シュト

アテムの身体は冷たい。
いくら触っても瞼は開かない。
闘いの儀よりずっとずっと残酷だった。
どんなに呼びかけても目が覚めないキミが目の前にいるなんて。

キミはひどいよ。
いつもボクを置き去りにしていく。

記憶なんてなくていいのに。ボクがいくらでもあげるから。
お願い……早く還ってきて。


(アテムが帰るまで、この体はボクが守らないと……)


クリボーのカードを見つめてうんうん唸る。
いくら唸ってもクリボーは来てくれなかった。

(ハァ……当たり前だよね。アテムは簡単に召喚してたけど、アテムは古代でもデュアハが得意だったし……)


ふと冷たい風が吹いた。
部屋の壁に顔が浮き出てた。
空洞の目がボクを見てる。しわ枯れた皮膚がひきつれて唇が裂ける。
冷たい汗がすぅっと流れた。

(来る……!)


ボクはアテムを抱きしめた。

(アテムだけは守らないと……!)

「?!」

鬱金色の光がアテムから溢れだした。
暗い暗い光。眩しくて強烈で目を閉じる。
瞼を恐る恐る開けると、そこにはアテムが立っていた。
酷薄な笑顔が亡者を捕らえる。


「下がれ……雑魚どもが!」
「え?」

アテムが魔法カードを掲げると、辺りにいた亡者が泡のように消えていく。
ボクは膝を折ったまま立ち上がれなかった。


キミはボクを見た。
いや、これはキミじゃない。
アテムはボクを見る時は、恥ずかしいくらいに優しくて。

「ククク……貴様に劣らず、中々いい器だぜ……王サマはよ……」
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