密室ゲーム 海表

目が覚めると知らない天井だった。
またか、って思った。

一見豪華な洋室だ。だけど窓がなくて、タンスのまわりにはボクの好きなゲームや玩具がいっぱい並んでる。
丁寧なことに遊戯って名前もマジックペンで書いてある。


「海馬君! いるんでしょ!」

ボクは監視カメラに話しかけた。
鉄でできた扉が横に開いて海馬君が現れた。
相変わらずコートをはためかせて、悔しいけどかっこいい。


「ふふん、どうだ遊戯、この部屋は」
「……全然よくないよ。早く鎖を外して外にだしてよ!」
「なに……KCの最先端の技術の結晶が気にいらんだと……?」
「そういうことじゃなくて!」
「どうしてボクをさらうのさ……」

もうひとりのボクはもういないのに。
それは海馬君も知ってる。


「貴様は一生俺と勝負をする運命なのだ。この部屋からは貴様は逃げられない」


竜眼がボクを間近く睨んでる。
低めの声に耳元で囁かれてゾクリとした。

「いい加減にしてよ……毎日毎日……こんなことばっかり。海馬君のこと、嫌いになっちゃうからね」
「なに……」

予想外に海馬君は動揺した。

「知力、権力、デュエル力……全てを兼ね備えるこの俺を否定するだと……?!」
「貴様……!」

海馬君の片手だけでボクは持ち上げられた。
すごい気迫だ。
殴られる……。

「貴様……軽いな」
「え」
「体重はいくつだ」
「ええと……もにゃもにゃ……」
「貴様! 平均体重を大きく割ってるではないか!」

海馬君はボクを下ろして指パッチンした。
メイドたちがフルコースを持って現れた。
海馬君は皿を持ってベッドに腰かける。

「口をあけろ」
「……」
「あけないのならこの俺があけさせる」

何だか怖いことになりそうだったから、ボクは仕方なく口をあける。
スプーンが口に入ると、普段食べたことのない美味しいスープだった。
海馬君はふっとほほえむ。

……モクバ君に接してる時みたいな優しい顔。いつもそうしてればいいのに。

「で……今度はどうしたら出られるの」
「俺に口づけしたら鍵があく」
「えぇ?!」
「どんなパズルや謎解きも貴様ならすぐに解いてしまうからな……ククク……どうだ遊戯」

「こっちへ来い」

ボクはぬいぐるみみたいに海馬君の膝上で抱かれる。
海馬君はよくボクをこうやって抱くけど、ボクは体格差に恥ずかしくなってくる。


(やるしかない……)

海馬君はじれるように耳を噛んでる。
このゲームでボクが有利になるにはひとつしかない。
先手を取ること……!

ボクは振り向いて海馬君にキスをした。
離れようとすると顎を捕らわれた。
深く下が舌が入ってくる。
甘い痺れにくらくらしてくる。
手首にはまっていた鎖が外れた。

海馬君はパジャマの上から根元をぐっと握ってくる。指ですっと撫でられて力がでない。

「遊戯……」

竜眼は熱で潤んでる。
どうしてそんな目でボクを見るんだよ……!

ボクは海馬君のデュエルデスクに手をのばして一枚カードを投げ捨てた。
海馬君の拘束がとける。
今のうちだ。

扉があいてボクは逃げだした。



(もう二度と行くもんか、あんなところ)


海馬君はボクをいじめて憂さ晴らししたいだけなんだ。
だからあの行為は……深く考えないようにしようっと。

家に帰ってボクは眠った。
次の日、ボクが目覚めると知らない天井だった。


「フハハ! 甘いぞ遊戯!」


もういい加減にして……。



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