オシリスとはかいの竜

盤上の駒ふたつは睨みあってる。
さっきから勝負がつかないでいた。
ユウギはアテムに話しかけた。



「アテムは外にでたりしないの?」
「オレは皇子なんだぜ」
「それってボクとどう違うの?」
「……え」
「……身分とか」
「ふーん」
「確かに、見た目は他の者と一緒だが」
「キミは釣りしたことある?」
「……釣りぐらい、オレだって」

アテムは腕を組む。
知識はある。


「したことないな……。魚を食べるために釣るなんて」

「ナイルではね、トキがいっぱいいてさー、場所によってはカバにも襲われるんだよ」
「カバ?」
「カバはね、大きな口があって河の中にいるんだ」
「それは精霊じゃないのか」
「ふふ、違うよー」

「結構凶暴なんだ。見にいく?」
「……見てみたい」
「だが……オレが黙って出たら警備兵に迷惑が……」
「じゃあさ、こっそり出て行くのはどう?」


ユウギは早速窓を開けて欄干に足をかけた。
アテムに向かって手をさしだす。
魅力的なその笑顔はとても振り払えなかった。
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