3章
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「なにしてんだよ、そんなとこで」
「わ、ざとではないんだけど、なんとなく気まずくて…」
「俺とあいつの関係は聞いた通りだよ」
「心配してたのね、ずっとプレザさんのこと」
「さぁな…、そのなんつーか」
「いいよ、無理になにか言わなくても今は、その、私のこと好きでいてくれるなら」
「…っ!くくく、本当お前にはかなわねぇな」
「なんで笑うのよ」
「いや、本当いい女になったと思ってな」
「ほめてもなにもしないわよ」
「これぐらいいいだろ?」
「あ、ちょっと…」
アルヴィンが名無しに近づいて顔に手を添え、その後の動作を目で訴えてきたが名無しはその視線を笑顔で拒んだ。
なんとなく誤魔化されたというか都合よく流されている感じがしたのもあったが、大事を目の前にして呆けているわけにはいかないと思ったからだった。
アルヴィンが不満そうな態度を取ったが、名無しが今はそういう時ではないというのをしっかりと伝えるとあまり納得はしていないようだったが、アルヴィンは大人しく引き下がった。
そして、出発の準備はどうなっているのか確認しようと謁見の間に向かおうとすると、入口のあたりにレイア達の姿を見たため状況を聞くと、そろそろ出発してもいい時間だということだった。
こちら側の準備はそれなりに整っているため、全員が集まるまで皆で適当に入口で話をすることにした。
しばらく話し込んでいると、外にいたらしいジュードが中に入ってきて皆と合流した。
「あれ?ジュード君ミラと一緒だったんじゃなかったんだ」
「うん、一緒だったんだけど、ミュゼと話があるみたいで二人にしてくれって」
「すまない、待たせたようだな」
「ミラ、もういいの?」
「ああ、準備ができたようだな、行くぞ」
ミラがミュゼと話を終え合流したので一同はガイアス達と合流し戦艦に乗り込んだ。
何気なしにイバルが乗り込んできたので、名無しはその存在に少し怪訝な顔をみせた。
名無しの表情の変化に気が付いたイバルが、名無しによってきてその態度を指摘する。
「おい、貴様、なんだその態度は」
「なにって言われても…私正直、あなたが乗ることが不安でしかないんだけど…」
「なにを!いいか、俺様は巫子だ、ミラ様をお守りするのは俺の役目だ!」
「それはわかったんだけれど、ファイザバード沼野のこと、私怒ってるんだけど…」
「!貴様、あのときいた敵の女か!なぜここにいる!今ここで力尽きるか!」
「残念だけど、その意見には反対するわ、ミラを守るんでしょ?私に構ってないでそばにいたほうがいいんじゃない?」
「何を、貴様に入れなくても…っ!」
そういうとイバルはミラのところに一目散に走っていき、名無しに構うのをやめた。
なんて単純な人なのだろと、名無しは呆れてため息をつく。
苦手なタイプというのは特になかったのだが、この旅に参加することによってそうでないということを学んだ。
どうも、話が通じないタイプとガイアスのように我が強すぎる人は苦手なようだった。
我が強いと言えばミラもそうなのだが、ガイアスの強さとミラの強さは名無しは違うものだと感じていた。
甲板に兵士を揃え士気を上げるガイアスの姿をみながら、名無しはその姿にさらに苦手意識を強めた。
「何顔しかめてんだよ」
「やっぱり、どうしてもガイアス王って苦手…、ジュード君はミラに似てるって言ってたけど、全然似てないと思うな」
「意外だな、名無しがああいうタイプ毛嫌いするのは」
「なんていうか、自分がやらなくちゃって決めつけてる感じがするな、ミラも言ってたけどガイアス王がいなくなったらどうなるんだろう」
「さあな、そこに気が付けない民を率いてるつもりはないんじゃねーの?、つーかお前も変わんないと思うけどな」
「どういう意味よ」
アルヴィンに同族と言われたことに、名無しが不機嫌になりアルヴィンに強めに言う。
やれやれと腕を広げたアクションをアルヴィンがとり、名無しの額を突く。
「初めん時、ジランド止めんのは自分だけっつってつっぱしってたろ」
「一緒かしら…?」
「同族嫌悪ってやつなんじゃねーの?」
「そうなのかなー…、でもたぶん、なんとなく理由はわかってるわ」
「へぇ?」
「あの人無愛想、そこがやっぱり苦手」
「単純だな」
兵士たちが声を上げているのを眺めながらアルヴィンを会話をしていると突如、ある兵士からリーゼ・マクシア全域に魔法陣が展開されたという伝令が届いた。
それと同時に、マナを吸い取られる感覚に襲われ全身の力が抜けていった。
このようなことができるのは、クルスニクの槍しかないのがわかっているため、ジランドが異界炉計画を実行に移してることがわかる。
それに負けぬよう空に上がると、マナの搾取から逃れることができた。
どうやら、空中にいけば槍の作用から逃れることができるらしい。
ジルニトラにつくまでの間、敵の攻撃を警戒しながら甲板で皆はその時が来るまでを待った。
名無しはこれから向かう先のことを考えていた。
家族と楽しい時間を過ごした最後の場所、そこに向かうことがまた来るとは思っていなかった。
思い出の場所を壊しに行くのかと思うと、胸が締め付けられるような気持になる。
少し風に当たろうと、名無しは甲板の端に向かうことにした。
「ジルニトラか…、いくら敵の本陣でも残ってるんだろうな…いろいろ…」
「お前は、ジルニトラの内部に詳しいようだな」
「…私ちゃんと名前あるんですけど…」
一人の時間を過ごしたく移動したというのに、後ろからガイアスに話しかけられ名無しが不機嫌になる。
「何か用ですか?船内のことなら多少なり確かに詳しいですけど…」
「お前が俺をどう思おうが関係ない、だがそれによって作戦に支障が出るということは許すわけにはいかない」
「その偉そうなしゃべり方、どうにかしてください、そしたら話します」
「ふ、口の減らない女だ、船内ということはジルニトラは船なのだな、中にはなにがある」
「その言い方止めたら教えますっていったと思うんですけど」
「お前が話す気がないのならばそれでも構わん、向こうにつき次第手段を打つまでだ」
「じゃあなんで聞きに来たんですか、…やっぱり私あなた苦手です」
「…ふ、好きにいうといい」
「なんなのよ、本当、でも足引っ張るわけにはいかないのは事実だし変な意地張るのはバカみたいなものね」
「どういう気の変化だ」
「人が話すっていってるんですから、聞いてもらってもいいと思うんだけれど」
「ならば、早く話せ」
「…むぅ…」
うまいこと遊ばれている感覚になり、名無しはなおさらガイアスへの苦手意識を強めた。
しかし、ガイアスの実力はたしかなものなので、20年前の記憶でよければと内部について説明をする。
名無しの話を聞きながら、ガイアスは頭のなかで作戦を立てているようで腕を組み静かにその話を聞いた。
今どのように手が加えられているのかはわからないため、今言ったことがすべてではなくあくまでベースにしか成り得ないことを名無しは念を押して伝えた。
ガイアスにはそれだけの情報でも十分だったらしく、名無しがこれで全部だと話きると、ガイアスがそうかと一言いってその場から去ろうとした。
「お礼ぐらい言われてもいいと思うんだけれど」
「まだそれが事実というわけでもあるまい、情報を持っている者だ、味方である保証もないだろう」
「性格悪いって言われませんか…」
「そのような声が上がったところで、俺にどう影響するわけでもない」
「むぅ…、ザイラの森で助けてくれたことには少し感謝してるんですから、あんまりそういう態度とらないでもらいたいんですけど…、あんまり私の中での評価下げたくないので」
名無しが少しにらむと、何を思っているのか読み取れない表情でガイアスが一度名無しを流し見て、その場を立ち去った。
本当に何がしたかったのだろうと、頭を抱えているとガイアスが消えた方向からアルヴィンがやってきてガイアスが去って行ったほうを見ながら名無しのところにやってきた。
「人のモノに手ぇだすとはいい度胸だな、あの王様」
「別に何もされてないけどね、はぁー…もう本当苦手…何考えてるのか全然わかんない…、居るだけで気疲れしちゃう…」
「癒しならここにいるけどどうする?」
「よく言うわね本当…、これから向かう場所が場所よ、アルもそこまで余裕ってわけじゃないでしょ」
「まぁ、な。あそこには本当、思い出が多すぎる」
「そうね…、そういえば船にいる時に会ったことはなかったのよね、私達」
「そういえばそうだな、同じ場所にいたのに不思議だな」
「船員、乗客合わせて1000人以上いたんだもの、会っていてもその場では覚えてなかったでしょうね」
「事故がなかったら出会ってなかった、か」
「ジュード君達にもね、生きていれば良い事あるってことかしら」
「嫌なことまみれだけどな、本当」
「それでも、私は今が在るから生きててよかったとは思うけど、…アルもいるし」
「…、さっきお預け食らったからそうとは思えないけどな」
「終わったらじゃダメ?」
「気合入れ」
「不安そうな顔しないでよ、断れなくなるでしょ」
悪い、とアルヴィンが小さく言って名無しに短くキスをした。
ジルニトラには、思い出が在りすぎる。
それは、名無しだけではなく、アルクノアである者達全員に共通することであってそこを最終地点として、ジランドが選んだことは大きな意味を持っていた。
もう、同じ夢を持っているわけではない。
道を違え、敵としてそれぞれの進むべき道を勝ち取るための戦いである。
想いにふけていると、アルヴィンが突然遠くを指し名無しに何かあると知らせた。
それを聞いて名無しがアルヴィンの指す場所を見ると、そこには敵の本陣ジルニトラが姿を現していた。
そしてその上に、たくさんの戦艦が止まっており、これからミラ達が襲撃してくるのに備えていた。
同じくジルニトラの上空に気が付いたローエンが偶然、名無したちのところにやってきてそれを見たかと聞いてきた。
「あの敵兵の数…、間違いなさそうですね」
「えぇ、あれがジルニトラ。アルクノアの始まり場所」
「随分な敵の数だな」
「皆さんに知らせなければっ」
三人は急いで甲板に向かい、見たことを皆に知らせた。
その瞬間、大きく船が揺れ遠くでマナの柱が上がっているんが目に見えた。
ジランドがエレンピオスへマナを送ったのだろう。
遠くをみていた、アグリアが突如高笑いをしたためその視線の先を見ると、遠くから戦艦が急接近しているのが見え、戦いが始まるのを知らせた。
***
遠くに見えた戦艦が近づいてきたと思うと、自分たちが乗っている戦艦におもいきりぶつかってきた。
そして、敵艦からエレンピオス兵が下りてきて船を襲撃してきたため、ガイアスが指揮をとり兵士とともに応戦した。
「ぞろぞろと随分な歓迎だことっ」
「そんだけ向こうも本気ってことだろ」
「理想は同じなのに手段が違うとこうまでとはね」
「きりがないよ、こいつら!」
「このままジルニトラへつっこませろ!」
きりがないと判断したガイアスが強行手段を取るべく、船の操作をしているイバルに指示をだした。
かなりの力技だが、その作戦に無茶なことはないだろう。
イバルが言われた通りに船をジルニトラに突っ込ませると、船が大きく揺れ甲板に海水が流れ込んできた。
ジルニトラの横に戦艦をつけた直後、ジュードが先頭をきってジルニトラの甲板に降りた。
ジュードが降りると同時に、甲板に待機していたエレンピオス兵が攻撃をしかけてきたが、うまい事その攻撃をよける。
ジュードに続いてミラが甲板におり、エレンピオス兵との戦闘を始めた。
同時に、空中からのエレンピオス兵の攻撃が始まった。
「もう…ごちゃごちゃとうるさい!」
突如ミュゼが機嫌を悪くし空に向かったと思うと、滞空していたエレンピオス兵団をいっきに沈め落とした。
なんの力なのかは把握できなかったが、マナの球体の中で戦艦は爆発を起こし、その大きな機体を複数に分断し海に沈んでいった。
上空が静かになったのを満足気にミュゼが皆のところに戻ってくると、それほどの力の持ち主だったのかとミラが驚きの色をみせる。
ミュゼがこの場に残り皆に力を貸すといったので、甲板はミュゼに任せることにして、ガイアス達とは別のルートで一行はジルニトラに潜入した。
去り際に、プレザがアルヴィンに死なないでくれと言い残したがアルヴィンはそれには答えなかった。
「何も言ってあげなくてよかったの?」
「何つっていいのかわかんねぇのよ、…色々あったからな」
「素直にありがとうでいいんじゃない?プレザさん、本当に心配してた様子だし」
「簡単に言うな、お前」
「簡単に言えるならもっと違う言い方してるわ」
「なんだよそれ」
「ほーら、そんなの事はいいから早く行こう、急がないと」
船内の構造は20年前とほとんど変わっておらず、中に潜入するのに道に迷う必要はなかった。
中で戦闘になった兵士から無線機を押収すると、そこからイバルが兵士につかまった声が聞こえ、彼は何のために来たのだろうとため息をついた。
中の作りを見て、驚いたレイア達にジルニトラはかつて豪華客船であったことをアルヴィンが話し出す。
客船の入り口となるエントランスに入り、制御室へ向かうための道を歩きながらあたりを見渡すと、見た目も昔とはなにも変わっていなかった。
20年前、どうやってこの船がリーゼ・マクシアに入ってきたのか、何故エレンピオスの人たちは黒匣を使うのかというのも、アルヴィンはみんなに話した。
エレンピオスの人間に霊力野がないことを聞くと、ミラはとても驚いた様子だった。
この世界を黒匣から守るために作り上げた本人なのだから、当然知っていると名無しは思っていたのだがミラのその反応をみて違和感を覚えた。
何故、2000年も人間を見守ってきているというのにその事を知らないのだろう。
それと同時に、もう一つ名無しの中に疑問が浮かび上がった。
それは、よく考えなくてもエレンピオス側の人間ならばすぐに気が付く疑問であったが、今はそのことを考えている場合ではないと名無しは考えを向こうに押しやった。
「それじゃあ、名無しの両親の実験はより強力な霊力野を手に入れるものじゃなくて、本当に霊力野を手に入れるための実験だったってこと?」
「ん、レイアちゃんの言う通り、私にも霊力野なんて全くなかったから、"コレ"の実験を受けたおかげでここに生き残れたようなものよ」
「でも、アルヴィンは?」
「エレンピオスじゃ精霊術を使えない代わりに黒匣以外にもまた別の技術が発達してんだ、こいつみたいにな」
「その武器…精霊術じゃなかったのか」
「マクスウェル様に黒匣なんかもって近づくわけにゃいかねぇからな」
「そ、アルの武器は火薬式よ、単純な元素の化学反応を利用したものだから精霊を殺すことのない技術の一つね」
「名無しも、持ってるん、ですか?」
「火薬式の物ってこと?武器は持ってないけど、ランプとか生活に必要なものなら持ってるわ、ボウガンの弾にもいくつか使っているし」
レッグポーチから火薬式の弾をいくつか取り出し、名無しはエリーゼに見せた。
ごそっと取り出されたものに、エリーゼは驚いたがこのままでは発火することはないと説明を受けると興味があるのかそれを手に持ちじっくり見る。
奥へと進み、ジランドがいるであろう場所へ続くドアの前には防御壁が張られれており進むことができないのがわかった。
手持ちの無線から、防御壁の制御装置の守備を固める話が聞こえてきた。
「つまりそれを壊せば問題なしってことね、ていうか昔のまんまなのね本当」
「そういうことらしいな」
「アルヴィン、名無し、案内してもらえるか」
「もちろんよ、えーっと制御は二つの装置で行っているんだけど、そうね、二手に分かれたほうが最速かしら?」
「構造が完全に変わっていないとは限らないからその判断は危険だと思うぜ?」
「昔の抜け道がそのままってわけじゃないのは当然、ってことね…」
「ぱっと見はそうでも、どこにどんな手が加えられているかわからねぇからな」
「あちこち目移りしてる場合じゃないわね…、気きしめていくわよ、アル」
「お前こそな、名無し」
記憶を頼りに、名無しとアルヴィンが先頭を切ってジルニトラの中を進でいった。
ところどころ、道が封鎖されており進みたいように進むことはできなかったが、内装の大枠は変化していないく機転を利かせれば進むことに難を要することはなかった。
これだけの規模の客船であるのだから、広さは当然あった。
奥のほうへ進み、デッキを移動するために端を渡ろうとしたが、そこはエレンピオス兵が封鎖しており狭いところに皆で突っ込むは得策ではないため一度引き換えすことにする。
名無しが、確か近くにかつて食堂であった場所があったといい、そこならば万が一敵に襲われても十分戦える広さがあると伝えると一端内部の状況を整理するためにそこに避難した。
食堂に避難し、室内に入ろうとするなり目の前に武器を突き出されたがその武器はエレンピオス兵の物ではなくラ・シュガル及びア・ジュールの物だというのが見てすぐにわかった。
向こうもこちらの様子見てジュードやミラであることを確認すると、すでにこの場はこちら側の軍勢がおさえた場所だといった。
兵士たちが足元にある魔法陣が反対側のデッキへ通行できるよう展開したものだと説明をしてくれた。
「ガイアス王の指示のおかげなのかしら…、事がうまく運んでるっていうのも少し調子狂うわね」
「この場はガイアスにも感謝せねばならぬということだな…」
「そんじゃ、その行為に感謝してとっとと行くか」
「えぇ、参りましょう」
展開された魔法陣を通して制御装置のあるところへと急いだ。
ミラ達が右のデッキに移ったという伝令を発してるのが無線機から聞こえたため、兵士が集中する前に現場へと急いだ。
制御装置のある部屋につくと、そこには大きな機材があり大きな動力で動いていた。
これを壊せばまずは一つ防御壁が解除できる。
直接的に触れる武器では危険なため、ミラが間接的な武器を持っているアルヴィンと名無しに破壊を頼み、二人は銃声を返事の代わりとした。
「一個ぶっこわしたぞー!次だ次ー!」
「兵士が集まる前に、次に動かないと、ミラ」
「あぁ、行くぞ、ジュード、皆」
エレンピオス兵を倒しながら反対側にある装置を破壊し、道が開いたのを確認すると急いでゲートを通るために元来た道を戻ることにする。
その際、名無しは決着をつける前に頭の中を整理したかった。
おそらく、決着をつける前にはっきりさせなければならないことの一つだからである。
ミラは、2000年以上ずっと世界を見守ってきた。
人類と精霊を滅びから守るために、リーゼ・マクシアを作り上げそしてエレンピオスという滅びを待つ世界を残した。
ミラは今、すべてを守ろうとしている。
それは今に始まったことではなく、本人が見守ってきたとはっきり公言していることから、2000年以上前からすべての命が尊いと思い、行動しているはずなのだ。
何故、人類と精霊を愛しているミラが外側の命の存在の在り方を把握していないのだろうか。
それはあまりにも、腑に落ちないことである。
そして、ミュゼの存在。
彼女は断界殻の破壊とともに現れたあの力を使った者で間違いないだろう。
ならば、外の世界を見ていたのはミュゼなのではないだろうか。
だとすれば、それを生み出したのは他ならないマクスウェル、ミラのはずなのだ。
知らないはずがない、知っていなければおかしいのだ。
同時に、ミラが知り得なかった事にどんどん近づいていっている。
名無しは嫌な予感がした。
そして、アルヴィンのいう嫌な予感だけは当たる、という言葉を思い出し悪寒を感じた。
もしかすると、そんな疑問が確信に近い形で名無しの脳裏に浮かんだ。