コードクワイン
「偽プレイメーカー?」
VRAINSではプレイメーカーは人気のアバターだ。
ファンがごっこ遊びをするのは珍しいことじゃない。
Aiはタブレットのネット記事を見せた。
「お手柄!ハッカーデュエリスト、10人抜き! だと」
「……」
「いやーん、プレイメーカー様、かっこいい」
画像のプレイメーカーはサイバース族を使っていた。
遊作は考えこむ。
「なぜサイバースを……」
「今までの偽物と違って、まるでお前みたいだな」
自分の物まねをされて気持ちいいわけがない。
だがAiは何だか嬉しそうだ。
「Ai、行くぞ」
「会いにいくの?」
「ああ」
■
ログインすると空の上だった。
この前ログアウトした場所と違う。座標がズレてる。
Aiは両手をバタつかせて落ちていく。
「うわああ!」
「Ai!」
遊作は手をのばす。
ふとのばした腕に違和感があった。プレイメーカーではなく見慣れた遊作の腕だ。
「うわっ?!」
Aiは誰かに抱えられていた。
翡翠の目に黄色い髪。
自分を抱き抱える所作と目には優しさが溢れていた。
Aiは顔が熱くなる。
「Ai、大丈夫か!」
遊作はボードを操ってAiに近寄る。
Aiを抱きかかえたアバターを見て言葉をのみこむ。
「オレ……?!」
「Ai、大丈夫か」
「あ、ああ……プレイメーカー。大丈夫だ」
こうやって心配して顔を触るのも本人と同じだった。
あまりにも優しい目で思わず目をそらしてしまう。
「お前がプレイメーカーのなりすましか」
「……相棒すら守れないのか」
「何……」
「ゆ、遊作?! その格好どうしたんだ、アバターは?」
「わからない」
「ちょっと待て。今解析してみるから。プレイメーカー様、ちょっと離して」
「嫌だ」
「はい?」
「Ai、そいつから離れろ!」
「そうしたいんだけど」
「それは、プレイメーカーの偽物なんかじゃない」
「?」
「オレ自身だ」
「な、」
(確かに姿も雰囲気も同じだけど)
Aiはイグニス体の触手をのばす。解析すれば中身が同じかわかるはずだ。
プレイメーカーの体をさぐる。
「Ai」
「うーん、データは遊作、アカウントも遊作だな……ってことは」
「遊作じゃん!」
「Ai、苦しい」
「ご、ごめん」
「どういうことだ……オレがふたりだなんて」
「バグじゃないの? 一度ログアウトしてみる?」
「……」
確かにそれが一番早いだろう。
だがAiは今プレイメーカーの胸の中だ。
あれは自分自身なのに、嫌な気分になる。
Aiに対しての思いは、自分が思ってたよりも暗くて深い。
「Ai、新しいカードを見にいかないか」
「行く行くー!」
「じゃあ、遊作は一度ログアウトして」
「嫌だ」
「そいつから離れるんだ、Ai」
「遊作……?」
「遊作、大丈夫だって。これは本当にお前だよ。わかるだろ? バグでデータが二重になったとか、対したこと」
Aiの体が傾く。
意識が遠のく。プレイメーカーがAiの体を抱き止めた。
「Ai!」
「Aiはお前には任せられない」
「何言ってる! お前は何なんだ!」
「オレはお前だ」
「Aiはオレが守る。お前は消えろ」
「ふざけるな!」
『おぉーっと?! 謎の少年とプレイメーカーが激しく言い争っています! 一体彼は何者なのか!?』
「?!」
ビルの屋上には報道陣とギャラリーが詰めかけていた。
みんなプレイメーカーのデュエルを見にきたようだった。
ブルーエンジェルとブレイブマックスこと島、草薙はフェンスから体を乗り出す。
「藤木……? アイツ何やって」
「プレイメーカーがふたり?」
「遊作?!」
遊作はデュエルディスクを確かめる。
中にあるのはサイバースじゃなかった。リアルでのダミーデッキだ。
「お前のデッキはサイバース以外はダミーデッキしかない」
「デュエルでは勝てない」
「く……待て!」
見慣れたサイバースの戦士が立ちふさがった。
冷たい電子の眼が遊作をにらむ。
大刀を遊作めがけて振りかぶった。
衝撃と痛み。
遊作はボードから投げ出され宙に舞った。
VRAINSではプレイメーカーは人気のアバターだ。
ファンがごっこ遊びをするのは珍しいことじゃない。
Aiはタブレットのネット記事を見せた。
「お手柄!ハッカーデュエリスト、10人抜き! だと」
「……」
「いやーん、プレイメーカー様、かっこいい」
画像のプレイメーカーはサイバース族を使っていた。
遊作は考えこむ。
「なぜサイバースを……」
「今までの偽物と違って、まるでお前みたいだな」
自分の物まねをされて気持ちいいわけがない。
だがAiは何だか嬉しそうだ。
「Ai、行くぞ」
「会いにいくの?」
「ああ」
■
ログインすると空の上だった。
この前ログアウトした場所と違う。座標がズレてる。
Aiは両手をバタつかせて落ちていく。
「うわああ!」
「Ai!」
遊作は手をのばす。
ふとのばした腕に違和感があった。プレイメーカーではなく見慣れた遊作の腕だ。
「うわっ?!」
Aiは誰かに抱えられていた。
翡翠の目に黄色い髪。
自分を抱き抱える所作と目には優しさが溢れていた。
Aiは顔が熱くなる。
「Ai、大丈夫か!」
遊作はボードを操ってAiに近寄る。
Aiを抱きかかえたアバターを見て言葉をのみこむ。
「オレ……?!」
「Ai、大丈夫か」
「あ、ああ……プレイメーカー。大丈夫だ」
こうやって心配して顔を触るのも本人と同じだった。
あまりにも優しい目で思わず目をそらしてしまう。
「お前がプレイメーカーのなりすましか」
「……相棒すら守れないのか」
「何……」
「ゆ、遊作?! その格好どうしたんだ、アバターは?」
「わからない」
「ちょっと待て。今解析してみるから。プレイメーカー様、ちょっと離して」
「嫌だ」
「はい?」
「Ai、そいつから離れろ!」
「そうしたいんだけど」
「それは、プレイメーカーの偽物なんかじゃない」
「?」
「オレ自身だ」
「な、」
(確かに姿も雰囲気も同じだけど)
Aiはイグニス体の触手をのばす。解析すれば中身が同じかわかるはずだ。
プレイメーカーの体をさぐる。
「Ai」
「うーん、データは遊作、アカウントも遊作だな……ってことは」
「遊作じゃん!」
「Ai、苦しい」
「ご、ごめん」
「どういうことだ……オレがふたりだなんて」
「バグじゃないの? 一度ログアウトしてみる?」
「……」
確かにそれが一番早いだろう。
だがAiは今プレイメーカーの胸の中だ。
あれは自分自身なのに、嫌な気分になる。
Aiに対しての思いは、自分が思ってたよりも暗くて深い。
「Ai、新しいカードを見にいかないか」
「行く行くー!」
「じゃあ、遊作は一度ログアウトして」
「嫌だ」
「そいつから離れるんだ、Ai」
「遊作……?」
「遊作、大丈夫だって。これは本当にお前だよ。わかるだろ? バグでデータが二重になったとか、対したこと」
Aiの体が傾く。
意識が遠のく。プレイメーカーがAiの体を抱き止めた。
「Ai!」
「Aiはお前には任せられない」
「何言ってる! お前は何なんだ!」
「オレはお前だ」
「Aiはオレが守る。お前は消えろ」
「ふざけるな!」
『おぉーっと?! 謎の少年とプレイメーカーが激しく言い争っています! 一体彼は何者なのか!?』
「?!」
ビルの屋上には報道陣とギャラリーが詰めかけていた。
みんなプレイメーカーのデュエルを見にきたようだった。
ブルーエンジェルとブレイブマックスこと島、草薙はフェンスから体を乗り出す。
「藤木……? アイツ何やって」
「プレイメーカーがふたり?」
「遊作?!」
遊作はデュエルディスクを確かめる。
中にあるのはサイバースじゃなかった。リアルでのダミーデッキだ。
「お前のデッキはサイバース以外はダミーデッキしかない」
「デュエルでは勝てない」
「く……待て!」
見慣れたサイバースの戦士が立ちふさがった。
冷たい電子の眼が遊作をにらむ。
大刀を遊作めがけて振りかぶった。
衝撃と痛み。
遊作はボードから投げ出され宙に舞った。
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