2章
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急いでエリーゼを追い、街の広場までいくとそこにはエリーゼと一緒にジャオが立っていた。
ジャオの存在に気がつき皆がかまえると、ジャオは偶然あっただけだといって少し後ろに下がった。
レイアが背中を向けたままのエリーゼにさっきは悪かったと気遣いながら謝る。
しかし、エリーゼは嫌だと答えたため、そんなこと言わないでとレイアが明るく振る舞うように努めた。
すると、エリーゼの機嫌がさらに悪くなりこちらを向いて怒鳴る。
「レイアもミラも、名無しも嫌い!友達だと思ってたのに!」
「エリーゼ、私はただあなたが心配で」
レイアの言葉を聞こうともしないでエリーゼは友達をやめるといいまた何処かへ行こうと走り出した。
ローエンが呼び止め、皆が心配していることを伝え、皆に傷つけられたといってもエリーゼも皆を傷つけているというのを言う。
エリーゼはその言葉をきくと、レイアに傷ついた事を確認した。
レイアは、できるだけエリーゼが傷つかない言葉を選びながら答え、名無しは、真実なのだから言われても仕方がないと答えた。
「けど、面と向かって言われるとダメージはあったかな、ごめんね、役たたずで…」
「私、二人を傷つけてるなんて思ってなかった…」
エリーゼが、自分の行動に気がつくとジュードが二人に謝ろうかと優しく声をかけた。
ひどいことをいったとエリーゼが物怖じしていると、ローエンが大丈夫だと励ます。
ゆっくりと二人の前にたちエリーゼは謝る。
許してもらえるか、と心配した口ぶりだったがそれをレイアは快く許した。
「3歳しか違わないのにえらそうだなー」
「だめ!ティポ、喋らないで!」
「エリーゼ、それでも私の方が歳上だからね」
ティポに言われてレイアが胸を張ると、エリーゼは縮こまり戸惑った。
そのやり取りを見ていたミラが笑うとジャオが友達を大切にしろといいその場から立ち去った。
エリーゼが名無しにも謝り、雰囲気は以前のようにほっこりとしたものになった。
ジュードがこれからどうするかと言うと、アルヴィンが直接王城に乗り込んでみないかと冗談めいていった。
ジュードが呆れると、ミラが駄目なのかとアルヴィンの意見にのる姿勢を見せた。
その言葉を聞き全員が思わず呆れた態度を表した。
しかし、様子を見に行くだけならば問題はないだろうと皆は城へと向かった。
城の前にいくと、そこにはたくさんの人が並んでおりユルゲンスがなかなか戻れない理由がすぐにわかった。
王の信頼性故だろうというはなしと、その影でエリーゼのような境遇を産んでいることを話すと、エリーゼを案ずる言葉を発したミラに、エリーゼが礼をいった。
その表情をみて、もう大丈夫だと名無しは安心した。
すると、ユルゲンスがやってくるのがみえジュードが一度詫びをいれる。
ユルゲンスはその言葉を聞くと、ちょうどよかったと言い出した。
ワイバーンの件をきくと問題がないということだったが、ミラの件について王に話したところミラの名を伝えたら王から皆に会いたいと言い出したということだった。
ユルゲンスが大会の結果が届いたからだろうかと上機嫌になり先にシャン・ドゥに戻ると言って去っていった。
「ふむ、思わぬ歓待だな」
「何かの罠だったりしないよね」
「あまり云い予感がしませんね」
都合のよすぎる話に、警戒をする。
アルヴィンが何かをしってそうな素振りを見せながら考え事をしていると、ミラが隠し事かと突っ込んだ。
アルヴィンはそれを否定せず、だから魅力的なのだとそれを利用して冗談を言うが、ミラにはその意味が通じず、説明を求められたジュードが説明しながら苦笑した。
そうこうしていると、アルヴィンが会いに行こうと先頭をきって歩きだし、ジュードがアルヴィンによびかける。
「アルヴィン、嘘は嫌だからね」
「お前たちが俺を信じてくれてるってのは知ってるよ」
それだけをいってアルヴィンはとっとと階段をあがった。
アルヴィンの言葉をきいて安心したのかジュードが笑顔になり皆は階段をのぼる。
しかし、名無しには逆にその言葉が引っ掛かってしまってしかたがなかった。
なぜあえて、そこまで説明して話したのだろうか。
信じてくれてるってのは知っている、その言葉回しも表面上こそ綺麗だが、知っているからではなんだと、腑に落ちないものがあり名無しが急いでアルヴィンに追い付き問い詰めた。
「アル、なにしようとしてるの?」
「なんもしねーよ」
「嘘、さっきの言い方おかしいもの」
「そうか?…まぁ、そうだな。何かはするかもな」
「…そう」
「なぁ、名無し。名無しは、俺の味方でいてくれるか?」
「貴方が私の味方ならもちろんそのつもり」
「当然、…しんじてくれよ、まじで」
「アル?」
未だ影のある言い方をするアルヴィンに疑問を持ちながらも城内を進むと謁見の間の目の前で止められた。
ジュードが王から来るよう言われたと伝えると、ミラかどうかを確認される。
ミラが自分がそうだとこたえると、兵士は皆を謁見の間へと行けるよう道を開けた。
ローエンとエリーゼがなにかしているのに気がつきレイアがどうにたのかときくと、王に会うのにティポはどうなのかと兵士に預かってもらいたいということだった。
兵士が快く受けいれ、ティポを預けると謁見の間に入った。
謁見の間には、ジャオの姿があった。
なぜいるのかと問うと、四象刃の一人だとジャオが名乗りだした。
四象刃とは王直属の戦士のことであり、ジャオがその一人だったという。
扉が開き、ア・ジュール王とその部下が姿を表した。
全身を黒で装った男がローエンにお会いできて光栄だとまず挨拶をすると、ローエンはその男をウィンガルと呼ぶ。
ミラがもう一人の男に王なのかと問うと、ア・ジュールは自身がガイアス王だと名乗り、ミラをマクスウェルと呼んだ。
ミラではなく、精霊として呼んだことに名無しは嫌な予感がした。
さっそく、謁見を申し出たことにかんして話を聞こうとウィンガルがいうと、ジュードが用件を伝えた。
レイアも、ジュードの言葉に続きラ・シュガルの兵器の破壊に関して協力してもらえないかと言う。
「用件はそれだけか?」
ウィンガルが問うと、ローエンが続けて増霊極の研究について話しミラもその件について話し出した。
しかし、ガイアスは精霊になんの関係があると答た。
間違いなく、ミラを精霊マクスウェルとして認識しているその言葉に名無しは不快感をおぼえた。
なぜ、知っているのだろう。
横にいるアルヴィンに一瞬目をやり、直ぐにガイアスに視線を戻す。
ミラは人間も精霊も守る義務があると力強く答えた。
ウィンガルが、実験の責任は自分に任されているといい実験において非道な行いはしていないと言うとミラがそれを信じろと、と強く言い返した。
エリーゼがハ・ミルの村に閉じ込められていたことをジュードがいうと、それが非道だというのか、とガイアスが一言いった。
ジュードは、ガイアスの言葉に物怖じしながらそうだという。
ガイアスはそのまま、人の幸せはなにかとジュードに聞いてきた。
答えられずにいると、ミラがはっきりと自分の考えを口にしたが、ガイアスがそれを自分は違うと言い出す。
民の幸せを導き出すこと、それが彼の幸せであり、導かれたものの幸せ、彼の国に脱落者は生まない。
それが王でありそれがガイアスの義務だと彼は迷わず言い、ここに皆を呼んだ理由を言い出した。
「マクスウェル、ラ・シュガルの研究所からカギ
を奪ったな?それをこちらにわたせ」
「なんでしってるの…」
「断る。あれは人間が扱いきれるものではない」
ミラが答えないとわかると、ウィンガルが不適に笑いながらその場にいる誰かをさしカギの在りかをきいた。
後ろでずっと黙っていたアルヴィンが、その直後に歩きだした。
その様子を見て、ジュードが戸惑いを隠せずにいた。
ジュードだけでなく、皆がまさかと言う反応を示しているのを、横目に仕事だといってアルヴィンはカギの在処をウィンガルに話してしまった。
「アル、なんで」
「それと、話していたラ・シュガルの実験体ってのがあいつだ」
「ラ・シュガル独自の増霊極の実験体といっていたやつか」
名無しを指さしアルヴィンが淡々とウィンガルに詳細を話し出す。
一体なんのことなのか理解できずにいると、後ろから兵士が近づいてきているのに気がつき、名無しは出来るだけミラに近づいた。
その直後、奥から露出の高い女性が走ってくるとアルヴィンの姿を見てなぜいるのかを聞いた。
知り合いなのか、アルヴィンがプレザと呼び気さくに挨拶をする。
何の用かとウィンガルがきくと、プレザが周りをきにして報告を一度躊躇した。
「構わん、報告しろ」
「ハ・ミルがラ・シュガル軍に侵攻されました」
プレザの報告に皆が動揺をする。
その場には大精霊の力の痕跡もあったということで、ミラが思考を巡らせ槍が使われたのではないかと声をあげすでに新たなカギを作ったのかと言い出すと、ガイアスが宣戦布告の準備だと言い去っていった。
ガイアスがさると、ウィンガルが冷ややかな目で皆を見下ろしマクスウェルをとらえようとしていた。
ア・ジュール兵に囲まれそうになったとき、ローエンがエリーゼになにか合図をした。
「ティポ!」
エリーゼがティポの名前を呼ぶと、兵士に抱えられていたティポが一人に頭突きをし一瞬の隙を作った。
今のうちだと皆は急いで出口に走りだしたが、名無しの腕をアルヴィンが掴み名無しだけその場に残りそうになる。
だが、ミラとローエンが強引にそれを引き剥がし名無しをつれて逃げさった。
その際振り向くと、笑顔で皆に手を降るアルヴィンの姿が視界の隅にちらついた。
「作戦大成功ー!」
ティポが嬉しそうに声をあげる。
どうやらローエンがなにか起こると察してティポを預けたということだった。
その読みはあたり、ティポの活躍によって皆は城の外まで逃げる隙を作ることができた。
外の階段を降りたところで、当然エリーゼが立ち止まった。
「やっぱり、アルヴィンは嘘つきです」
「事情があるのかと思いましたが、今回はさすがに…名無しさんまで売るとは」
「アルヴィンをダンザイにしろー!引きずりだせー!」
「何が僕たちが信じてるのを知ってるだ」
ジュードが珍しく、怒りを露にして声をあらげた。
ジュードは本当にアルヴィンのことを信用していて、それを目の前で裏切られたのが悔しくて、悲しくてどうしようもないのだろう。
かける言葉を探したが、名無しも今はジュードと同じ立場であるためその言葉はいくら探しても見つけることができない。
城から鐘がなり、城門があきア・ジュール兵の声が聞こえてきたため急いでその場から離れる。
昇降機に近づくと、昇降機は閉ざされておりその門は空かなかった。
ローエンが仕組みに気がつき、制御している石にほぼ同時にマナを注ぎ終われば大丈夫だと言う。
ガンダラ要塞と同じだとエリーゼがいうと、事情を知らないレイアが戸惑った。
「大丈夫です、精霊術をつかうのと要領は一緒ですよ」
「時間がない、チャンスは一度だけだな」
ミラの言葉を合図に皆が配置につきだす。
制御している石は全部で五つ、そして精霊術がまともに使えない名無しはそこにつくわけにはいかなかった。
配置につかない名無しに気がつきミラが声をあげた。
「なにをしている!早くお前も」
「私は、できないから、だから」
「大丈夫です!あのときお教えした感覚でやっていただければ」
「どっちにしろ、使ったら頭痛で逃げることなんかできないから…私はここで、食い止める。弱くっても、でしゃばりでも!一秒だけなら時間ぐらい作れる!」
「名無し…私のいったこと…」
「エリーゼは関係ないから、私がそうしたいの、話してる暇あるならはやく!」
名無しがさけぶと、皆が配置につきマナを注ぎ始める。
レイアが焦ってうまくいってないようだったが、その間に兵士が追い付いてしまいこちらにやってきた。
その様子を見てレイアがなぜできないのかと更に焦ってしまった。
「私だって!皆の仲間なんだから!!」
レイアの様子を見て、名無しがやってきた兵士にむけて武器を構えた。
ボウガンの弾に集中し、どうにかできないかと考えていると矢先にマナが集中した。
一瞬、頭痛がしたが今はきにしている場合ではなく、名無しが集中出来るだけのマナを弾にこめそれを石畳に放った。
何発か打ち込み、足もとの石畳を砕くと同じ要領で門の一つにも弾を打ち込み続けた。
門が崩れ落ち道を塞ぐことができたのを確認し、ジュード達のところに急いで戻ると、レイアがマナを注ぐのに成功したらしく、皆は急いで昇降機に乗り込んだ。
***
街の出口にさしかかると、プレザが待ち構えていた。
どうやらミラは一度あっているらしく、初めからア・ジュールに狙われていたということがわかった。
プレザは他にもアルヴィンがミラ達を売った話をすると、初めからアルヴィンはア・ジュール側の仲間だったのかとジュードが聞いた。
「やめて、あんな男…仲間でもなんでもないわ」
「…?」
「私たちの関係は想像にお任せするわ」
そして、アルヴィンに関しては信じた方が悪いと吐き捨てる。
影で待ち伏せていたウィンガルも話に加わり、ミラに槍の話を持ち出す。
ミラは断固として槍が人間のてに使われることを否定すると、ウィンガルが剣を構えた。
それに反応してミラが剣に手をかけると、ローエンがそれを止めウィンガルに剣をおさめないか話をする。
しかし、ウィンガルはその考えを否定し剣を向けた。
そして、力をこめるとウィンガルの姿が変わり、彼のもつマナが急激にあがったことをミラが感じ取った。
増霊極を使用しているのだとジュードがすぐに察し、エリーゼがなぜもっているのかと声をあげた。
ウィンガルはエリーゼの名を呼んだあと、聞き慣れない言葉で何かをしゃべった。
ロンダウ語ではないかとローエンがいったが、それをしっかりと聞き取る暇もなくプレザとウィンガルが襲い掛かってきた。
プレザは精霊術を得意とし、ウィンガルは剣術でたたかう戦闘スタイルだったため、前線をあつくとるかたちで皆は戦いに挑んだ。
マナが増大してためなのかウィンガルの動きは早く次に追い付くのがなかなか困難だった。
エリーゼの詠唱もプレザに阻まれてしまうためになかなか攻めいるタイミングをつかめずにいた。
「ミラ、ジュード君!私に考えがあるんだけど」
「なんだ名無し」
「二人に一対一でそれぞれについててもらいたいの出来れば好きがないぐらいに」
「それでどうするのつもりだ」
「私がプレザさんを狙う」
「そうか、あの本…うん、やってみようミラ!」
「ああ、では、まかせたぞ」
「うん!」
そして、ミラとジュードがそれぞれに張り付き基本的に身を守る形で攻撃を受ける。
名無しがタイミングを探して狙いを定め、一瞬の隙をみつけプレザの本を打ち落とした。
それをプレザが拾う瞬間を狙ってジュードが攻撃を叩き込み、ローエンも加勢する。
ウィンガルがプレザのサポートに入ろうとするのをミラが食い止め詠唱する時間ができたエリーゼが精霊術をウィンガルに当てた。
大きくダメージを与えるとウィンガルの髪がもとの黒に戻りプレザも呼吸を大きく乱した。
「やってくれたな…」
ミラがもう一度剣を構える。
「まだ、相手をしてくれるのかしら?」
「ミラ!」
「違うよ、あれ!」
「潮時というわけか」
ジュードに言われたところをみると、たくさんのア・ジュール兵がすでに追い付いてきていた。
この場は急いで退散するべきだと街の出口に逃げようとすると、ウィンガルがローエンにまた逃げるのかと叫んだ。
ローエンは一瞬立ち止まったが、皆に急ぐように言われなにも言わずに街の外に逃げた。
モン高原に逃げ、兵士が見えないとこまできたのを確認すると一同は一旦呼吸を整えることにした。
エリーゼはミラとハ・ミルが教われたことに関して話しており、名無しはローエンとアルヴィンについて話をしていた。
「アル…なんで…」
「名無しさん、先程も申しましたが今回ばかりは理由がどうであれ目に余るものがあります」
「わかってます、でも、でも私…っ」
「お気持ちはお察しします、ですが貴女も交渉材料として利用されるところだったのですよ」
「…かないと」
「名無しさん?」
「聞かないと、一人でバカみたいに抱え込んでたら、なんでなのか聞かないと!私戻らなきゃ!」
「バカをおっしゃらないでください!今戻れば身の危険は確実です!」
「でも、アルが!」
「聞き分けろ名無し!」
横で話を聞いていたミラが、名無しの頬を思いきり叩いた。
「なんのために逃げてきた、おまえのやるべきことはなんだ」
「私の…やるべきこと…」
「両親の為ではないのか、ならば」
「…それだけじゃない」
「なに?」
「私は!アルがあんなことするのいやなの!止めさせたいの!やめてほしいの…あんなことできる人じゃなかった…あんなことするのにも理由があった!平気でできる人じゃないの!信じてくれって…味方でいてくれって言われたのっ!だからっ!」
「ならば余計に私はお前をわざわざ危険な目にあわせるわけにはいかない、奴がそう言ったのならば、名無しのもとに戻ってくるだろう、それまで待て、いいな」
「…ミラ」
「わかったならば行くぞ」
ミラにいわれ、名無しはミラの言葉通りにアルヴィンが戻ってくると信じ、皆と一緒に街へと向かった。
街に戻ると、ユルゲンスが謁見はどうだったかと聞いてきたが急ぎたいためミラが直ぐ発てるかユルゲンスに確認した。
構わないとのことだったがユルゲンスがどうかしたのかと聞いてきたため、ティポが事情を話しそうになりジュードが急いでその口を塞ぐ。
「急ぐ必要は無くなったよ」
「アルヴィン!」
「…っ!アル!!」
先程裏切ったばかりのアルヴィンが、皆の前に姿を現した。
名無しが真っ直ぐにアルヴィンにかけより、アルヴィンにしがみついた。
泣きそうな顔をみて、アルヴィンが一瞬表情に影を見せたが名無しの頭を撫でるとすぐに、なんともない顔に戻った。
名無しを撫でながら、何事もなかったようにアルヴィンが、今ごろやつらは高原を走り回ってるだろうと言う。
ミラが手土産のつもりかときつくあたると、アルヴィンが仲間だからだとしれっという。
その言葉に、誰一人として反応するものはいなかった。
「なんだよ、信じてくれないのか?お前たちが信じてくれてるって知ってる、そう言っただろ」
その言葉が出た瞬間に、ミラが名無しを引き剥がした。
アルヴィンが肩をすくめたあとジュードに近づき、信じてくれるよな?と肩を組んでジュードに確認した。
ジュードの反応は当然はっきりとしていなかったが、その答えにアルヴィンは明るく感謝をした。
アルヴィンが皆を見渡しすと、エリーゼが心底嫌そうに棒読みで挨拶をしたのをアルヴィンは笑って受け答えた。
「とにかく、しばらく時間が稼げそうですね」
「事情はきかないほうがよさそうだな」
ミラたちといると飽きないと笑いユルゲンスがワイバーンのところにいるから必要になったらいつでも来てくれといって別れた。
いよいよか、とミラが呟くと準備をしようとジュードが言い、疲れたから宿にいこうとアルヴィンが話に乗っかると空気が一段と悪くなった。
「く…っ」
「どうしたの?ミラ、足が痛むの?」
「いや、どうといことは」
「…いたた、持病のしゃくが」
「!私も持病のしゃっくり病が!」
「これは、休まないとなぁー」
「…わかった、イル・ファンについてからではどうしようもないからな、出発は明日に遅らせよう」
「それじゃあ、僕、ユルゲンスさんに伝えてくるね」
ジュードがそういって、ユルゲンスに事情を話にいった。
先に皆で宿をとることにし、ジュードが戻ってくるのを待った。
ジュードがもどってくるとミラの様子を確認し、ハートハーブというのがあればどうにかなるかもしれないといいだす。
だがそれは、絶滅危惧種のひとつであり入手が困難なものだとアルヴィンが答えた。
名無しが、ハートハーブに聞き覚えがあり鞄をあさりだす。
「もしかして、これのこと?」
「なんでもってるの!!」
「モン高原歩いてたときに、めずらしいなーってちょっとだけ…」
「名無し、それもらってもいい?」
「ん、いいよ」
ハーブをジュードにわたすと、急いでミラにそれを処方した。
具合はどうかときくとミラはしゃっくりが止まらなくなった。
どうやら精霊にはアレルギーのようで、それがおかしくミラは笑いだけでも気が紛れ痛みを忘れることができたと礼を言う。
そして、ジュードが言いづらそうにアルヴィンに事情をききだした。
納得いってないのも当然かとアルヴィンが思ったよりも簡単にウィンガルと密約を組んでいたことをあっさりと話す。
「いざとなればミラさんを引き渡すとでも!」
「アルヴィン君ひどい!最初から裏切ってたんだ!」
「まてよ。あの時は色々考えてたけど、今はそれが利用できるとおもったんだ、ワイバーンの許可だって事前に話を通したからなんだぜ」
「え、じゃあガイアスの前で裏切ったのは…」
「そう、あの場でああしないとワイバーンも使えなかった、だからわざわざシャン・ドゥと真逆に逃げたって情報流したんだ」
アルヴィンの説明に、ジュードはまだ戸惑っていた。
だが、プレザとの関係も不鮮明でありまだ信じろと言うにはひっかかるものがあるといった。
この件に関しては、皆とはちがう理由で名無しもきになっていた。
頭をかきアルヴィンが言いづらそうにしたが、直ぐに何を聞きたいのかと体勢を作った。
ジュードが単刀直入に同意関係なのか間髪いれずに聞く。
アルヴィンが普段のジュードとは違う反応に戸惑うと、ジュードが答えを急かした。
「アルヴィン!」
「なんだよお前、泣いて…」
「泣いてなんかない、ただ僕は…」
ジュードが俯くと、アルヴィンはプレザとの関係を話し出した。
昔、仕事の関係で偶然イル・ファンで出会ったというとジュードがそれからどうなのだと話を掘り下げだした。
ジュードが食いつくのが意外なのか、アルヴィンは驚きながらもそれから個人的に色々あったとだけいいそこはきかないでくれといって話を終わらせた。
話を聞き終わり、納得はしたが信用しきったわけじゃないとジュードがいうと、アルヴィンが適当に茶化しだしたため、ジュードが怒った。
そして、ミラが最後にひとつだけいいかとアルヴィンに質問する。
アルヴィンはなんなりと、と言いほんとになんでも話す雰囲気だった。
ミラはなぜ自分達に肩入れするのかをアルヴィンにきいた。
「そのようなことをしてお前になんのメリットがある」
「今さら聞く?優等生やみんなが大好きだからに決まってるでしょーよ!」
「ウソつきやがってー!」
「なんだそれ、ちょっとひでーじゃねぇか!」
アルヴィンの答えに真剣になっているのが馬鹿らしくなり皆の肩の力が抜けた。
それが本当か嘘なのか、皆は追求しなかったのがおそらく皆の答えだろうと名無しは思った。
そして、ローエンがなぜ名無しを売ろうとしたのかをアルヴィンに尋ねた。
「なぜ、あのようなことを」
「演出のひとつだよ、向こうにこっちを裏切ったって見せるための駒は多くなきゃな」
「アルヴィンさん、名無しさんは一人で貴方のところに戻ろうとさえしていました、下手をすれば兵士に何をされていたのか」
「そこは、言っただろ。大好きなみんなが名無しを守ってくれるって信じてたんだぜ?」
「ほんとに、それだけ?」
「名無し…」
「他にあるんじゃないの?一回、私のこと引き止めたよね?」
「あー…、ラ・シュガルには、結局名無しを実験体にしたがってるやつがいるだろ、そこにぶん投げるなら身の安全を約束してくれるとこに置くのも考えたんだよ、向こうとしちゃデータもはいる、新しい技術の技師もてにはいる。戦争前の条件としちゃ美味しい話だ」
「しかし、それでは名無しさんの考えをまるで無視した形に」
「だから、そこでジュードやミラがどうにかすんだろってなるわけ、もういいだろ」
「ふむ…、といってますが名無しさん、よろしいですか?」
「え、あ、はい…大丈夫です、私はそんなに気にしてないので…」
「そんじゃあ休もうぜ?俺もうヘトヘトだわ」
「誰のせいだたおもってるんだー!」
ティポがアルヴィンの態度にたいして文句を言うとアルヴィンは適当に流して部屋を出ていった。
実際疲れているのは他のみんなも同じだっため、皆も用意された自分達の部屋に向かった。
ジャオの存在に気がつき皆がかまえると、ジャオは偶然あっただけだといって少し後ろに下がった。
レイアが背中を向けたままのエリーゼにさっきは悪かったと気遣いながら謝る。
しかし、エリーゼは嫌だと答えたため、そんなこと言わないでとレイアが明るく振る舞うように努めた。
すると、エリーゼの機嫌がさらに悪くなりこちらを向いて怒鳴る。
「レイアもミラも、名無しも嫌い!友達だと思ってたのに!」
「エリーゼ、私はただあなたが心配で」
レイアの言葉を聞こうともしないでエリーゼは友達をやめるといいまた何処かへ行こうと走り出した。
ローエンが呼び止め、皆が心配していることを伝え、皆に傷つけられたといってもエリーゼも皆を傷つけているというのを言う。
エリーゼはその言葉をきくと、レイアに傷ついた事を確認した。
レイアは、できるだけエリーゼが傷つかない言葉を選びながら答え、名無しは、真実なのだから言われても仕方がないと答えた。
「けど、面と向かって言われるとダメージはあったかな、ごめんね、役たたずで…」
「私、二人を傷つけてるなんて思ってなかった…」
エリーゼが、自分の行動に気がつくとジュードが二人に謝ろうかと優しく声をかけた。
ひどいことをいったとエリーゼが物怖じしていると、ローエンが大丈夫だと励ます。
ゆっくりと二人の前にたちエリーゼは謝る。
許してもらえるか、と心配した口ぶりだったがそれをレイアは快く許した。
「3歳しか違わないのにえらそうだなー」
「だめ!ティポ、喋らないで!」
「エリーゼ、それでも私の方が歳上だからね」
ティポに言われてレイアが胸を張ると、エリーゼは縮こまり戸惑った。
そのやり取りを見ていたミラが笑うとジャオが友達を大切にしろといいその場から立ち去った。
エリーゼが名無しにも謝り、雰囲気は以前のようにほっこりとしたものになった。
ジュードがこれからどうするかと言うと、アルヴィンが直接王城に乗り込んでみないかと冗談めいていった。
ジュードが呆れると、ミラが駄目なのかとアルヴィンの意見にのる姿勢を見せた。
その言葉を聞き全員が思わず呆れた態度を表した。
しかし、様子を見に行くだけならば問題はないだろうと皆は城へと向かった。
城の前にいくと、そこにはたくさんの人が並んでおりユルゲンスがなかなか戻れない理由がすぐにわかった。
王の信頼性故だろうというはなしと、その影でエリーゼのような境遇を産んでいることを話すと、エリーゼを案ずる言葉を発したミラに、エリーゼが礼をいった。
その表情をみて、もう大丈夫だと名無しは安心した。
すると、ユルゲンスがやってくるのがみえジュードが一度詫びをいれる。
ユルゲンスはその言葉を聞くと、ちょうどよかったと言い出した。
ワイバーンの件をきくと問題がないということだったが、ミラの件について王に話したところミラの名を伝えたら王から皆に会いたいと言い出したということだった。
ユルゲンスが大会の結果が届いたからだろうかと上機嫌になり先にシャン・ドゥに戻ると言って去っていった。
「ふむ、思わぬ歓待だな」
「何かの罠だったりしないよね」
「あまり云い予感がしませんね」
都合のよすぎる話に、警戒をする。
アルヴィンが何かをしってそうな素振りを見せながら考え事をしていると、ミラが隠し事かと突っ込んだ。
アルヴィンはそれを否定せず、だから魅力的なのだとそれを利用して冗談を言うが、ミラにはその意味が通じず、説明を求められたジュードが説明しながら苦笑した。
そうこうしていると、アルヴィンが会いに行こうと先頭をきって歩きだし、ジュードがアルヴィンによびかける。
「アルヴィン、嘘は嫌だからね」
「お前たちが俺を信じてくれてるってのは知ってるよ」
それだけをいってアルヴィンはとっとと階段をあがった。
アルヴィンの言葉をきいて安心したのかジュードが笑顔になり皆は階段をのぼる。
しかし、名無しには逆にその言葉が引っ掛かってしまってしかたがなかった。
なぜあえて、そこまで説明して話したのだろうか。
信じてくれてるってのは知っている、その言葉回しも表面上こそ綺麗だが、知っているからではなんだと、腑に落ちないものがあり名無しが急いでアルヴィンに追い付き問い詰めた。
「アル、なにしようとしてるの?」
「なんもしねーよ」
「嘘、さっきの言い方おかしいもの」
「そうか?…まぁ、そうだな。何かはするかもな」
「…そう」
「なぁ、名無し。名無しは、俺の味方でいてくれるか?」
「貴方が私の味方ならもちろんそのつもり」
「当然、…しんじてくれよ、まじで」
「アル?」
未だ影のある言い方をするアルヴィンに疑問を持ちながらも城内を進むと謁見の間の目の前で止められた。
ジュードが王から来るよう言われたと伝えると、ミラかどうかを確認される。
ミラが自分がそうだとこたえると、兵士は皆を謁見の間へと行けるよう道を開けた。
ローエンとエリーゼがなにかしているのに気がつきレイアがどうにたのかときくと、王に会うのにティポはどうなのかと兵士に預かってもらいたいということだった。
兵士が快く受けいれ、ティポを預けると謁見の間に入った。
謁見の間には、ジャオの姿があった。
なぜいるのかと問うと、四象刃の一人だとジャオが名乗りだした。
四象刃とは王直属の戦士のことであり、ジャオがその一人だったという。
扉が開き、ア・ジュール王とその部下が姿を表した。
全身を黒で装った男がローエンにお会いできて光栄だとまず挨拶をすると、ローエンはその男をウィンガルと呼ぶ。
ミラがもう一人の男に王なのかと問うと、ア・ジュールは自身がガイアス王だと名乗り、ミラをマクスウェルと呼んだ。
ミラではなく、精霊として呼んだことに名無しは嫌な予感がした。
さっそく、謁見を申し出たことにかんして話を聞こうとウィンガルがいうと、ジュードが用件を伝えた。
レイアも、ジュードの言葉に続きラ・シュガルの兵器の破壊に関して協力してもらえないかと言う。
「用件はそれだけか?」
ウィンガルが問うと、ローエンが続けて増霊極の研究について話しミラもその件について話し出した。
しかし、ガイアスは精霊になんの関係があると答た。
間違いなく、ミラを精霊マクスウェルとして認識しているその言葉に名無しは不快感をおぼえた。
なぜ、知っているのだろう。
横にいるアルヴィンに一瞬目をやり、直ぐにガイアスに視線を戻す。
ミラは人間も精霊も守る義務があると力強く答えた。
ウィンガルが、実験の責任は自分に任されているといい実験において非道な行いはしていないと言うとミラがそれを信じろと、と強く言い返した。
エリーゼがハ・ミルの村に閉じ込められていたことをジュードがいうと、それが非道だというのか、とガイアスが一言いった。
ジュードは、ガイアスの言葉に物怖じしながらそうだという。
ガイアスはそのまま、人の幸せはなにかとジュードに聞いてきた。
答えられずにいると、ミラがはっきりと自分の考えを口にしたが、ガイアスがそれを自分は違うと言い出す。
民の幸せを導き出すこと、それが彼の幸せであり、導かれたものの幸せ、彼の国に脱落者は生まない。
それが王でありそれがガイアスの義務だと彼は迷わず言い、ここに皆を呼んだ理由を言い出した。
「マクスウェル、ラ・シュガルの研究所からカギ
を奪ったな?それをこちらにわたせ」
「なんでしってるの…」
「断る。あれは人間が扱いきれるものではない」
ミラが答えないとわかると、ウィンガルが不適に笑いながらその場にいる誰かをさしカギの在りかをきいた。
後ろでずっと黙っていたアルヴィンが、その直後に歩きだした。
その様子を見て、ジュードが戸惑いを隠せずにいた。
ジュードだけでなく、皆がまさかと言う反応を示しているのを、横目に仕事だといってアルヴィンはカギの在処をウィンガルに話してしまった。
「アル、なんで」
「それと、話していたラ・シュガルの実験体ってのがあいつだ」
「ラ・シュガル独自の増霊極の実験体といっていたやつか」
名無しを指さしアルヴィンが淡々とウィンガルに詳細を話し出す。
一体なんのことなのか理解できずにいると、後ろから兵士が近づいてきているのに気がつき、名無しは出来るだけミラに近づいた。
その直後、奥から露出の高い女性が走ってくるとアルヴィンの姿を見てなぜいるのかを聞いた。
知り合いなのか、アルヴィンがプレザと呼び気さくに挨拶をする。
何の用かとウィンガルがきくと、プレザが周りをきにして報告を一度躊躇した。
「構わん、報告しろ」
「ハ・ミルがラ・シュガル軍に侵攻されました」
プレザの報告に皆が動揺をする。
その場には大精霊の力の痕跡もあったということで、ミラが思考を巡らせ槍が使われたのではないかと声をあげすでに新たなカギを作ったのかと言い出すと、ガイアスが宣戦布告の準備だと言い去っていった。
ガイアスがさると、ウィンガルが冷ややかな目で皆を見下ろしマクスウェルをとらえようとしていた。
ア・ジュール兵に囲まれそうになったとき、ローエンがエリーゼになにか合図をした。
「ティポ!」
エリーゼがティポの名前を呼ぶと、兵士に抱えられていたティポが一人に頭突きをし一瞬の隙を作った。
今のうちだと皆は急いで出口に走りだしたが、名無しの腕をアルヴィンが掴み名無しだけその場に残りそうになる。
だが、ミラとローエンが強引にそれを引き剥がし名無しをつれて逃げさった。
その際振り向くと、笑顔で皆に手を降るアルヴィンの姿が視界の隅にちらついた。
「作戦大成功ー!」
ティポが嬉しそうに声をあげる。
どうやらローエンがなにか起こると察してティポを預けたということだった。
その読みはあたり、ティポの活躍によって皆は城の外まで逃げる隙を作ることができた。
外の階段を降りたところで、当然エリーゼが立ち止まった。
「やっぱり、アルヴィンは嘘つきです」
「事情があるのかと思いましたが、今回はさすがに…名無しさんまで売るとは」
「アルヴィンをダンザイにしろー!引きずりだせー!」
「何が僕たちが信じてるのを知ってるだ」
ジュードが珍しく、怒りを露にして声をあらげた。
ジュードは本当にアルヴィンのことを信用していて、それを目の前で裏切られたのが悔しくて、悲しくてどうしようもないのだろう。
かける言葉を探したが、名無しも今はジュードと同じ立場であるためその言葉はいくら探しても見つけることができない。
城から鐘がなり、城門があきア・ジュール兵の声が聞こえてきたため急いでその場から離れる。
昇降機に近づくと、昇降機は閉ざされておりその門は空かなかった。
ローエンが仕組みに気がつき、制御している石にほぼ同時にマナを注ぎ終われば大丈夫だと言う。
ガンダラ要塞と同じだとエリーゼがいうと、事情を知らないレイアが戸惑った。
「大丈夫です、精霊術をつかうのと要領は一緒ですよ」
「時間がない、チャンスは一度だけだな」
ミラの言葉を合図に皆が配置につきだす。
制御している石は全部で五つ、そして精霊術がまともに使えない名無しはそこにつくわけにはいかなかった。
配置につかない名無しに気がつきミラが声をあげた。
「なにをしている!早くお前も」
「私は、できないから、だから」
「大丈夫です!あのときお教えした感覚でやっていただければ」
「どっちにしろ、使ったら頭痛で逃げることなんかできないから…私はここで、食い止める。弱くっても、でしゃばりでも!一秒だけなら時間ぐらい作れる!」
「名無し…私のいったこと…」
「エリーゼは関係ないから、私がそうしたいの、話してる暇あるならはやく!」
名無しがさけぶと、皆が配置につきマナを注ぎ始める。
レイアが焦ってうまくいってないようだったが、その間に兵士が追い付いてしまいこちらにやってきた。
その様子を見てレイアがなぜできないのかと更に焦ってしまった。
「私だって!皆の仲間なんだから!!」
レイアの様子を見て、名無しがやってきた兵士にむけて武器を構えた。
ボウガンの弾に集中し、どうにかできないかと考えていると矢先にマナが集中した。
一瞬、頭痛がしたが今はきにしている場合ではなく、名無しが集中出来るだけのマナを弾にこめそれを石畳に放った。
何発か打ち込み、足もとの石畳を砕くと同じ要領で門の一つにも弾を打ち込み続けた。
門が崩れ落ち道を塞ぐことができたのを確認し、ジュード達のところに急いで戻ると、レイアがマナを注ぐのに成功したらしく、皆は急いで昇降機に乗り込んだ。
***
街の出口にさしかかると、プレザが待ち構えていた。
どうやらミラは一度あっているらしく、初めからア・ジュールに狙われていたということがわかった。
プレザは他にもアルヴィンがミラ達を売った話をすると、初めからアルヴィンはア・ジュール側の仲間だったのかとジュードが聞いた。
「やめて、あんな男…仲間でもなんでもないわ」
「…?」
「私たちの関係は想像にお任せするわ」
そして、アルヴィンに関しては信じた方が悪いと吐き捨てる。
影で待ち伏せていたウィンガルも話に加わり、ミラに槍の話を持ち出す。
ミラは断固として槍が人間のてに使われることを否定すると、ウィンガルが剣を構えた。
それに反応してミラが剣に手をかけると、ローエンがそれを止めウィンガルに剣をおさめないか話をする。
しかし、ウィンガルはその考えを否定し剣を向けた。
そして、力をこめるとウィンガルの姿が変わり、彼のもつマナが急激にあがったことをミラが感じ取った。
増霊極を使用しているのだとジュードがすぐに察し、エリーゼがなぜもっているのかと声をあげた。
ウィンガルはエリーゼの名を呼んだあと、聞き慣れない言葉で何かをしゃべった。
ロンダウ語ではないかとローエンがいったが、それをしっかりと聞き取る暇もなくプレザとウィンガルが襲い掛かってきた。
プレザは精霊術を得意とし、ウィンガルは剣術でたたかう戦闘スタイルだったため、前線をあつくとるかたちで皆は戦いに挑んだ。
マナが増大してためなのかウィンガルの動きは早く次に追い付くのがなかなか困難だった。
エリーゼの詠唱もプレザに阻まれてしまうためになかなか攻めいるタイミングをつかめずにいた。
「ミラ、ジュード君!私に考えがあるんだけど」
「なんだ名無し」
「二人に一対一でそれぞれについててもらいたいの出来れば好きがないぐらいに」
「それでどうするのつもりだ」
「私がプレザさんを狙う」
「そうか、あの本…うん、やってみようミラ!」
「ああ、では、まかせたぞ」
「うん!」
そして、ミラとジュードがそれぞれに張り付き基本的に身を守る形で攻撃を受ける。
名無しがタイミングを探して狙いを定め、一瞬の隙をみつけプレザの本を打ち落とした。
それをプレザが拾う瞬間を狙ってジュードが攻撃を叩き込み、ローエンも加勢する。
ウィンガルがプレザのサポートに入ろうとするのをミラが食い止め詠唱する時間ができたエリーゼが精霊術をウィンガルに当てた。
大きくダメージを与えるとウィンガルの髪がもとの黒に戻りプレザも呼吸を大きく乱した。
「やってくれたな…」
ミラがもう一度剣を構える。
「まだ、相手をしてくれるのかしら?」
「ミラ!」
「違うよ、あれ!」
「潮時というわけか」
ジュードに言われたところをみると、たくさんのア・ジュール兵がすでに追い付いてきていた。
この場は急いで退散するべきだと街の出口に逃げようとすると、ウィンガルがローエンにまた逃げるのかと叫んだ。
ローエンは一瞬立ち止まったが、皆に急ぐように言われなにも言わずに街の外に逃げた。
モン高原に逃げ、兵士が見えないとこまできたのを確認すると一同は一旦呼吸を整えることにした。
エリーゼはミラとハ・ミルが教われたことに関して話しており、名無しはローエンとアルヴィンについて話をしていた。
「アル…なんで…」
「名無しさん、先程も申しましたが今回ばかりは理由がどうであれ目に余るものがあります」
「わかってます、でも、でも私…っ」
「お気持ちはお察しします、ですが貴女も交渉材料として利用されるところだったのですよ」
「…かないと」
「名無しさん?」
「聞かないと、一人でバカみたいに抱え込んでたら、なんでなのか聞かないと!私戻らなきゃ!」
「バカをおっしゃらないでください!今戻れば身の危険は確実です!」
「でも、アルが!」
「聞き分けろ名無し!」
横で話を聞いていたミラが、名無しの頬を思いきり叩いた。
「なんのために逃げてきた、おまえのやるべきことはなんだ」
「私の…やるべきこと…」
「両親の為ではないのか、ならば」
「…それだけじゃない」
「なに?」
「私は!アルがあんなことするのいやなの!止めさせたいの!やめてほしいの…あんなことできる人じゃなかった…あんなことするのにも理由があった!平気でできる人じゃないの!信じてくれって…味方でいてくれって言われたのっ!だからっ!」
「ならば余計に私はお前をわざわざ危険な目にあわせるわけにはいかない、奴がそう言ったのならば、名無しのもとに戻ってくるだろう、それまで待て、いいな」
「…ミラ」
「わかったならば行くぞ」
ミラにいわれ、名無しはミラの言葉通りにアルヴィンが戻ってくると信じ、皆と一緒に街へと向かった。
街に戻ると、ユルゲンスが謁見はどうだったかと聞いてきたが急ぎたいためミラが直ぐ発てるかユルゲンスに確認した。
構わないとのことだったがユルゲンスがどうかしたのかと聞いてきたため、ティポが事情を話しそうになりジュードが急いでその口を塞ぐ。
「急ぐ必要は無くなったよ」
「アルヴィン!」
「…っ!アル!!」
先程裏切ったばかりのアルヴィンが、皆の前に姿を現した。
名無しが真っ直ぐにアルヴィンにかけより、アルヴィンにしがみついた。
泣きそうな顔をみて、アルヴィンが一瞬表情に影を見せたが名無しの頭を撫でるとすぐに、なんともない顔に戻った。
名無しを撫でながら、何事もなかったようにアルヴィンが、今ごろやつらは高原を走り回ってるだろうと言う。
ミラが手土産のつもりかときつくあたると、アルヴィンが仲間だからだとしれっという。
その言葉に、誰一人として反応するものはいなかった。
「なんだよ、信じてくれないのか?お前たちが信じてくれてるって知ってる、そう言っただろ」
その言葉が出た瞬間に、ミラが名無しを引き剥がした。
アルヴィンが肩をすくめたあとジュードに近づき、信じてくれるよな?と肩を組んでジュードに確認した。
ジュードの反応は当然はっきりとしていなかったが、その答えにアルヴィンは明るく感謝をした。
アルヴィンが皆を見渡しすと、エリーゼが心底嫌そうに棒読みで挨拶をしたのをアルヴィンは笑って受け答えた。
「とにかく、しばらく時間が稼げそうですね」
「事情はきかないほうがよさそうだな」
ミラたちといると飽きないと笑いユルゲンスがワイバーンのところにいるから必要になったらいつでも来てくれといって別れた。
いよいよか、とミラが呟くと準備をしようとジュードが言い、疲れたから宿にいこうとアルヴィンが話に乗っかると空気が一段と悪くなった。
「く…っ」
「どうしたの?ミラ、足が痛むの?」
「いや、どうといことは」
「…いたた、持病のしゃくが」
「!私も持病のしゃっくり病が!」
「これは、休まないとなぁー」
「…わかった、イル・ファンについてからではどうしようもないからな、出発は明日に遅らせよう」
「それじゃあ、僕、ユルゲンスさんに伝えてくるね」
ジュードがそういって、ユルゲンスに事情を話にいった。
先に皆で宿をとることにし、ジュードが戻ってくるのを待った。
ジュードがもどってくるとミラの様子を確認し、ハートハーブというのがあればどうにかなるかもしれないといいだす。
だがそれは、絶滅危惧種のひとつであり入手が困難なものだとアルヴィンが答えた。
名無しが、ハートハーブに聞き覚えがあり鞄をあさりだす。
「もしかして、これのこと?」
「なんでもってるの!!」
「モン高原歩いてたときに、めずらしいなーってちょっとだけ…」
「名無し、それもらってもいい?」
「ん、いいよ」
ハーブをジュードにわたすと、急いでミラにそれを処方した。
具合はどうかときくとミラはしゃっくりが止まらなくなった。
どうやら精霊にはアレルギーのようで、それがおかしくミラは笑いだけでも気が紛れ痛みを忘れることができたと礼を言う。
そして、ジュードが言いづらそうにアルヴィンに事情をききだした。
納得いってないのも当然かとアルヴィンが思ったよりも簡単にウィンガルと密約を組んでいたことをあっさりと話す。
「いざとなればミラさんを引き渡すとでも!」
「アルヴィン君ひどい!最初から裏切ってたんだ!」
「まてよ。あの時は色々考えてたけど、今はそれが利用できるとおもったんだ、ワイバーンの許可だって事前に話を通したからなんだぜ」
「え、じゃあガイアスの前で裏切ったのは…」
「そう、あの場でああしないとワイバーンも使えなかった、だからわざわざシャン・ドゥと真逆に逃げたって情報流したんだ」
アルヴィンの説明に、ジュードはまだ戸惑っていた。
だが、プレザとの関係も不鮮明でありまだ信じろと言うにはひっかかるものがあるといった。
この件に関しては、皆とはちがう理由で名無しもきになっていた。
頭をかきアルヴィンが言いづらそうにしたが、直ぐに何を聞きたいのかと体勢を作った。
ジュードが単刀直入に同意関係なのか間髪いれずに聞く。
アルヴィンが普段のジュードとは違う反応に戸惑うと、ジュードが答えを急かした。
「アルヴィン!」
「なんだよお前、泣いて…」
「泣いてなんかない、ただ僕は…」
ジュードが俯くと、アルヴィンはプレザとの関係を話し出した。
昔、仕事の関係で偶然イル・ファンで出会ったというとジュードがそれからどうなのだと話を掘り下げだした。
ジュードが食いつくのが意外なのか、アルヴィンは驚きながらもそれから個人的に色々あったとだけいいそこはきかないでくれといって話を終わらせた。
話を聞き終わり、納得はしたが信用しきったわけじゃないとジュードがいうと、アルヴィンが適当に茶化しだしたため、ジュードが怒った。
そして、ミラが最後にひとつだけいいかとアルヴィンに質問する。
アルヴィンはなんなりと、と言いほんとになんでも話す雰囲気だった。
ミラはなぜ自分達に肩入れするのかをアルヴィンにきいた。
「そのようなことをしてお前になんのメリットがある」
「今さら聞く?優等生やみんなが大好きだからに決まってるでしょーよ!」
「ウソつきやがってー!」
「なんだそれ、ちょっとひでーじゃねぇか!」
アルヴィンの答えに真剣になっているのが馬鹿らしくなり皆の肩の力が抜けた。
それが本当か嘘なのか、皆は追求しなかったのがおそらく皆の答えだろうと名無しは思った。
そして、ローエンがなぜ名無しを売ろうとしたのかをアルヴィンに尋ねた。
「なぜ、あのようなことを」
「演出のひとつだよ、向こうにこっちを裏切ったって見せるための駒は多くなきゃな」
「アルヴィンさん、名無しさんは一人で貴方のところに戻ろうとさえしていました、下手をすれば兵士に何をされていたのか」
「そこは、言っただろ。大好きなみんなが名無しを守ってくれるって信じてたんだぜ?」
「ほんとに、それだけ?」
「名無し…」
「他にあるんじゃないの?一回、私のこと引き止めたよね?」
「あー…、ラ・シュガルには、結局名無しを実験体にしたがってるやつがいるだろ、そこにぶん投げるなら身の安全を約束してくれるとこに置くのも考えたんだよ、向こうとしちゃデータもはいる、新しい技術の技師もてにはいる。戦争前の条件としちゃ美味しい話だ」
「しかし、それでは名無しさんの考えをまるで無視した形に」
「だから、そこでジュードやミラがどうにかすんだろってなるわけ、もういいだろ」
「ふむ…、といってますが名無しさん、よろしいですか?」
「え、あ、はい…大丈夫です、私はそんなに気にしてないので…」
「そんじゃあ休もうぜ?俺もうヘトヘトだわ」
「誰のせいだたおもってるんだー!」
ティポがアルヴィンの態度にたいして文句を言うとアルヴィンは適当に流して部屋を出ていった。
実際疲れているのは他のみんなも同じだっため、皆も用意された自分達の部屋に向かった。