暗黒と魔術師

「ククク……燃えろ燃えろ!!」


燃えさかる村にユウギはいた。
白い髪の盗賊の哄笑が炎の中を響き渡った。

日干し煉瓦の壁は崩れてユウギの身体にのしかかっている。
巨大な翼を持つ精霊獣がゆったりとこちらを見る。盗賊は瓦礫の下のユウギを見つける。

「そこにまだいやがったか……」

(ボク……死ぬの……?)


盗賊が初めて歩みを止める。炎の中揺らめく陽炎に目を奪われている。


「なんだ……この精霊は……」

(死にたくない……)


盗賊は村の向こうに立ち上る砂煙に気づいた。
兵士たちが馬を駆って近づいてくる。
舌打ちして指笛で馬を呼ぶ。


「面白ぇじゃねぇか……テメェの精霊に免じてちょっとは生かしておいてやるよ」
「くっ……」

煉瓦は熱を孕み辺りは鍋の底のようだった。
ユウギの視界は暗くなる。辺りは炎に囲まれてる。
もうダメだ。

瓦礫が崩れ落ちる中、黄金の装飾と外套をまとった少年が現れた。
琥珀色の肌に紫水晶のような目。一瞬も目が離せない。

少年はユウギを担いだ。


「もう大丈夫だ」

その笑顔は誰よりも優しかった。
1/7ページ