貴様を見てると腹がたつ
またひとりでフラフラしてるのか。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり。まるで子供だな、貴様は。
邪気のない笑顔に気が緩む。
自分がどれだけ価値のあるAIかわかっていないのか。
ならば教えてやらねばなるまい。
私はモニターから離れた。
「Ai」
「リボルバー先生」
「現実でその名はやめろ」
「んーとじゃあ」
「お兄ちゃん♥」
「……」
地球温暖化とは嘘だろう。地表は凍りついて足元から凍っていく。
私は身動きできなかった。
「貴様……抹消されたいのか」
「だって、俺様も博士の子だしー。先生は兄弟だろ。嫌ならどうしよ」
「了ちゃん、とか?」
Aiはにっこり笑った。
この笑顔に騙されてはいけない。
闇のイグニスは狡猾でずる賢い。人間を堕とすことにもたけている。
「何しに来たんだよ、まーた俺のストーカー?」
「ひとりでフラフラするな」
「だって夕飯の買い物しなきゃならねぇし」
「貴様の存在がバレたら、各国は何としても貴様を捕らえにくる」
「怖いねぇ」
「ふざけるな」
「大丈夫だって。この町にはハノイの騎士がいるから」
「俺が捕らわれたら、捕らえ返してくれんだろ?」
Aiは間近から顔を覗きこんでくる。
金琥珀の眼に酔いそうだった。
この誘うような態度。藤木遊作にやめさせるよう忠告せねば……。
動揺が顔にでないのは幸いだった。
「……無論だ。貴様を捕らえて、聖天樹に縛りあげてやる」
「おー怖い怖い」
Aiに手を握られてギョッとする。
あたたかい。人と同じ……。
「先生さー、暇なら付き合ってよ」
「……何をだ」
「遊作ちゃんの服買うの!」
「待て……私は……」
「行こ行こ!」
「……何故私が」
「俺の遊作ちゃんかっこいい」
「私が着ているのだが……」
どうやらAiの目には相棒しか映ってないようだ。
試着室に入らされせられていた。
マネキンの影からはスペクターが見守っていた。
「お労しや、リボルバー様……」
1/2ページ