1章
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「やったー!陸地だーっ!」
サマンガン海停につくなり、名無しは陸地に喜びの声を上げていた。
イ・ラート海停から現地につくまでの間、船が苦手なのか乗りなれていないのか理由は定かではないが、名無しは甲板にはあまりおらず、船室で休んでいた。そのため、陸地に喜ぶ名無しの姿をみてジュードが安心したのか、名無しに声をかける。
「よかった、名無し。元気出たみたいだね」
「ん?私どうかしてたかしら?」
「名無し、船で元気なかったから、船酔いしたんじゃないかなってちょっと心配だったんだ」
「ああ、それね、うん。ちょっと考え事してただけだから、大丈夫よ。ありがとう。」
「考え事…。ねぇ、名無し。僕もすこし引っ掛かることがあるんだよね」
「ん?」
「名無しが狙われる理由。店主さんから聞いた話だけじゃ、なんか大きくなりすぎてる気がして…」
「そうねー…。本当、なんなのか困っちゃうわ」
アルクノアの事を言うわけにもいかなく適当に話を流していたが、名無し自身もなぜラ・シュガル軍に強く出ただけでアルクノアに繋がるのか、と疑問を抱えていた。
そして、港封鎖と同時にイル・ファンからきたジュード達、ジュードと共にいる、アルクノアに繋がる人物アルヴィンとマクスウェルと名乗るミラ。アルクノアにつながる点が、今目の前に自分を含めると3つある。名無しは、現段階で点が線になる要素がなくもやもやとしていた。
アルクノアが今どのように動いているのか名無しは知らない。だが今現在アルクノアの何かの目的に自身が捲き込まれようとしており、その何かに関係のある人物と都合よく目の前に二人も現れるだろうか?、直ぐに解決できない目の前の事案に名無しは不快感を感じた。
故に名無しは、悩みはしたものの、この不快感を取り除きたく一行についていこうと決めたのだ。
歩きながら、不鮮明な事を考察していると突如、名無しの目の前が真っ暗になった。
「へ?なになに?なに!」
「名無しさっきからぼーっとしてちっとも僕たちの話聞いてないぞー」
頭上の全方向からティポの声が聞こえ、名無しは暗闇であるにも関わらずティポの姿を探そうと辺りを見渡そうと首を動かす。すると、バランスが取れず転倒しそうになったが誰かが名無しを支えたようで、名無しは転倒せずにすんだ。そして、その直後に何かが頭部から剥がされる感覚があると、名無しの視界が暗闇からサマンガン海停へと変わった。そして、目の前には心配そうな顔をしたエリーぜがいた。
「名無し、大丈夫ですか?」
「ぼーっとしてると、僕が食べちゃうんだぞー」
「あ、うん、ごめん。ちょっと考え事してて」
そういって、名無しは謝りながら、エリーゼとティポを撫でた。
名無しはエリーゼとティポを目の前にすると何となく撫でたくなる。心の思うがままに撫でつづけいると、そいえば先ほど誰かが支えてくれたのを思い出し、名無しは辺りを見渡した。ミラ、ジュード、アルヴィンの誰かだろうと思い、お礼を言おうと思ったのだが、三人とも名無しから離れた距離におり、誰にお礼を言えばいいのか名無しは困った。
すると、難しそうな顔をしている名無しに気が付いたミラが、名無しにこれからの事を少しきつめの口調で説明をしだした。
「イル・ファンに向かうためカラハ・シャールという町に向かう、この海停はみる限りまだ警備は手薄に見える、今のうちに出来れば向かいたいのだが」
「そういうことならとっとと向かおうぜ。な、ジュード君」
「え、うん、そこでいい人が引き取ってくれるといいね、エリーゼ」
「え?」
「ジュード君?それってなんのこと?」
場の空気が少しだけはりつめた感じになる。ミラがイル・ファンへ急ぐ理由、エリーゼとジュードの会話の意味、名無しはそれぞれを把握していない状態であった。各人の顔を見ても、明らかに皆表情が晴れやかではない。今このタイミングで、一体何故この雰囲気になったのか、というのはとても聞きづらかった。名無しが話を聞いていなかった、というのは雰囲気を察する限り関係ない様にも思えるが、名無しはアルヴィンに何があったのかを聞くことにした。
「ねぇ、なんかあったの?私、申し訳ないけど考え事して聞いてなかったから…」
「ん?あぁ、気にしなくていいんじゃね―の?あいつらの都合ってやつだよ」
「そういうものかしら?」
「そういうもんだよ。つか、お前の方こそ大丈夫か?」
「何が?」
「考え事、なんか気になってんの?」
「ん?ううん、それことたいしたことないから大丈夫よ」
「ふーん。ま、考え過ぎて転ばねぇようにな」
「へ?あ、アルだったのね、さっきの。ありがとう」
どういたしまして、と適当な返事がアルヴィンから返ってくると、名無しは先ほど支えてくれたのがアルヴィンだとわかり少しほっとした。
あまり良い雰囲気でない中、海停にミラ達を狙う者がいないかを確認しつつ、ミラ達は先に進むことにした。
すると、発とうと海停歩いていると、名無しがある物に気が付き、一点に視線を集中させた。
名無しの行動をよく思わなかったミラが、名無しに一言苦言をすると、名無しが視線の先を指差し、ミラにそれを教える。
「ねぇ、あれってもしかして…」
「これってぇー、ジュード君とミラ君だー!」
「これって手配書、だよね」
「わるそーな顔!」
「でもこれ…似てないね…」
「くくくっ、これじゃ当分は大丈夫そうだな」
「…だが、私はこんな風に見えているのか…?」
意外にも手配書の似顔絵にミラが落ち込む様子を見せた。ミラを慰めるためにだろうか、ジュードがミラの魅力について喋り出すが、途中、揺れるところという表現が入り、アルヴィンがジュードを茶化した。すると、どこか嫌な緊張感のあった雰囲気が少し和んだ。
そして名無しは一人、どことは言わないが確かにミラはよく揺れる、と心の中で呟いた。
手配書のおかげで空気が和んだところで、一行はカラハ・シャールへと足を運ぶことにした。
港から出て間道を進む間に名無しは少しジュードに先程の会話の事情を聞いた。
ミラは使命がありイル・ファンへ、エリーゼは村に監禁されていたのを見掛けつれてきたため引き取り手を探しているだとかで、この少年はミラの使命とエリーゼの世話とで自ら両手に面倒を抱えたのだということを名無しは把握した。そしてアルヴィンは、ミラの護衛を依頼されたらしく現在に至るらしい。
そんな話をしながら歩いていると、カラハ・シャールへと直接つながる道の近くまで気が付くと来ていた。
しかし、その道は検問によって封鎖されているため通行ができない状態であった。
あの手配書では顔で認識される心配は無いにしても、通るところは検問だ。なんかしら身分を示すものの提示は求められるだろう。それを考えると検問の突破はまず無理だと思った方が賢明である。
ジュード達はどうするのか相談をする。話し合いの中で、サマンガン樹海を突破する案が上がったものの、その策はエリーゼには苦難だとジュードが主張をした。しかし、その意見に対しミラもまた厳しい意見を返すと場の空気は再び重いものとなった。
沈黙が続くと、エリーゼが大丈夫だと言い自ら樹海の方向に歩み出した。名無しも急ぐのであればと思いエリーゼについていくと、アルヴィンが名無しに話しかけてきた。
「名無し、お前戦えんの?」
「ミラが守ってくれるって事でついてきてるけど、最低限は戦えるつもりで来てるから」
「ついこの前、二人にボコボコにされた奴の言う言葉か?」
「う…それを言われるとつらいわね…けど、エリーゼだってああして頑張ってるんだもの。大人の私が何もしないわけにはいかないじゃない?」
「どうしても怖いってんなら、守ってやらなくもないぜ?」
「魔物相手なら怖くはないわよ!あ、うーん…大きさにもよるわね。えげつないのも無理かも…。でも、アルは私よりエリーゼの方をみてあげた方がいいんじゃない?」
「ん?あぁ、言われなくても当然」
「なに、その間抜けな返事…」
「なんでもねぇよ」
「?なら、いいけど…」
「二人とも、喋っているなら置いていくぞ」
ミラの強い口調が刺さり、その言葉に急かされて名無しも樹海の奥へと進んでいく。以前にもあったアルヴィンとの会話の妙なテンポがどことなくすっきりしないのに名無しは消化不良感を感じたが、今追及するとミラにまた怒られると思い、名無しはそれ以上話すのをやめた。
樹海は名無しが想像していたよりも、深く暗かった。
初めて見る樹海の中で名無しは時々そわそわと辺りを見渡す行動がみられ危なっかしいところがあったが、側にいるエリーゼを時々気にすることで、足を踏み外すなどの危険な目にはあうことはなかった。
途中ツタを登ったり、草木の下を潜ったりと容易に進行できないところが多々あったが進めないこともないのでそのまま一行は突き進む。
ミラが率先して先頭をきるので、所々男性陣の視線が際どいところに向かっていたため、名無しの視線も思わずそこにいく。どことはいわないが時々引っ掛かって大変そうな彼女の姿をみて、なんて無防備なのだろうと心配になったが注意をしたところでミラが聞くとは思えなかったため、できるだけミラの後ろに自分が付いて壁になろう、とミラの後ろにくっ付いて行った。
どれぐらい進んだであろうか、突如木の姿をした魔物に襲われた。全員武器を構える中、名無しとエリーゼは下がっていろとミラに言われ後方にさげられた。
現れたら魔物は攻撃範囲が広く、名無しやエリーゼを庇って戦うには若干の不便があった。
戦闘を行って足手まといになるのと、守られているだけで足手まといになる。
両方を天秤にかけ、名無しは後者であることの方が気分がよくなかったため、微力であるが傍にいるエリーゼを守ろうとポーチからナイフを取り出し、近づいてくる魔物にわずかながら応戦した。
魔物が突然全身から毒粉を出すと、粉を浴びないよう後方に大きくバックステップをするとエリーゼが戦闘に参加しようと前線に出ていた。回り込んでいた他の魔物が名無しとエリーゼを死角から襲おうとした。
存在に気が付いた名無しがエリーゼを引っ張って避けようとしたが、名無し自身、戦闘に慣れていなかった為、行動をとろうとするも体が追い付かず転倒をする。その事に気が付いたミラが、エリーゼを庇おうとし魔物の毒の粉を少し浴びてしまった。
「くっ、しまった…っエリーゼ下がっていろといっただろ!」
「ミラ!もっとエリーゼに気を付けて戦わないと!」
「わ、わたし、私も戦えます!」
悔しさからなのか涙を浮かべながらエリーゼが叫ぶと、彼女の周りに精霊術の術式が浮かび上がり、ミラの毒を治癒した。彼女が高度な治癒術を使用したのに皆は驚いたが、そのお陰で直ぐに状況を有利なものに変え、エリーゼの援助を得て魔物の討伐は事を終えた。
しかし、魔物を倒すなり、エリーゼがその場に座り込み泣き出した。ジュードとミラが先程からちくちくした雰囲気でいるのが自分のせいだと感じたらしく、邪魔にならないようするから二人の仲直りをしてほしいとエリーゼは二人に言った。ミラはわかったといっていつの間にか固くなってしまっていた表情をようやっと柔らかいものに変え、緊張感のあった空気はどこかへ消え去った。
そして、戦闘に不慣れな状態で応戦した名無しをミラが少し叱った。
先ほどのエリーゼとの会話の直後であったため、口調は柔らかかった。ジュードが名無しもエリーゼと同じ気持ちで応戦したのだろう、とフォローを入れてくれた為、名無しの気持ちはミラには理解してもらえたようだった。
今後の戦闘は、名無しとエリーゼに無理のない後衛してもらう形で行っていこう、とこの場は丸く収まった。
改めて奥へと進むと今度は突如、名無しが足を止めた。
つられるように、名無しと手をつないで進行していたエリーゼの足も自然と止まる。そして、二人の背後を守るように歩いていたアルヴィンも必然的足を止めた。
静止したまま名無しは真っ直ぐに地面をみて、何かを我慢しているかのようにぐっと手を強く握っていた。どうしたのかと思いエリーゼが名無しの袖をつまんだりティポも同様に袖を噛んだりし、どうしたのかと問いただすも名無しは俯いたまま反応を見せなかった。
一向に動こうとしない名無しに諦めがでたのか、アルヴィンがミラとジュードを呼びとめる。
呼び止められたミラが、名無しに気が付き周囲に敵が出たのか警戒をしながら名無しに声を掛けた。
「いったいどうした、名無し」
すると突如、まるで幼い子供のようなきらきらした瞳で名無しが口を開いた。
「もう我慢できない!」
そして、この後名無しのとる行動に一同は目を疑った。
***
「こんなにすごいなんて…っ!」
溜まっていた感情を吐き出すように、名無しは大きな声をだした。
一体何に対してその言葉を発したのか一同は不思議に思った。名無しのその言葉は辺り一面に広がる自然一帯、植物すべてに向けられた言葉だった。
「マスターの図鑑でしかみてなかってけど、やっぱりリーゼマクシアの自然ってすごいのね!ああ、これなんか葉の薄さに対して茎や根のはりかたが珍しいのね……、みたことないかも。あ、これ丘似合ったとの同じやつ…でもこの部分が違うのね、一体どうして、土の色のせいかしら?確かに一部分に苔が群生してるしこの苔もよくよく見たら花の集まりに見えるわね…。土の成分を調べれる価値はあるだろうけど、ううん。それだと結局マナの循環に影響されてるとしたらなんの解決にも……でも隣接してこの花が咲いているってことはもしかして…」
あれでもない、これでもない、と名無しの口からは植物に関するであろう言葉が次々と流れ出た。ミラ達などまるでいないかのように、周囲の植物や土を見て回り気になった物は採取をしていった。人が変わったかのようにあちこちを探索する姿は、狂喜に近いものを感じさせる。
完全に状況を忘れて我が道を行く名無しに、どう声をかけるか皆は考えた。放っておこうという考えるのも手なのだが、名無しを旅に誘った手前置いていくわけにはいかない。果たして名無しを止める術を持っているのは誰なのだろうか。
ミラが妥当なのではないか、と一同が思う中、ジュードがその役かってでた。
「えー…と、名無し?どうしたの?」
「どうしたも!こうしたも!こんなにたくさんの植物群を見るの私はじめてなの!すごいわ本当に。たとえばこれとか」
「あぁ、それはこのサマンガン樹海でしかない植物でね、他のところでよく見掛けるものの原種だったんだけど…」
「へぇ、そうなのね。品種がきっかけってなにかしら?見たことはないけど、種別からして交配した植物は」
「ああ、それなら…」
制止にはいったはずのジュードがそのまま名無しの会話に混ざってしまうと、これは駄目だとアルヴィンが呆れて肩をすくめた。
「ちょっとー、ジュード君ー?名無しー?…ダメだ聞こえてないぜ、これ。どうするよミラ様」
「どうするもなにも、連れていくしかあるまい」
「ミラ君ってば超クール!」
「あの、でも、どうやって…?」
「まぁ、普通に話しかければいいだろ?」
そういうとアルヴィンが会話に夢中の二人に近づき話しかける。
「二人とも、楽しい時間のところ悪いだけど、もういいか?」
「あ、ごめんアルヴィン、つい夢中になっちゃって…。名無し、そろそろ行こうか」
「あ、うん。ごめん。ああ、でも待って。 せめてあれだけでも欲しいかも。んんー…届かない」
高い位置にある花を採ろうと名無しが手を伸ばした時、隙を狙ってか名無しの脇の下にアルヴィンの腕が回り、ひょいと名無しを軽々しく持ち上ちあげる。その勢いに合わせて、名無しの手が目的のものに届くと、名無しは嬉しそうにそれを回収した。
「ありがとう、アル…ってちょっと! なに、なに?!」
「ほいよ、ミラ様。名無し回収完了っと」
目的のものを回収したにも関わらず、アルヴィンは名無しを抱えたままミラとエリーゼの所に戻ってきた。力業で回収された名無しは、未だに地面に足を着けさせてもらえない事を不思議に思い、アルヴィンとミラの顔を交互に見た。
「んむ。アルヴィン、出来ればまた今みたいにならないようそのまま運んでくれると助かるのだが」
「了解」
「へ?あ、夢中になったのはごめんなさい!反省はしてるわ、だから降ろしてお願いだから!重いから!」
「そうか?わりと軽いぜ?」
「いいから、重いとかよりも恥ずかしいから降ろして!」
「って、言ってるけどどうするよミラ」
「名無し、一体何がお前をそうさせたのか私にはわからないが…」
「アルヴィン!今すぐ名無しを降ろして!早く!」
突如、ミラが名無しに一言苦言を言おうとした言葉に被さるように、ジュードが名無しを降ろすよう叫んだ。
「なんだジュード君?羨ましいのか?」
「そうじゃなくて、上!」
ジュードがそう叫び、言われた通りに上の方向を見ると、気がつかないうちにミラ達は魔物に囲まれていた。
先ほどの魔物とは違い、すぐに襲ってくる姿勢はみえなかった逆にこちらを探るような動きに警戒心が高まり個々に武器を構える。ふざけている場合ではないと、名無しを下ろすとアルヴィンも武器を構える。名無しが地面に着地すると同時に、ミラが名無しの手を引き、守るように自身の背中に隠す。緊張の中、魔物と共に一人の大男が姿を現した。名無しには彼が何者かわからなかったが、ジュード達が大男と会話を始める。どうやらジュード達は面識があるようだ。名無しは状況を理解するべく、彼らの話に耳を傾けた。
大男の名はジャオといい、彼はエリーゼを連れ戻しにきたとのことだった。ジュードとエリーゼがジャオの申し出を断ると、その答えを合図に戦闘がはじまった。
「名無し、すまないが流石にお前を守って戦うというわけにはいかないようだ」
「みたい、だね。できるだけ足引っ張らないよう頑張るわ」
「魔物の相手はできるな?」
「うん、そっちは私には無理だと思うからお願いするわ、ミラ」
ミラが名無しに、任せろと一言言うと、ミラは真っ先にジャオと戦闘を始める。名無しも魔物と戦うため、ポーチにある小型のクロスボウを取りだし魔物に向けて構える。以前、アルクノアに襲われた際は上手く動くことができなかったことを踏まえ、名無しは発つ際にこの武器を選んだ。上手く立ち回れる自信は無かったが、やるしかないと決め、魔物に狙いを定め名無しも応戦した。
ジャオに突き進むミラの後ろにジュードが続く。アルヴィンはエリーゼやジュード、ミラをうまく支援しながら魔物との戦闘を行っていた。
名無しはエリーゼとできるだけ固まってるようアルヴィンにいわれ、エリーゼと協力しながら魔物の討伐を行った。
しかし、今まで名無しが戦ってきた魔物と比較し、明らかにこの魔物たちは強かった。
名無しは必死に応戦したが、明らかに名無しの戦闘スキルが不足しているのがわかる。
アルヴィンやミラ達に守ってもらいながらも戦うが、それでもやはり、ジャオがいる状態では限界がある。
ミラ達がジャオとの戦闘に集中している隙をみたかのように、魔物が名無し達に襲いかかってくる。
飛びかかってきた魔物は名無しの目を狙ったかのように襲ってきたため、思わず名無しは顔面を腕で庇うと、魔物の牙が腕に食い込んだ。腕の骨が軽く軋む音が一瞬聞こえたかと思うと、銃声と共に名無しの正面で獣の肉が爆ぜ飛び散った。名無しの腕に牙を喰い込ませたためか、魔物は生首だけを名無しの腕にだらしなく残した。
名無しが鬱陶しく魔物の生首を振り落とすと、エリーゼが名無しに駆け寄り治癒術を施す。
ジャオとの戦闘はきりがなく、ミラ達はこのまはでは不利になると察した。直ぐに、ジュードの機転でその場にあったケムリダケと大樹を利用しジャオを煙に巻き、ミラ達は急いで樹海から立ち去った。
そして、休息を一度とる為にサマンガン樹海から抜けた先の間道にある、小さな洞穴に一同は腰を落ち着けた。
「いたた…っちょっとまってストップ」
「駄目だよ名無し。じっとしてないと治療できないから」
「大丈夫だって、私はいいから、ほらエリーゼとかアルも怪我してるし。ミラだってああはしてるけど、結構思いっきり吹っ飛んでた気がするし…」
「私はどうということはない、ジュード、名無しの治療してくれてまわん、…っ」
「ミラ!大丈夫?みせてみて」
「少し痛むだけだ、どうということは」
「いいから、ほら」
「ミラ、私も、治療しますっ」
「ジュード君ラッキーだねぇ、このタイミングで女の子の体に触れまくって」
「そ!そんなんじゃないよ!アルヴィン!」
「ジュード君のえっちー!」
「ティポまで何言ってるんだよ!」
負傷をしたわりには、場の空気はティポやアルヴィンが調子よくしゃべっているお陰で和やかなものだった。治癒術を使える者が二人もいるというのはとても心強く、エリーゼやジュードのお陰で軽傷であれば容易に治っていった。外傷こそ綺麗に治るが直ぐに痛みが引くわけではない。 とくに痛みを訴えるわけでなくとも、ジュードが心配してそれぞれを看てまわり続けた。自分の傷はいいのだろうか、と名無しは世話しないジュードの様子を眺めていた。
「ジュード君はいいお医者さんになれるね」
「優しすぎんじゃねーかとは思うけどな。ま、そこがジュード君の良いところだろうけど」
「昔のアルヴィンみたいで可愛いじゃない」
「自分で言うのもなんだが、今の俺の方がずっと男らしい優しさに溢れてると思うぜ?」
「あはは、何それ」
「嘘だー!アルヴィン君は意地悪だよー!エリーにちっとも優しくない!」
「意地悪、です」
「って、言われてるけど」
「おいティポ、余計なこというと綿抜くぞ?」
「だめ!ティポがしなしなになっちゃう!」
「脅しだー!脅迫だー!」
「ふふ、おもしろいなー、本当」
ティポとアルヴィンの会話は、聴いていて飽きがない。二人の光景を微笑ましくみていると治療を終えたのかミラが立ち上がり、この場を発つ様子を見せた。
「では、それだけの元気があるのだ、そろそろ出発しても構わないだろう」
「そうだな、どーせ休むならカラハ・シャールの宿の方でゆっくり休みたいぜ」
「それは私も同意かな、かるくお腹もすいちゃったし」
「私も、お腹すきました…」
「ミラの傷の具合もいいし、僕もそうしたほうがいいとおもう。」
「よし、それでは行くとしよう」
ミラの言葉を合図に一行は目的のカラハ・シャールへと向かうことにした。
間道を進むと、一行の目の前に巨大な風車のようなものが姿を現し、目的地が近づいているのを知らせた。