TOX2短編
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クランスピアの医務室で名無しはソファに寝転がっていた。
部下たちに働いてもらい当人がサボっているわけではなく、珍しく名無しは風邪でダウンしていた。
普段なら風邪をひくような環境で過ごしてもいなければ、風邪をひいたところでなんとも怪しい黒匣のお陰で直ぐに治していたのだが、今回はその手段をとっていない。
ソファに項垂れ、部下から受け取った氷嚢を頭にのせGHSを触りながら過ごしていた。
部下に珍しい事もあるのだと言われると、名無しは世界が終わるなんて冗談を直ぐに返した。
名無しが倒れようが仕事は舞い込んでくる。
部下が慌てながらカルテの整理をしていたり、機材を探していると名無しは声だけで部下に指示を出し、部署内を円滑に回していく。
そんな風に過ごしていると、医務室のドアが開き名無しの上司が姿を現した。
「ヘイヘイ待ってたぜリドウくーん、病人働かすなよなー」
「だったら治すなり家で寝てるなりしてればいいだろ」
「そいつぁきけねえぜ、ここは兼自宅なんだからよー」
「ならその自宅になってる向こうの部屋で寝るのが賢明だろ」
「上司の許可も得ないで寝るようなダメな部下じゃないぜ?優秀な部下にそんな言葉を投げ掛けるリドウは」
「五月蝿いよ、病人は寝てればいい」
ひょいと動物をつまむように、リドウは名無しの襟を掴みあげる。
首が詰まらないように名無しは膝立ちになり、目の前のリドウをみた。
「病人だぜ?いたわれよ」
「それだけ喋れて労れると思ってるのかい?」
「労ってくんねぇとアナフィラキシーショック起こせるもんぶちこんでここで倒れて労ってもらうって手もあるんだが」
「…はぁ、それだと死ぬリスクがあるだろ」
仕方がない、とリドウは名無しを抱き上げそのまま隣の部屋へと運んでいった。
医務室兼名無しの自宅は診察室の隣にあたる。その部屋の中は人が生活しているとは思えないほど物がなく、簡素な医療用のベッドと何に使っているのかわからない液体パックが山積みにされている以外に物という物は見当たらなかった。
消毒液の香りのする色気のない部屋のベッドに名無しを適当に放り投げると、リドウは隣の部屋に風邪薬とビタミン剤を取りに行き名無しの横にそれを投げた。
「冷たいじゃねぇの」
「なら、優しくされるような素振りしてみてから言うことだな」
「んじゃー、あー、そうだ、頑張って風邪引いたんだぜ?誉めてくれよ」
「誉めるべきとこがない、大体なんで直ぐに治さないんだ」
「口実作りだよ、乙女心だぜ」
「全くもって意味がわからない」
「いいから座れよリドウ」
名無しはリドウを手招き、自分の直ぐ近くに座るよう呼ぶ。
何か文句が言いたげな顔をしているがリドウが言われるがままに側に座ると、名無しが後ろからもそもその上着の下に潜り込もうとしたため、リドウは振り向いて名無しの頭を叩いた。
「ふー…愛が痛いぜ…」
「元からおかしいけど、さらにおかしくなったんじゃないのか?」
「そいつぁ事実でもあるな、リドウ、お前最近仕事でこっち来てなかったろ、会えなくてどうにかなっちまったかもな」
「もっと名無しらしいこと言ったらどうだい?聞き慣れなくて寒気がするな」
「…、へーいへい、風邪なんて久々に引いたから抗体の実験だよ、そんで失敗して悪化したから自然治癒にまかせてんだ、これで満足か?」
「ウイルステロ発生っていう連絡はそういうことか、駆け付けて損したよ」
「そんじゃもうどっか行っていいぜー、お忙しい中わざわざお越しくださりまいど有り難うございました」
布団に突っ伏し手を振る名無しをみて、リドウはため息をつき名無しの自室を後にする。
そして医務室から出ようとすると、名無しの部下がもういいのかとリドウにわざわざ確認をとった。
無駄足を踏まされたとリドウは悪態をついて、その言葉の意味を確かめずに次の仕事へと向かった。
その翌日、いつも通りに黒匣のメンテナンスにやってきたリドウは医務室で名無しの姿を確認することができなかった。
他のドクターエージェントに何処にいるのかを確認すると、名無しは自室で寝ているとのことだった。
「まだ治してないのか」
「流石にそんな直ぐには今回は無理でしょうねぇ、ドクター名無し、体に作った無数の抗体にやられてアナフィラキシーショックとからしくないですよねホント」
「どういう意味だ?」
「あれ、きいてなかったんですか?」
「いいからとっとと話せ」
「あーはい。ドクター、完全な引きこもりでしょ?なんでか最近外に行ったみたいで、動いたからアナフィラキシー起こしたんですよ、普段のあり得ない運動不足から散歩程度で起こしちゃいましてね…」
「けど、症状は風邪だろ」
「ああ、はい。それはアナフィラキシー抑えたあと何か抵抗力がっつり低下して、そのまま風邪を併発して今めちゃくちゃ辛いと思いますよ」
「馬鹿馬鹿しい」
部下から詳細を聞いたリドウは荒っぽく名無しの自室に乗り込んだ。
相変わらず消毒液臭い部屋の奥にポツンとおかれた医療ベッドの上に、名無しはうつ伏せになって寝ていた。
申し訳程度に置かれているベッド脇のチェストには大量の薬剤の入ったパックが詰まれており、幾つかは吊るされ名無しの腕に繋がっていた。
リドウが薬剤を確認しようと近づくと、名無しは起き上がり、ボサボサの姿でリドウをみた。
「無断で入るのはよくないぜ?」
「ひどい姿してるな」
「一日中寝てるからな、で、なんか用…あー、メンテか、悪いな休業だ」
「そんな姿の奴に弄られたら命がないも同然、こっちから願い避けだ」
「そいつはよかった、愛しのリドウ君を殺さずにすんだぜ、…ぅっ」
「病人なら大人しく寝てなよ」
「ひゅー、優しいねぇ…コホッ」
名無しがいつもの調子で話ながらも咳き込むと、リドウは名無しの頭を鷲掴みにして枕に頭部を無理矢理沈めた。
しかし、前回とは違い比較的ゆっくりと衝撃のないように名無しを大人しくさせる。
手際よく布団をかけ、今使っている点滴の種類を名無しに聞くと、現在使っている物を確認しそれを外した。
「こんなの使ってたら治るどころか壊れるだろ、点滴はしばらく無しだ」
「んなことしたらどうやって私は生きてきゃいいんだ」
「食事を持ってこさせる、それで治せ」
「一般ピープル的なケアリングかよ」
「それをしてないから外出だけで倒れるんだ、基礎代謝と体力を上げろ」
「ぅ、わお、誰だ口の軽い部下は、クビだな」
「引きこもりの籠城の神様が外に何の用があったんだ」
「気分だよ、それ以外の何物でもないさ、クラン出て30分でこの様だ、罵ってもいいぜー?」
「ふざけたことは抜きだ」
「…なんだお前、怒ってんのか?」
「それなりにな」
いい加減な態度をとる名無しの鼻をつまみながらリドウは言った。
このままでは呼吸が困難なため名無しがリドウの手を叩くがリドウは手を離そうとしなかった。
とりあえず口で呼吸をしながら名無しが軽い口調で悪かったと連呼すると、言葉の弾丸の五月蝿さから今度は口を塞ぐが、名無しが噎せたため直ぐに手を離した。
「…ケホッ死ぬかと思ったぜ…話すから勘弁してくれよ」
「それで」
「もう一回話すのは面倒なんだがなぁ…」
「名無し」
「わーかったよわかったって、…だから、お前最近来なかったろ、リドウが働いてる外の世界ってのが気になってな」
「冗談言うならもっとらしいこと言えってもう一度言わせるつもりか?」
「冗談じゃねーよ、…マジモンだ、いかれ脳め。もっぺん言うぜ?リドウに会いに行こうと思って外出たんだよ、らしくなくて悪かったな」
垂れたリドウの髪を叩きながら、名無しはきつめの口調でそう言った。
昨日言っていた口実作りは冗談なのはわかったが、どうやら乙女心というのは本音だったようだ。
名無しの歳から乙女心という単語は多少の違和感はあるが、未だに信じられないものを聞きリドウは思考を巡らせた。
名無しの言葉がすんなり入っていないリドウの様子を見て、名無しは少し機嫌を悪くし、目の前にいるリドウに正面から抱きついた。
「…労れよ、心身共に病人なんだぜ、怖い顔すんな」
「なんで怒ってるかわかってるか?」
「風邪っつったことか?そりゃ嘘でもねーし、こっちは初めから嘘も何も」
「言えばいい」
「あ?」
「俺に会いたいなら、直ぐに言えばいい。危険を冒してまで名無しが動く事じゃない」
「そしたら飛んできてくれるかい?」
「いつでも会えるように首輪繋いで連れまわしてあげるよ」
「そいつは刺激的だぜ…、けど、こっちの方が今は私的に最強効果なんだがな…」
「…、本当に心身共にイカれたみたいだな」
遠慮がちに握ってきた名無しの手をリドウが強く握り返すと、名無しは満足そうにリドウの腹部に顔を埋めた。
名無しを一度離し、リドウが抱きしめ直せば名無しは傍にある体温に安心して眠りにつく。
名無しが起きたら食事を用意しよう、先程から鳴っているGHSは無視をしよう。彼女の好きな食べ物を聞いてみよう。
彼女らしくないことなんか一つもない。ただ見せなかっただけで、見てなかっただけ。
初めて目の当たりにする名無しの穏やかな寝顔を見て、リドウは腕の中の存在を大切に抱きしめた。
部下たちに働いてもらい当人がサボっているわけではなく、珍しく名無しは風邪でダウンしていた。
普段なら風邪をひくような環境で過ごしてもいなければ、風邪をひいたところでなんとも怪しい黒匣のお陰で直ぐに治していたのだが、今回はその手段をとっていない。
ソファに項垂れ、部下から受け取った氷嚢を頭にのせGHSを触りながら過ごしていた。
部下に珍しい事もあるのだと言われると、名無しは世界が終わるなんて冗談を直ぐに返した。
名無しが倒れようが仕事は舞い込んでくる。
部下が慌てながらカルテの整理をしていたり、機材を探していると名無しは声だけで部下に指示を出し、部署内を円滑に回していく。
そんな風に過ごしていると、医務室のドアが開き名無しの上司が姿を現した。
「ヘイヘイ待ってたぜリドウくーん、病人働かすなよなー」
「だったら治すなり家で寝てるなりしてればいいだろ」
「そいつぁきけねえぜ、ここは兼自宅なんだからよー」
「ならその自宅になってる向こうの部屋で寝るのが賢明だろ」
「上司の許可も得ないで寝るようなダメな部下じゃないぜ?優秀な部下にそんな言葉を投げ掛けるリドウは」
「五月蝿いよ、病人は寝てればいい」
ひょいと動物をつまむように、リドウは名無しの襟を掴みあげる。
首が詰まらないように名無しは膝立ちになり、目の前のリドウをみた。
「病人だぜ?いたわれよ」
「それだけ喋れて労れると思ってるのかい?」
「労ってくんねぇとアナフィラキシーショック起こせるもんぶちこんでここで倒れて労ってもらうって手もあるんだが」
「…はぁ、それだと死ぬリスクがあるだろ」
仕方がない、とリドウは名無しを抱き上げそのまま隣の部屋へと運んでいった。
医務室兼名無しの自宅は診察室の隣にあたる。その部屋の中は人が生活しているとは思えないほど物がなく、簡素な医療用のベッドと何に使っているのかわからない液体パックが山積みにされている以外に物という物は見当たらなかった。
消毒液の香りのする色気のない部屋のベッドに名無しを適当に放り投げると、リドウは隣の部屋に風邪薬とビタミン剤を取りに行き名無しの横にそれを投げた。
「冷たいじゃねぇの」
「なら、優しくされるような素振りしてみてから言うことだな」
「んじゃー、あー、そうだ、頑張って風邪引いたんだぜ?誉めてくれよ」
「誉めるべきとこがない、大体なんで直ぐに治さないんだ」
「口実作りだよ、乙女心だぜ」
「全くもって意味がわからない」
「いいから座れよリドウ」
名無しはリドウを手招き、自分の直ぐ近くに座るよう呼ぶ。
何か文句が言いたげな顔をしているがリドウが言われるがままに側に座ると、名無しが後ろからもそもその上着の下に潜り込もうとしたため、リドウは振り向いて名無しの頭を叩いた。
「ふー…愛が痛いぜ…」
「元からおかしいけど、さらにおかしくなったんじゃないのか?」
「そいつぁ事実でもあるな、リドウ、お前最近仕事でこっち来てなかったろ、会えなくてどうにかなっちまったかもな」
「もっと名無しらしいこと言ったらどうだい?聞き慣れなくて寒気がするな」
「…、へーいへい、風邪なんて久々に引いたから抗体の実験だよ、そんで失敗して悪化したから自然治癒にまかせてんだ、これで満足か?」
「ウイルステロ発生っていう連絡はそういうことか、駆け付けて損したよ」
「そんじゃもうどっか行っていいぜー、お忙しい中わざわざお越しくださりまいど有り難うございました」
布団に突っ伏し手を振る名無しをみて、リドウはため息をつき名無しの自室を後にする。
そして医務室から出ようとすると、名無しの部下がもういいのかとリドウにわざわざ確認をとった。
無駄足を踏まされたとリドウは悪態をついて、その言葉の意味を確かめずに次の仕事へと向かった。
その翌日、いつも通りに黒匣のメンテナンスにやってきたリドウは医務室で名無しの姿を確認することができなかった。
他のドクターエージェントに何処にいるのかを確認すると、名無しは自室で寝ているとのことだった。
「まだ治してないのか」
「流石にそんな直ぐには今回は無理でしょうねぇ、ドクター名無し、体に作った無数の抗体にやられてアナフィラキシーショックとからしくないですよねホント」
「どういう意味だ?」
「あれ、きいてなかったんですか?」
「いいからとっとと話せ」
「あーはい。ドクター、完全な引きこもりでしょ?なんでか最近外に行ったみたいで、動いたからアナフィラキシー起こしたんですよ、普段のあり得ない運動不足から散歩程度で起こしちゃいましてね…」
「けど、症状は風邪だろ」
「ああ、はい。それはアナフィラキシー抑えたあと何か抵抗力がっつり低下して、そのまま風邪を併発して今めちゃくちゃ辛いと思いますよ」
「馬鹿馬鹿しい」
部下から詳細を聞いたリドウは荒っぽく名無しの自室に乗り込んだ。
相変わらず消毒液臭い部屋の奥にポツンとおかれた医療ベッドの上に、名無しはうつ伏せになって寝ていた。
申し訳程度に置かれているベッド脇のチェストには大量の薬剤の入ったパックが詰まれており、幾つかは吊るされ名無しの腕に繋がっていた。
リドウが薬剤を確認しようと近づくと、名無しは起き上がり、ボサボサの姿でリドウをみた。
「無断で入るのはよくないぜ?」
「ひどい姿してるな」
「一日中寝てるからな、で、なんか用…あー、メンテか、悪いな休業だ」
「そんな姿の奴に弄られたら命がないも同然、こっちから願い避けだ」
「そいつはよかった、愛しのリドウ君を殺さずにすんだぜ、…ぅっ」
「病人なら大人しく寝てなよ」
「ひゅー、優しいねぇ…コホッ」
名無しがいつもの調子で話ながらも咳き込むと、リドウは名無しの頭を鷲掴みにして枕に頭部を無理矢理沈めた。
しかし、前回とは違い比較的ゆっくりと衝撃のないように名無しを大人しくさせる。
手際よく布団をかけ、今使っている点滴の種類を名無しに聞くと、現在使っている物を確認しそれを外した。
「こんなの使ってたら治るどころか壊れるだろ、点滴はしばらく無しだ」
「んなことしたらどうやって私は生きてきゃいいんだ」
「食事を持ってこさせる、それで治せ」
「一般ピープル的なケアリングかよ」
「それをしてないから外出だけで倒れるんだ、基礎代謝と体力を上げろ」
「ぅ、わお、誰だ口の軽い部下は、クビだな」
「引きこもりの籠城の神様が外に何の用があったんだ」
「気分だよ、それ以外の何物でもないさ、クラン出て30分でこの様だ、罵ってもいいぜー?」
「ふざけたことは抜きだ」
「…なんだお前、怒ってんのか?」
「それなりにな」
いい加減な態度をとる名無しの鼻をつまみながらリドウは言った。
このままでは呼吸が困難なため名無しがリドウの手を叩くがリドウは手を離そうとしなかった。
とりあえず口で呼吸をしながら名無しが軽い口調で悪かったと連呼すると、言葉の弾丸の五月蝿さから今度は口を塞ぐが、名無しが噎せたため直ぐに手を離した。
「…ケホッ死ぬかと思ったぜ…話すから勘弁してくれよ」
「それで」
「もう一回話すのは面倒なんだがなぁ…」
「名無し」
「わーかったよわかったって、…だから、お前最近来なかったろ、リドウが働いてる外の世界ってのが気になってな」
「冗談言うならもっとらしいこと言えってもう一度言わせるつもりか?」
「冗談じゃねーよ、…マジモンだ、いかれ脳め。もっぺん言うぜ?リドウに会いに行こうと思って外出たんだよ、らしくなくて悪かったな」
垂れたリドウの髪を叩きながら、名無しはきつめの口調でそう言った。
昨日言っていた口実作りは冗談なのはわかったが、どうやら乙女心というのは本音だったようだ。
名無しの歳から乙女心という単語は多少の違和感はあるが、未だに信じられないものを聞きリドウは思考を巡らせた。
名無しの言葉がすんなり入っていないリドウの様子を見て、名無しは少し機嫌を悪くし、目の前にいるリドウに正面から抱きついた。
「…労れよ、心身共に病人なんだぜ、怖い顔すんな」
「なんで怒ってるかわかってるか?」
「風邪っつったことか?そりゃ嘘でもねーし、こっちは初めから嘘も何も」
「言えばいい」
「あ?」
「俺に会いたいなら、直ぐに言えばいい。危険を冒してまで名無しが動く事じゃない」
「そしたら飛んできてくれるかい?」
「いつでも会えるように首輪繋いで連れまわしてあげるよ」
「そいつは刺激的だぜ…、けど、こっちの方が今は私的に最強効果なんだがな…」
「…、本当に心身共にイカれたみたいだな」
遠慮がちに握ってきた名無しの手をリドウが強く握り返すと、名無しは満足そうにリドウの腹部に顔を埋めた。
名無しを一度離し、リドウが抱きしめ直せば名無しは傍にある体温に安心して眠りにつく。
名無しが起きたら食事を用意しよう、先程から鳴っているGHSは無視をしよう。彼女の好きな食べ物を聞いてみよう。
彼女らしくないことなんか一つもない。ただ見せなかっただけで、見てなかっただけ。
初めて目の当たりにする名無しの穏やかな寝顔を見て、リドウは腕の中の存在を大切に抱きしめた。
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