて女子みたいだ。
心臓がバクバクいいだした。

(ちょっと……ちょっとだけ触るくらいなら怒られないよな?)

小さな唇に誘われるようにキスをした。
触れる身体は柔らかくて、夜気を孕んで冷たくて気持ちいい。
少しずつ、肌を触っていく。

「……十代くん」
「うわっと!?」
「ここ、ボクのベッドなんだけど……」
「あっ、すいません!!」
「手……放して」
「……嫌です」

「……ハネクリボー……」

大量のハネクリボーが頭に降ってきた。
抗議を言おうとするも遊戯はすやすや眠ってる。

十代はハネクリボーを頭から取って抱き上げた。
眠る遊戯はどう見ても同年代かそれ以下に見える。
不思議な現象は今までにも何回もあった。
古代にタイムスリップしたり木星に飛んだり。
まだ理由に心あたりがあるだけ簡単だった。


「夢みてぇ……これが時の魔術師の力か」
「サンキュー、時の魔術師! 恩に着るぜ!」
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