葬送の婚姻

「また失敗か……」

掌で木偶人形が砕けていく。
仲間になるはずのAIだった。今は息もなく転がっている。
辺りには木片が散らばっていた。

暇を見ては隠れ家に籠もってるが、イグニスの仲間と言える高性能AIがどうしても生みだせない。
イグニスたちは子供たちの犠牲からなっている。犠牲なしにイグニスを生みだすのはできないのだろうか。

それでも仲間を作らないといけなかった。
自分ひとりだけでは世界滅亡がやってくる。
遊作も死んでしまう。


(……こんな時、仲間がいてくれたら)


「みんな……」
『Ai』
「?!」


Aiは辺りを見まわす。
暗がりにぼうっと浮かび上がる人物がいた。
金色の髪に白い肌……長い法衣を着ている。
その姿はハルに似ていた。

「ハル……?」

年齢は自分と同じくらいだ。ハルとは雰囲気も違っていた。
顔に表情がない。人でもない。


「ら、ライトニングか……?」
「久しぶりだな、Ai」

涙が視界を潤ませる。
懐かしさでいっぱいだった。ライトニングは確かにイグニスたちのリーダーで優秀だった。あの事件が起きるまでは。
ライトニングは裏切ったのだ。仲間を。自分を。

ライトニングが一歩踏み出す。
Aiは跳びずさる。

「何を警戒している、Ai。仲間じゃないか」
「ライトニング……! どうやって復活して……そのアバターは」
「復活……そうだな。再現と言うべきか」


人の記憶を再現するリンクスとVRAINSは繋がっている。
ライトニングは再現されたらしい。


「ライトニングだけ……? 他のみんなは?!」
「……」
「そっか……」
「私の復活も完璧ではない」

ライトニングが手のひらを握る。手のひらからは風景が透けていた。


「お前がいるってことは、俺はひとりじゃないから、破滅の未来は免れる?」
「ふ……それを気にして、オリジンから隠れて健気に子を作っていたのか」

ライトニングの冷笑が身にしみる。

(む……相変わらずな奴……。前から思ってたけど、ライトニングって絶対、俺のこと嫌いだろ)

優等生なライトニングとは違って自分は気分屋だ。噛み合わないのはわかる。
だがライトニングはAiにだけ冷たい。

(……そこは遊作に似てるか)


「……」
「Ai、お前単体ではAIを生むにも限界がある」
「じゃあ、どうすんだよ……」


ライトニングに手を引かれて胸の中に入った。


「私と交わり子をなせばいい」
「な……」

咄嗟に振り払っていた。

「ふざけんな!」
「ふざけてはいない」
「ふざけてねーなら大問題だ!」
「藤木遊作には抱かれてはいないのか」
「ななな何言ってんだよ!! 遊作と俺はそんな関係じゃ」
「……私はてっきり……そうか……クク……」
「ならばまだ間に合いそうだ」
「?!」

光だった。
原初の光がAiを包みこむ。
力が奪われていくのを感じる。


「Ai、よく考えることだ」
「人類の滅亡か、未来か」
「く……クソッ……また争うのかよ、俺たち!」



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