3章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どこからが現実でどこからが夢なのか。
はっきりとしない意識を覚醒させながら、名無しは身を起こした。
名無しの目の前にある景色は、いつか見たことのある荒野だった。
そのいつかに比べて大分枯れてはいるが、それは間違いなく故郷の景色であることを名無しは認識した。
あの時、アルヴィンの前に飛び出した結果何もできずに意識が途絶えた事だけは覚えている。
故に、自分がまともに生きているはずはないと判断し名無しはここはきっと死後の世界か何かで、自分の記憶が反映されているだけなのだと思い込んだ。
人は死ぬと精霊になる、きっとそのための記憶の整理の一つなのだろうと思い名無しは歩き出すことにした。
「記憶の保管ってやつかしら…昔の夢もみたし、夢の中で夢をみるなんて私も器用ね」
果たして今いるところを夢と呼称していいのわからないが今はそう定義するのがしっくりくる。
記憶のなかで記憶をたどり歩くというのは不思議な感覚である。
幼い頃、研究室に勤めていた両親にどうしても会いたく道を知らないままヘリオボーグ軍事基地に向かい、トルバラン街道で迷子になった事が名無しにはあった。
その時は偶然通りかかった研究員の人に見つけてもらうことができ、基地で保護してもらったという子供ながらに無茶をしたことを覚えている。
当然そのあと迎えにきた両親に酷く叱られたが今となっては良い思いでの一つである。
「あの時もここ歩いたんだよなぁ、大人になってみると向こうにちゃんとヘリオボーグ基地が見えるのね、そう思うとずいぶんとカッコ悪い迷子だったわね…」
誰に話しかけると言うこともなく、名無しは呟きながら基地の見える方へと進んでいった。
記憶の保管というのならば、もう少し植物が群生している場所があってもいいというのに、一面は寂しい景色を見せるだけだった。
まるで現在のエレンピオスがこうであるといっているかのようでなんだか居心地は悪かった。
真っ直ぐ基地に向かって歩いていると、自分の体に痛みがあることに気がついた。
あの時、そういえばミュゼと戦ったときに体の一部を失ったことを思いだしそこに触れてみると、触れた箇所には、痛みと共に体が存在していた。
死後の世界というのはこうも都合が良いのかと苦笑いをしながら名無しは基地の中に入ろうとすると、兵士が名無しに止まるよう声をかけた。
「そこのお前、なにをしている。止まりなさい」
「ごめんなさい、えっとたまたま迷って、ここが見えたから両親が働いていたとおもって」
「…名前は?」
「えっと、シュテインっていう研究員だと思うんですけど…」
自分の生まれの名を兵士につげると、兵士は確認をとるからそこで待つようにと名無しに伝え建物の中に向かっていった。
妙な現実味に気持ち悪さを感じながら、まさかとは思いつつ名無しは兵士が戻ってくるのを待った。
しばらくして兵士が戻ってくると、名無しに会うという人がいるらしく、施設内の研究室に案内をされるとそこには眼鏡をかけた男性が一人名無しを待っていた。
自分の記憶の中にこの様な人を見た覚えはなく、今いる場所が現実である可能性を示しだした。
「君がシュテイン教授の娘さんかい?話はアルクノアから…と、それはいいか。名無しさんだね、まさか一人で来るとは思ってなくてねそれじゃあ早速なんだけど」
「え?ちょ、ちょっと待ってください、なんの事なのか」
「あーごめんごめん。バランだ、よろしく。それで改めて早速なんだけど」
「あ、あの!その早速の意味が全くわからないんですけど…」
「ん?おかしいな、ってことははなしをきかずにやって来たってことになるのか、それなら一人なのも納得いくけどどうやって一人できたんだい?あ、こっちではぐれたのか!」
目の前のよく喋る人に名無しは困惑をした。
バランという人物は名無しの事を事前に把握しておりアルクノアとの関係性を口にしたため、ここが現実であるのを名無しはようやっと確信した。
何故無事生きてこの場に戻ってきたのかは疑問ではあるが今は目の前の人物の発言の意味を理解するのが優先的で、それを考える余裕はなかった。
名無しを迷子扱いしたバランに名無しはその言葉の意味を確認した。
バランから話を聞くと、ジランドが名無しに言っていた言葉と合致する部分が多かった。
話を要約すると、源霊匣をエレンピオスにもたらすのに重要な鍵になると聞いており、今後の研究に協力する者として連れてこられるという話があったという。
そのため、名無しが現在一人でいることを疑問視したそうなので、名無しは事の詳細を話すことにした。
「あの、私どうやってエレンピオスに戻ってきたのかすらわかってなくて…アルクノアとは向こうで決別してるので」
「んー、となるとどうやってかここにきたって事になるわけなんだねぇ、なんのことであれ俺達研究員としては非常に助かる話なんだけど」
「それなんですけど…、お役にたつ前に私リーゼ・マクシアに戻らないと」
「どうしてだい?ジルニトラ客船の乗員はエレンピオスへ救助要請を出していたと思ったんだけど」
「私、死んだと思ったんです…、けどそれがどうしてかここにいて、守りたい人がいて、生きてるなら、すぐに戻りたいんです」
「そうはいうけどなぁ…戻るって言ったってそう簡単に戻れるわけじゃないし」
「やっぱり、難しいんですね、向こうに行くのは」
「そうだね、それだけの協力な黒匣を用意するにも時間が必要だし、名無しさんには申し訳ないけどその願いを叶えるのは難しいかな」
バランにはっきりと言われ名無しは肩を落とした。
エレンピオスに帰ることは望んでいることの一つではあった。
しかし、こういった状況で帰ってきてもリーゼ・マクシアに残している想いがあまりのも多すぎた。
ミラが亡くなって皆はどうしているだろうか、ジュードがアルヴィンと戦ったという話も気になる。
残ったエレンピオス兵たちは何をしているのか、様々な不安が名無しの中にあってもそれを解決する手段がないということがとにかく苦痛だった。
悔しくて名無しが強く手を握っていると、それを見ていたバランが横から軽い調子で励ましてきた。
「そうだなぁ…、気休めにしかならいけど、お茶かコーヒーどっちか飲むかい?」
「え、あ、ありがとうございます、それじゃあコーヒーを」
「了解、お嬢さん」
どこか愛しい人と似た雰囲気を纏った調子でバランは部屋の隅にあるコーヒーメーカーを楽しげにいじりだした。
何かコーヒー豆とは違うものを入れたように一瞬見えたが、気のせいだと思うことにした。
ふんわりと慣れ親しんだ香りが名無しの鼻に届き、心を落ち着かせた。
しばらくして、バランが淹れたばかりのコーヒーを名無しに差出し、ミルクと砂糖はどうかと聞いてきた。
「いえ、このままで」
「それじゃあどうぞ、猫舌じゃなければ温かいうちに」
「ふふ、ありがとうございます」
名無しがコーヒーを飲みながらバランの弾丸トークに付き合っていると、ある研究員がバランを訪ねてきた。
精霊の化石の発掘作業の途中、ルサル街道の奥に得体の知れないマナの反応が見れたため連絡に来たという。
マナの滞留が見られるため、視察に行かないかと話になったため、バランが名無しに基地に残るよう言う。
「ちょっとでないといけないから、ここにいてもらっていいかな?ジルニトラの乗客だったならこっちに家なんかないだろうし、行くところないでしょ?」
「それじゃあ、あの、ここにいても落ちつかないので…邪魔じゃなければ一緒に行ってもいいですか?」
「んー、問題はたぶんないと思うけど、お嬢さん戦闘の経験は?」
「多少なら、大丈夫です、絶対にお仕事の邪魔はしませんから」
「そうだなぁ、女性にそこまで言われたら断るわけにもいかないけど、言ったからには自分の身は守る、いいね?」
「はいっ」
バランに許可を得て、エレンピオス兵と一緒に名無しはルサル街道の奥へと進んだ。
ルサル街道の奥に行くと、そこには絶壁の崖があった。
何もない荒野が真下に広がるだけの景色の中に、不自然なマナの塊がそこに存在していた。
まるでマナの中に空間があるようにそれは歪んでおり手を伸ばせば中に入れそうな気さえした。
この亀裂のようなものが、マナの滞留を示したもののようで兵士達とバランを含む研究員は辺りに異変がないかどうか探索を始めた。
名無しも同じく探索をはじめ辺りを見渡す。
ルサル街道に幼いころ足を踏み入れたことはなかったが、やはり昔に比べてここもだいぶ衰退しているのだろう。
トルバラン街道と全く違いを見せない土色の景色を歩いていると、研究員の一人が何かを発見したらしく声を上げた。
名無しも声がした方に走ると、そこには見慣れた人物達が倒れていた。
「うそ…っ」
「おや、名無しさん知り合いかい…?」
そこにはリーゼ・マクシアにいた仲間たちが倒れていた。
よく見なくても、傷だらけで何かと戦った後だというのがはっきりとわかる。
そして、その面子の中に亡くなったはずのミラの姿があることが何よりも信じられなかった。
恐る恐る近づいて、しゃがみ込んでミラの顔を撫でると間違いなく生きている人だということがわかる温もりが指に伝わった。
すると、横にいたバランが突如驚いた声を上げたため、名無しが反応をする。
「これはっ」
「バランさん?」
「この銃…まさか、アルフレドなのか?」
「え、知り合い、ですか?」
「名無しさん、アルフレドを知ってるのかい?」
「えぇ、ジルニトラで一緒にいたことが、あと一緒に旅も」
「ってことは、間違いないのか…、っと話はあとだ。そうだな、とりあえず俺の家に運ぼう、すまないけど頼めるかい?」
「了解しました」
バランが兵士に指示を出すと、皆をバランの自宅に運ぶことになった。
名無しもバランの家に一緒に行き、皆の様子を見ることにした。
***
バランの家につくと、室内の人を寝かせられるであろうすべての場所を使い、皆の応急処置にあたった。
奥にある風呂場にタオルがあるのを教えてもらい、何枚かは濡らして皆のところに持っていく。
怪我をしているところと、汚れてしまっているところをふき取り手持ちの治療用具 を使い応急処置を施していると、初めにローエンが目を覚ました。
「ローエンさんっ!」
「名無しさん、いったいここは…」
「バランさんの家です、良かった目が覚めて」
「バランさん、と言いますと?」
「あぁ、気が付いたんだ。どーも、俺がそうだよ」
「おや、貴方様が、ローエンと申します、お世話になりましたようで」
丁寧に挨拶をすますと、バランがこれまでの経緯についてローエンに説明した。
説明の途中、レイアやアルヴィン、エリーゼも目を覚まし、バランの説明を聞き現在の状況を理解していく。
名無しもリーゼ・マクシアにいない間、何があったのかと皆から説明を受け、ミラではない本物のマクスウェルと戦ったと聞き驚いた。
だが、疑問の一つであったマクスウェルの存在を確かめることができ、僅かでももやもやした気持ちが晴れたような気がした。
そして何故ここにやってきたのかを確認すると、ガイアスとミュゼと対峙する事となり、危険であったところを本物のマクスウェルに助けられたということだった。
「更に大事になったってことかぁ…。それでそんな怪我を……、大丈夫?」
「大丈夫です、あの、名無し、死んじゃったってきいてたから…びっくりです…」
「本当だよ、なんだーよかった名無し生きてるじゃんっしかも先にエレンピオスにいるしっ」
「自分でも驚いてるくらいよ。まさかこっちに追い出されるだけなんて、ミュゼの力って重力じゃなくて時空間操作だったのかしら」
「あの、名無し…ぎゅってしもていいですか?」
「ん?喜んで。むしろ私からもお願いしたいくらいよ。……本当、私生きてるのね…」
「あ!私も私も!!」
レイアとエリーゼを抱きしめる腕に思わず力が入る。
バランと話をした時に既に現実である実感は得ていたが、こうして仲間に再び会えると本当に生きているのだという実感が湧いてきて名無しは嬉しかった。
「ふあぁー…本物のエリーゼとレイアちゃんだぁ…」
「僕だってホンモノだぞぉ!」
「うん、うんっ本物のティポは気持ちいいわぁ」
「名無しさん、本物の爺の髭もいかがですか?」
「あ、髭だけじゃなくて、その…ぎゅってしても、いいですか?」
「おやっ私は大歓迎ですよ、ほほほ」
「それでは遠慮なく…っはぁ~みんな本物だぁーっ」
名無しが思う存分仲間に抱き着いていると、バランと話し込んでいたアルヴィンと目が合った。名無しが反射的に彼をみて無意識に微笑むと、それに気がついたアルヴィンが名無しから目線を逸らした。
逸らされた視線にあわせ辺りを見ると、なんとなくアルヴィンとレイア達との間に、よそよそしい雰囲気があるのを感じた。
そういえばここに来る直前。アルヴィンはジュードと戦った話を思い出し、名無しはその件について躊躇無くレイアに訊ねた。
「ねぇ、レイアちゃん、アルとジュード君の事なんだけど…」
「あ…うん…えっと…」
「アルヴィン君ひどいんだぞ!レイアのこと撃ったんだ!」
「え?ちょっとそれって、レイアちゃん大丈夫?」
「う、うん、ジュードが治療してくれたから」
「そっか、それならよかった。…うん。アルフレドさん、話がありますのでこちらに来てください」
名無しはアルヴィンが反応を見せる前にすぐに彼の腕を掴み、部屋の外へと連れ出した。
大人しく名無しに連れだされたアルヴィンが、名無しが何を言いたいのか理解したようで、視線を床に向けたままゆっくりと事情を話した。
レイアを撃ったことは事実であり、ミュゼと取引をしたこともすんなりと認め名無しに謝罪をした。
「悪かった、…バカなことしたってわかってる」
「なんで私に謝るのよ、謝る相手間違ってるわよ?」
「…お前のこと巻き込んだからな」
「私自身が好き好んで巻き込まれてるのだけれど」
「そうじゃない」
「……そうだね。今はそんな話より…。それでも、皆と一緒にここに来たんだね。アル」
「ああ、自分で居たいと思える場所にしがみつくって決めたからな」
「そっか。それなら安心したわ」
以前と比べしっかりと前を見ている目をしたアルヴィンをみて、名無しは安心をした。
そして、しっかりと自分の居場所はここだと言いジュード達に向き合おうと、成長をした彼をみて名無しの中にずっと重く残っていた不安がすっと軽くなるのを名無しは感じた。
同時に、この旅のきっかけとなった『やりたいこと』が今ここで消えてしまった。
「あのさ、私がやりたいって言ってたこと、覚えてる?」
「ああ」
「それね。ちゃんと目的、果たせたかも」
「……まだはたしてない。」
「え?」
「まだ守るって約束がある、…無効にした覚えはない」
「アル…」
「…死んだと思った」
「うん、一時的とはいえ、体半分なくなったりしたもんね、私」
「名無し…」
「アル、ちょっと痛い…っ」
名無しを抱き締めるアルヴィンの腕に力がはいった。
名無しが痛みを訴えても、その力が緩むことはなく逆に強さを増した。
言うだけ無駄だと悟るよりも早く、名無しはその感覚の中にいようと思いアルヴィンの背中に自分の腕を回し、同様に腕に力を込めた。
昔言われたことがある、守るのは男の役目だと。
こうして、腕の中にいることにこんなにも安心感を抱くと言うことは、なんだかんだで自分は彼にしっかりと守られているのだろう。
この中にいるだけで、心が軽くなる、不安が溶けていく気がする。
ただ無言で互いの存在を確かめていると、横からバランに声をかけられたため名無しが慌ててアルヴィンを突き放した。
「邪魔しちゃ悪いんだけど、最後のお仲間が起きたみたいだよ」
「あ、ありがとう、ございます」
「お前狙ってただろ…」
「さあ、なんのことか、なあ名無しさん、 こいつの彼女だと大変だろー?こいつなんかあると直ぐに…」
「おいまてバラン、なに言うつもりだ」
「なに、ただアルフレドがピーチパイを」
「まてっ!!」
アルヴィンがバランを止めている姿を見ながら名無しは笑った。
皆を寝かせたあとに聞いた話だったのだが、バランはアルヴィンの従兄弟らしく昔馴染みの仲だそうだ。
昔馴染みといっても、20年も顔を会わせていなかったのだから互いの認識など直ぐにできるはずもないのだが、アルヴィン曰くバランの性格は昔のままだと言うことで本人に間違いないそうだ。
一方、なぜバランがアルヴィンをアルフレドと認識したのかというのは、アルヴィンがジランドから押収した武器が代々スヴェント家の証しにあたるらしく、それを所持してたためだという。
バランに絡まれたのを突っぱねたアルヴィンが足早に部屋に戻っていった。
名無しも二人がじゃれたのを見終えると部屋へと戻った、するとふよふよとティポが近づいてきたため名無しが抱き締めた。
「名無しー、アルヴィン君となに、してたのー?」
「ん?お説教」
「ホントに?」
「じゃあ何してたと思う?エリーゼ」
「え…っ私、ですか?」
「ティポが聞くってことはエリーゼが聞いてるんでしょ?ふふ、当たったら教えてあげる」
「えと、えと…っ」
「そんなこと言ったらお嫁にいけなくなっちゃうー!」
「エリーゼ…ほんとになに考えてるの…」
いまいち引っかかる会話をティポ達と終えると名無しは目を覚ましたミラとジュードのもとに向かった。
レイアとローエンが既に現状を説明したようで、ここがエレンピオスだという事に驚いている様子だった。
ふと、ジュードと目が合うとジュードが名無しが無事なのを確認した。
「名無し無事だったんだね、ミュゼに強襲されたってきいてたから」
「ん、なんでか無事、そっちの話しはだいたいローエンさんから聞いたから把握してる、皆も無事で何よりねっ…それより、ミラちゃんと生きてるのね…」
「ん?私か?ああ、この通りだっ」
名無しとは違い、間違いなくミラは一度死んでいるはずなのにまるで遠出をしていたようなのりで言われ名無しは拍子抜けをした。
それが逆にミラらしいといえばそうであり、妙に感動的にされてもそれはそれで違和感だっただろう。
ミラがバランの姿を確認するとジュードが事情説をきき、バランがアルヴィンの従兄弟だと言うことも聞く。
そしてアルヴィンがよく自分だとわかったな、とバランに確認をすると名無しに説明した通りの事を再びアルヴィンにバランは説明した。
話をしながらバランがなにかを弄っていたが、何かを探しに立ち上がると彼が足を引きずっていることにジュードが気がついた。
ジュードの視線に気がついたバランがなんとも軽い口調で子供のころにじこだと言う。
バランが足をあげると彼の足に黒匣がついているのがみえたため、直ぐにミラが構えようとしたがアルヴィンがそれをとめた。
これがなければ歩けないとバランが言いながら整備を済ますと満足そうに足踏みをした。
名無しにとってそれは当たり前なことだったのだが、今改めてその話を聞くと世の中は皮肉なものだと思わざるを得なかった。
そして、バランが皆に気を使い、食事の準備をしている間に町を見ることを進めてきた為、皆はその行為に甘えることにした。
9/9ページ