マイロボット

Aiと町に出ると視線が集まる。
スラリとした長身にこの顔だ。
まるで人形のような美しさ。まぁ人形なんだが……。
ただAiは他のSOLのアンドロイドとは違う。他のアンドロイドには人を惑わすような蠱惑さはない。
遊作はため息をついた。


「おい、Ai」
「なーに、遊作ちゃん」
「お前……顔を変えないか」
「へっ」
「その顔目立ちすぎる」
「目立ちすぎるって、俺はこういう顔なんですけど」
「顔をつけ変えればいい。島みたいな顔にしないか」
「絶対やだ!」
「島のどこが悪い。かっこいいだろう(棒読み」
「心にもないこと言うなよ。一体、なんなんだよ?」

まるで人間より人間らしい。Aiの表情は百面相だ。
俺はAiの顔を覗きこんだ。
金色の目は妖しく光っていた。
吸い込まれるような目だ。


「綺麗だ……」
「え」
「い、いや。空が綺麗だな」
「今日雨だけど」
「……」

とにかくイグニスの不思議な力はただのアンドロイドを数百倍魅力的に見せている。
Aiは目立ってはいけないのだ。
もし悪い人間に捕まってしまったら。


「……寝てるうちに猫型アンドロイドに移すか……」
「え、Aiの人権侵害だぞ、遊作!」
「……なんだよ……遊作」

Aiがもたれてくる。
手首を触られると心臓が跳ねる。
悩ましげな顔が近い。

「俺の体嫌いなの?」
「……」
「むしろ逆だが」
「?」
「オレが触ると感度センサーがバグるし、体温調整機能も不全になる」
「そ、それは」
「可愛くて仕方ない」
「ゆ、遊作」

見上げてくるのも反則だ。
いちいちあざとい。
まだ幼いから子供みたいな仕草になるのだろうが……。


「じゃあ何で」
「……お前を他の奴に取られたくない」

言うんじゃなかった。
Aiの奴ニコニコしっぱなしだ。

「遊作、焼き餅焼いてたの? かわいーい!」
「黙れ」

嫉妬なんて感情が自分にあるとは思わなかった。
しかもこんなのに対して。

「こんなのって何ですか? ぶー」
「心を読むな」
「心配すんなよ、遊作。俺、お前以外の人間に興味ねぇから」

そう言うAiの顔はひどく冷たかった。
Aiは時折人間を見下したような態度を取る。
その冷たい態度、財前たちにしたような冷酷さが見えることに俺は安心している。

(重症だな……)

「遊作、だーいすき」


これでは人間がAiを支配してるんじゃない。
Aiが人間を支配してるんだ。
そう思っても止まらなかった。





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