メンテの時間

メンテナンスになると我慢ができなくなる。
Aiの体を好きなだけいじりまわせる機会なんてそうそうない。
イグニスの不思議。精巧なアンドロイドもAiのようには動かない。
Aiの存在や体はイグニスの神秘だ。

(この手……いつもオレに触る手だ)

今は反応がない。いくらでも触れる。
Aiの抜いた足を触る。
たまらずに抱きしめた。

いつもは強がって冷静な態度でいるからか、我慢ができなくなる。
うるさいAiが黙って寝てるというのも可愛くて仕方ない。

「う……」
「?!」
「あれ……メンテ終わってない……?」
「あ、ああ」
「な、何。遊作、その足どうかした?」
「これはだな」

抱きしめていた足を慌ててほうった。

「何、壊れてた?」
「い、いや。ちょっと水虫でな……」
「ぇえ?! 俺も水虫になるの?!」
「ああ」
「ショック……」

「メンテ2時間もしてたの?」
「ああ。まだ寝てろ」

危ない、危ない。Aiに知られたら警戒してしまう。この時間はオレにとってかけがえのない時間だ。

Aiは再びスリープに入った。
Aiの髪をなでる。額もなでるしほおずりもする。

「ゆーさくちゃん……?」
「?!」

オレは台から飛び退いた。

「こ、これはお前を愛でてるわけじゃない」
「俺の額と頬どうかした?」
「リンゴ病と偏頭痛がでていた」
「リンゴ病?! 俺に?」
「治療するから寝てろ」
「ショック……」


Aiの安らかな寝顔は貴重だ。
寝顔は平和で静かで気持ちがこみ上げてくる。
オレは思わず唇を重ねていた。


「遊作」
「!」
「い、今のは唇に腫れが」
「あのなぁ、遊作。バレてんだよ。俺を愛でたいなら起きてる時にしてくれよ」
「……別に愛でてはない」
「最近、起きたら体がベトベトするし。体の中が違和感あるんだけど」
「……」
「遊作の特殊性癖」
「黙れ」
「メンテ中にいじるなんて、ズルすぎ~」
「……」
「じゃあ、お前が起きてる時にいじっていいのか」
「表面だけじゃないぞ、お前を触りたいのは」
「冗談きつい、遊作」
「冗談だと思うか」
「え……」
「暴れるなよ、Ai」 
「うわああ!! プレイメーカー様ぁ、止めてぇえ!!」

やっぱりAiは暴れたし泣いた。
触ればたちまち骨抜きになってしまうくせに、中のパーツを撫でられるのは嫌らしい。
よし……次のメンテナンスはプログラムを書き換えて完全にシャットダウンしよう……。



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