2章
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闘技大会本選。
ジュード達は大会を順調に進み、無事に決勝まですすむことになった。
決勝はご飯休憩を挟んで行うということで、名無しもユルゲンス達と受付でジュード達が出てくるのを待った。
「やったー!私たち勝ったんだね!」
「うん、なんとかって感じだったけどね」
「みんなー!おつかれさまー!」
ジュード達が出てきたのをみて、名無しが階段のしたで手を振ると、それに気がついたレイアが手を振り返してくれた。
ユルゲンス達のいるところまで皆がおりてくると、ユルゲンスがジュード達を激励した。
食事休憩を挟むことを伝えられ皆は食堂に移動した。
「凄いですね、決勝進出」
「強者相手にくたびれましたがまだまだで頑張りますよ」
「ローエンさん凄かったですもんね、客席からみて目立ってましたよ」
「おや、私もまだまだいけますな」
「張り切りすぎんなよ爺さん」
「アルもお疲れ、余裕だった?」
「とーぜん」
「アルヴィン君エリーに回復してもらわなかったら危なかったくせにぃー」
「んなことねぇよ」
「ふふ、エリーゼもティポもお疲れ様」
エリーゼが駆け寄ってきたので撫でてやると、嬉しそうに彼女は目を細めた。
ティポが間に割ってはいったので二人まとめて撫でてあげると名無しは癒された気持ちになる。
その様子をアルヴィンがじっとみていたので、名無しがアルヴィンをからかうことにした。
「何?アルも撫でてあげようか?」
「っ!!ガキじゃあるまいし、いらねぇよ」
「冗談よ」
「アルヴィン君ヤキモチやいてるー」
「丸焼きにするぞぬいぐるみ」
「いーやー!キョーハクー!」
試合後だというのに、疲れをかんじさせない会話をしているとふいに名無しの服の裾をつかむ手があった。
触れられたところに目を向けると、エリーゼがなにか言いたそうにうつ向いている。
どうしたのかと聞くもなかなかはずかしがってうまく言葉にしてくれない。
しかし、エリーゼがトントンと足踏みを数回したので名無しは察しがついた。
「ミラ、ちょっとエリーゼと向こういってもいいかな?」
「どうかしたのか?」
「ちょっとお花摘み」
「花?花がどうかしたのか?」
「ミラさん、お花摘みというのはですね…」
そういうとローエンがミラに耳打ちをする。
「なんだ、ならば生理現象と言えばいいものを」
「エリーゼはそういうお年頃なの、それじゃ後で」
「あ、だったら私も一応行こうかな」
名無しとエリーゼにつられてレイアもトイレに向かうことにした。
名無しは先に用を済ませ、エリーゼとレイアが出てくるのを待った。
大会の参加者達が多く利用していることもありそれなりに混んでおり、一人が使用するのに時間がかかった。
エリーゼとレイアが出てきたのを確認して三人が戻ろうとすると、名無しが足を止めた。
「名無しどうしたの?」
「ん、んー…ハンカチ忘れたみたい…」
「まだあるんじゃない?待ってるから取りに行ってきていいよ」
「んー、じゃあ先に戻っててもらってもいいかな?あれだし」
名無しが列を形成しているところを指差して苦笑いをする。
レイアもその列をみて仕方ないといった表情をみせエリーゼの手を握った。
「ははは…、じゃあ、エリーゼ先に戻ってようか」
「はい、名無し先にいってますね」
「うん、あ、ご飯きてたら先に食べててもいいから」
去り際のレイア達にいうとレイアの元気な返事がフェードアウトしながら聞こえた。
返事を確認して名無しは再び列に並ぶ。
洗面台に忘れたのでそこに手が届き次第抜け出そうと思い待っていると、あたりを見渡している女性と目が合った。
女性は目が合うと名無しの方に歩み寄ってきて、さっき忘れていましたよ、といって名無しのハンカチを差し出してくれた。
名無しはハンカチを受けとると、女性に例を言って急いで食堂に戻ることにした。
「良い人がいてよかったー、…あれ?」
もうすぐ食堂につく、というところで名無しはアルヴィンに出会した。
よ、といって軽くてをあげ挨拶をされたのでどこにいくのかを聞くと行くのではなく同じく戻るところだったと言う。
「エリーゼ達は一緒じゃなかったのか?」
「そうだったんだけど、忘れ物しちゃったから先に戻ってもらったの、トイレ並んでたし」
「なるほど」
「それにしてもご飯食べたら決勝戦かー、流石に場数こなしてる面子が多いと違うね、優勝いけるんじゃない?」
「んじゃ、優勝したらなんかしてくれんの?」
「え、んー…なにして欲しい?」
「それまでに考えとく」
「無理なことはできないからね?」
「わかってるよ、やる気出たわ」
アルヴィンが名無しの肩に軽く触れて礼を言うと、どういたしましてと機嫌よく答える。
そのあとすぐ、何か思い出したように名無しが声を出す。
何かほかにも忘れ物があったのかアルヴィンが確認すると、名無しはそうだと答えたため、いまから間に合うなら一緒に行ってくれるとのことだった。
名無しは大丈夫といったが、その場から動く様子をみせなかった。
アルヴィンが不思議がって名無しの顔を見ていると、名無しの手がアルヴィンの頭に伸び整った髪を均すように撫で微笑む。
「とりあえず、お疲れ様ってやつ」
「お前、子供じゃないんだ、そんなんされて…っ」
「嫌だった?ごめん」
「いや別に…、お前撫でるの好きなのか?エリーゼといるとしょっちゅうやってるけど」
「ん?うん、なんか髪の毛がさらさらして気持ち良いから」
「…ったじゃねーか…」
「ん?なんかいった?」
「いいから戻るっていったんだよ」
「ん、そだね」
話し込みすぎたと思いやや早足で名無しは食堂に向かった。
少し戻りが遅かったためジュードに心配されたが何ら問題ないという。
アルヴィンも席につくと、調度食事が運ばれてくるところだった。
決勝について話をしていると、アルヴィンが相手がジュード好みの子だっだらどうするかとジュードに聞くと、顔を赤らめてジュードが関係ないとあわてる。
完全に遊ばれていると名無しは思いながらも、アルヴィンが楽しそうなことに安心感を覚えた。
和やかな会話を見て改めてユルゲンスが皆に礼を言うと、全員の料理が揃ったため食事をしようとユルゲンスが続けて言ったその時に、ユルゲンスと一緒にいた男が何かあったのか急いで駆け寄ってきた。
落ち着かない雰囲気に、皆が男に注目すると、この間の落石事故が人為的に行われたものだという報告だった。
その報告を聞いた瞬間、ミラが叫んだ。
「食事にはてをつけるな!」
「な、なに…?」
一口、口に運びそうになった名無しの匙を弾きミラが辺りに知らせるも、周りのもの達は次々と倒れていった。
急いでジュードとローエンが駆け寄ると
ローエンがメディシニアという水溶性の毒物が盛られていたと言う。
アルヴィンが食事を見つめ、他のメンバーとは違う雰囲気で顔をしかめた。
ローエンの言葉を聞き、ユルゲンス達は決勝の相手の仕業ではと言うが犯人に見当がついているミラがそれは違うとはっきり答えた。
名無しも、そこで毒を盛ったものに気がつきアルヴィンの方をみる。
「違うっ」
「わかってる、そんなのはいいのっ」
「…!」
「早く行きなさい!アルフレド!」
名無しの腕を一度引いたが、それではことが間に合わない可能性もあるので名無しはアルヴィンに早く一人で行くように促す。
その一言を聞き終わる前に、アルヴィンが食堂から走り去っていった。
ミラが止めようとしたが、その言葉が届く前に彼は去り、その場に残ったもの達は目の前に起きたことにただ混乱するばかりだった。
レイアに問い詰められたジュードがミラに説明を開示するよう頼んだ。
一同は場所を宿に変え、ミラの話を聞くことにした。
「恐らく、この事件の首謀者はアルクノアだ」
「ミラ…!いいの?」
「アルクノア?」
はじめて聞く言葉にジュードは首をかしげたが、名無しはミラがこの事を大っぴらに話すとは思っていなかったので驚きを隠せなかった。
ミラはアルクノアが自分の命を狙っている者達だといい毒を盛ったものという確信付けをした。
ローエンがあまりの手段に悲願の声を漏らしレイアがなぜ狙われているのかをミラに聞く。
ミラは、黒匣とアルクノアの関係性、そして黒匣とはなんなのかを踏まえて自分が狙われていることを説明した。
話をきき、ローエンが年長者として無知なのを悔やんだがミラがいままで水面下で行っていたのだから知らなくて当然だとローエンをフォローし、自分の力不足で皆を巻き込んでしまったと謝罪をする。
ここで、レイアがあることに気がつき名無しに話しかけた。
「ちょっとまって、ミラが一人でやってたのに名無しはアルクノアのこと、しってるみたいだったよね?」
「そういえば、名無しさっき…」
「状況が状況だものね…話すわ。15年前まで、私もそのアルクノアだったのよ」
「なんと…っ」
「イラートで名無しを襲ったのも、アルクノアで間違いない。元々名無しを旅に同行させた理由はアルクノアを誘き出すためだ」
「私もなんで狙われてるのかわかるようにってことでね」
「でもなんで…、15年前まではって」
「黒匣の事故でね、私一人が海に流されたの、今更狙われる理由は、たぶん槍をミラに狙われたから複製をするために技師の知識が最低限ある私を必要としたんじゃないかなって思ってる」
「ちょっとまって、」
ジュードが何か考えていた様子だったが、ようやく考えがまとまったらしく口を開く。
「けれど、名無しの食事にも毒が盛られていたとしたなら、それは成り立たないよ、技師が必要なら名無しを殺したら意味ないから!何か別の理由のはず…」
「あれれ?そうえば名無し、一口食べてなかった?!」
「ううん、ミラが止めてくれたから…」
「でも、ちょっと食べてたかも、知れないです」
「名無し?大丈夫なの?」
「食べてないから大丈夫だよ、なんともないし、ね?」
レイアに心配されていると、ユルゲンスが部屋に入ってきて状況を説明してくれた。
生き残ったのは、ミラが気がついたときに食事を放棄した一同だけであとは助かっていないという。
そして、決勝は中止ではなく明後日に持ち越しになるということだった。
まさかの決断に皆は驚いたが、委員会でも相当もめたらしくそれでも10年に一度なのでやめるということはないそうだった。
ユルゲンスがまだ戻らないアルヴィンを心配し、いないことを確認すると彼にも伝えるよう頼んできた。
その他の詳細は決まり次第連絡にくるということだった。
***
「そうだ名無しさん」
「は、はい」
「名無しさんは、食事の前はなにを?」
「エリーゼとレイアとトイレに…」
「戻りは別だった、その時には?」
「ちょっ、ちょっとユルゲンスさん、なに言ってるんですか?名無しは、ハンカチ忘れたから戻りが遅れただけで、ね、エリーゼ」
「はい、それで私たちが先に…」
「ユルゲンス、なにが言いたい」
ミラがまどろっこしい言い方にしびれを切らし率直にいうよう求めた。
ここまで言われては、何を聞こうとしているのかは嫌でもわかった。
しかし、ここで答えたのはユルゲンスではなくジュードであった。
「名無しは、本当に食事の口にしてないの?」
「ジュー…ド…君?」
「ジュードまでなに言ってるの、名無しがそんなことするわけ」
「イスラから、名無しさんが食事の厨房に向かったという話を聞いた」
レイアの言葉を待たずに、ユルゲンスが苦虫を噛んだような顔で言った。
「たまたま飽き時間ができ、こちらに向かう途中に見掛けたそうだ」
「ちょっと待ってください、なんで私がそんなこと」
「…名無しは、先にこの街にいたんだよね」
「やだ、ジュード君、なに言って」
「名無しじゃない、僕もそう思うけど」
「アルクノア…、ですか。あまりにも揃いすぎている…」
「ローエンさんまで、やだな、私にはみんなを狙う理由なんてないじゃない、なんで」
「名無し、本当…なの?」
「名無しが犯人…ですか?」
「あ…っ」
はめられた、名無しの脳裏をその言葉が一瞬で埋め尽くした瞬間だった。
今すぐにでもその言葉を発したかったが、ユルゲンスがいる前で彼女の素性を話すわけにもいかず、言葉が喉をつかえたままになった。
僅でも、名無しを疑うその目に名無しは自分を責める両親の影を見た。
たじろぐ名無しに、ミラが審議を確かめてきた。
名無しはもう一度自分はやっていないことを主張したが、ユルゲンスの視線が刺さるのが気になってしかたがなかった。
「お願い…信じて…、私はなにも!」
「名無しさん、あなたをあまり責めたくはない」
ユルゲンスの言葉は、慰めではなく自白をした方が、というニュアンスのもので間違いなかった。
そのときの、自分のアリバイを証明してくれるのはアルヴィンしかいない。
しかし、ミラがアルヴィンを疑っている以上そこに頼ることは叶わない。
どちらにしろここにはいない人物だ。
この場に名無しを助けてくれる存在がいなかった。
今すぐここから逃げ出したい、そんな気持ちが名無しを駆り立てていた。
だが、ここで逃げ出せば疑いは深まるばかりだなどと名無しに考えさせる余裕は既に重苦しい空気によって磨り潰されてしまってもいた。
見えないなにかに引っ張られるように、名無しの体はゆっくりと出口の方に向かっていた。
どん、と扉が背中にあたるのを確認するとそこで理性は吹き飛んだ。
無意識に、ただ本能的にドアノブにてをかけると名無しは走り出した。
階段の存在にも気がつかず、足を踏み外し転がり落ちてもなりふり構わず名無しは走った。
自分でも、どこに向かっているのか今なにが起こっているのかも理解できていなかったが、そんなことは今の名無しには関係なかった。
助けて欲しい、今すぐに。
その想いで名無しはとにかく走り、いつのまにか現れた家に夢中で飛び込んだ。
急いでドアを閉め、ドアを背もたれにずり落ちるように座り込む。
乱れたままの呼吸がなかなか整わず息が苦しかった、目の前のぼやけたままの視界に人がいるのがわかりその人物すがった。
「アル…私…私…っ」
「どうした、ジュード達は?お前一人か?」
「私やってないのに、なんで」
「とりあえず落ち着けっ手ぇ出せ」
アルヴィンに言われ手を出すと、名無しの手の震えが止まるまでアルヴィンが強く握る。
背中をさすられ呼吸を整え、何があったのかをアルヴィンにゆっくり話す。
「イスラさん、なんで…っ」
「…大方、奴等に名無しを差し出せば解放してやるとでも言われたんだろ、配膳したやつもグルだな、イスラに事情を聞きにいけば相手の思う壺でお仕舞いだ」
「私、どうすれば」
「今日はここにいろ、母さんも無事だ…、俺も今晩はここにいるから。…朝になったら話にいけばいい、お前ならわかってもらえるだろ」
「アル…っ」
大丈夫だ。
耳元に落ちた掠れた声が心強かった。
どうしようもない気持ちが溢れ、名無しはアルヴィンの胸にしがみつき泣いた。
名無しの肩を抱くアルヴィンの腕の力が強くなり痛かったが今はその痛みが逆に名無しに安心感を与えた。
夜が明けるまで、二人はレティシャの家で過ごした。
薄暗い部屋の窓にわずかに日の光がさしはじめ、名無しは朝だというのに気がついた。
部屋の奥にいたアルヴィンが名無しの横に座り飲み物を渡す。
飲み物を受け取り、名無しは窓に近づきほんの少しだけ窓を開けると日の出を眺めた。
それなりにレティシャの世話をし、一段落するとアルヴィンが身なりを整えて名無しに言った。
「…そろそろいくか」
「そう、だね」
「怖いか?」
「大丈夫、一晩考えたから」
「嘘つけ、震えんだろ」
「あ…、あはは、だめだなぁ…」
「お前はなんもしてないんだ、堂々としてればいい」
「うん」
背中を押され、名無しは外に出た。
エレベーターを下り宿に向かおうとすると、降りたところでミラに遭遇した。
まさかこの場にいるとは思っていなかったので、アルヴィンが驚く。
「っと、驚かすなよ」
「ここがお前の家というわけか」
「親の、だな」
「…やはり名無しも一緒か」
「ミラ…」
ミラの視線に耐えきれず、名無しがアルヴィンの後ろに隠れようとしたが、アルヴィンがそれを止めた。
大丈夫だ、小さくそういわれ名無しはアルヴィンのコートの裾を強く握り、ミラに向き直る。
アルヴィンが、ミラに抜け出したことを適当に謝罪し宿に向かおうと動くと、ミラがアルヴィンの胸ぐらを掴み壁に押し付けアルクノアとの関係について問いただした。
アルヴィンは最初とぼけたが、ミラがル・ロンドでの出来事を話し、以前から名無しとアルクノアとの関係は聞いていたというとアルヴィンは仕事を強要されてるとミラに答えた。
抜けたいがそうもいかない、その言葉を名無しも聞き胸に痛みが走った。
ミラはしばらく考え込み、母親のことだと察し口にする。
「それに、名無しは関与してない。むしろ人柱にされたようなもんだ。」
「どういうことだ…?」
「名無しが一人になるタイミングを作ろうとしてたんだろ、俺にも同じ指示があったが違う奴がやったんだろうな」
「では、イスラが見たという話は」
「狂言を強要されたんじゃないのか?なんでも有りの奴等だからな」
ミラから解放されたアルヴィンはスカーフを整えながら名無しのことを話した。
ミラはアルヴィンを解放すると少し考え込んだ。
その様子にアルヴィンが信じてくれるのかと聞くとミラはアルヴィンは嘘つきだったなと言い出す。
自嘲気味にアルヴィンが何を聞いても無駄だといったあとに、名無しは別だと付け加えた。
ミラが黙ってどこかに行こうとしたためどこにいくのかアルヴィンが聞く。
「どこいくんだよ」
「アルクノアの連中を探す」
「なら、俺もいくよ、仲間だろ?」
「勝手にしろ」
「あ、あの…私も」
「お前の無実も、奴等に証明させねばな」
「ミラ…っ」
ミラがアルヴィン達を見ずに答えると、そのまま歩き出した。
名無しが急いでミラの後をついていった。
橋の方を渡るとジュードたちに会った。
ジュードと目が合い思わず名無しが目線を逸らしたのに気がつき、ミラが名無しについて話をした。
アルクノアに名無しが狙われているのならば、疑いをかけさせ一人になったところを狙おうとしていたのではないかと言った。
ではイスラの話はどう説明をつけるのかと聞かれると、イスラに扮した奴が近づき、ユルゲンスに伝えたのだろうとこたえた。
「いった通り、目的のためならなんでもありの奴等だ。それしき簡単にやりのけるだろう」
「的確なところをつきタイミングを図っていたというところですか…、抜け目のない」
「酷い…」
ミラの話を聞き、皆が納得したようで其々から謝罪の言葉が出る。
やはりミラの存在は大きいものだと思う反面、自分の言葉とはそんなにも信用のないものなのかと、虚しいものが込み上げてきた。
「よかった…名無しが何もしてなくて…」
「ごめん、名無し、少しでも疑って」
「ううん、私じゃないってわかってもらえたらすごく嬉しいから…」
話が終わると、ジュードが突然いなくなったミラ達を責める。
アルヴィンが適当にごまかし、エリーゼがなにか言いたそうだと言い出した。
エリーゼに話を聞くと、途中イスラにあったらしくイスラがエリーゼを見るなり顔色をかえたというこだった。
先程の名無しの話もあり、ミラがイスラの名前に敏感に反応した。
「でも、逃げるみたいにどっかいっちゃったんだー」
「イスラさんにあったら話を聞こうね」
ジュードがエリーゼに言うと闘技場の鐘がなった。
鐘がなると、待ちの住人が闘技場にいかなくていいのかを聞いてきた。
そこで、ジュードがなぜ参加者だとわかったのかきくと、この時期に来る外の人はみな闘技大会目当てだからすぐわかるということだった。
その言葉を聞いてジュードが少し考え出したのでどうかしたのかを聞いたが、何か引っ掛かるものがあるということだったが、それよりも闘技大会に行こうとジュードが行ったため皆は闘技場に向かった。
ジュード達は大会を順調に進み、無事に決勝まですすむことになった。
決勝はご飯休憩を挟んで行うということで、名無しもユルゲンス達と受付でジュード達が出てくるのを待った。
「やったー!私たち勝ったんだね!」
「うん、なんとかって感じだったけどね」
「みんなー!おつかれさまー!」
ジュード達が出てきたのをみて、名無しが階段のしたで手を振ると、それに気がついたレイアが手を振り返してくれた。
ユルゲンス達のいるところまで皆がおりてくると、ユルゲンスがジュード達を激励した。
食事休憩を挟むことを伝えられ皆は食堂に移動した。
「凄いですね、決勝進出」
「強者相手にくたびれましたがまだまだで頑張りますよ」
「ローエンさん凄かったですもんね、客席からみて目立ってましたよ」
「おや、私もまだまだいけますな」
「張り切りすぎんなよ爺さん」
「アルもお疲れ、余裕だった?」
「とーぜん」
「アルヴィン君エリーに回復してもらわなかったら危なかったくせにぃー」
「んなことねぇよ」
「ふふ、エリーゼもティポもお疲れ様」
エリーゼが駆け寄ってきたので撫でてやると、嬉しそうに彼女は目を細めた。
ティポが間に割ってはいったので二人まとめて撫でてあげると名無しは癒された気持ちになる。
その様子をアルヴィンがじっとみていたので、名無しがアルヴィンをからかうことにした。
「何?アルも撫でてあげようか?」
「っ!!ガキじゃあるまいし、いらねぇよ」
「冗談よ」
「アルヴィン君ヤキモチやいてるー」
「丸焼きにするぞぬいぐるみ」
「いーやー!キョーハクー!」
試合後だというのに、疲れをかんじさせない会話をしているとふいに名無しの服の裾をつかむ手があった。
触れられたところに目を向けると、エリーゼがなにか言いたそうにうつ向いている。
どうしたのかと聞くもなかなかはずかしがってうまく言葉にしてくれない。
しかし、エリーゼがトントンと足踏みを数回したので名無しは察しがついた。
「ミラ、ちょっとエリーゼと向こういってもいいかな?」
「どうかしたのか?」
「ちょっとお花摘み」
「花?花がどうかしたのか?」
「ミラさん、お花摘みというのはですね…」
そういうとローエンがミラに耳打ちをする。
「なんだ、ならば生理現象と言えばいいものを」
「エリーゼはそういうお年頃なの、それじゃ後で」
「あ、だったら私も一応行こうかな」
名無しとエリーゼにつられてレイアもトイレに向かうことにした。
名無しは先に用を済ませ、エリーゼとレイアが出てくるのを待った。
大会の参加者達が多く利用していることもありそれなりに混んでおり、一人が使用するのに時間がかかった。
エリーゼとレイアが出てきたのを確認して三人が戻ろうとすると、名無しが足を止めた。
「名無しどうしたの?」
「ん、んー…ハンカチ忘れたみたい…」
「まだあるんじゃない?待ってるから取りに行ってきていいよ」
「んー、じゃあ先に戻っててもらってもいいかな?あれだし」
名無しが列を形成しているところを指差して苦笑いをする。
レイアもその列をみて仕方ないといった表情をみせエリーゼの手を握った。
「ははは…、じゃあ、エリーゼ先に戻ってようか」
「はい、名無し先にいってますね」
「うん、あ、ご飯きてたら先に食べててもいいから」
去り際のレイア達にいうとレイアの元気な返事がフェードアウトしながら聞こえた。
返事を確認して名無しは再び列に並ぶ。
洗面台に忘れたのでそこに手が届き次第抜け出そうと思い待っていると、あたりを見渡している女性と目が合った。
女性は目が合うと名無しの方に歩み寄ってきて、さっき忘れていましたよ、といって名無しのハンカチを差し出してくれた。
名無しはハンカチを受けとると、女性に例を言って急いで食堂に戻ることにした。
「良い人がいてよかったー、…あれ?」
もうすぐ食堂につく、というところで名無しはアルヴィンに出会した。
よ、といって軽くてをあげ挨拶をされたのでどこにいくのかを聞くと行くのではなく同じく戻るところだったと言う。
「エリーゼ達は一緒じゃなかったのか?」
「そうだったんだけど、忘れ物しちゃったから先に戻ってもらったの、トイレ並んでたし」
「なるほど」
「それにしてもご飯食べたら決勝戦かー、流石に場数こなしてる面子が多いと違うね、優勝いけるんじゃない?」
「んじゃ、優勝したらなんかしてくれんの?」
「え、んー…なにして欲しい?」
「それまでに考えとく」
「無理なことはできないからね?」
「わかってるよ、やる気出たわ」
アルヴィンが名無しの肩に軽く触れて礼を言うと、どういたしましてと機嫌よく答える。
そのあとすぐ、何か思い出したように名無しが声を出す。
何かほかにも忘れ物があったのかアルヴィンが確認すると、名無しはそうだと答えたため、いまから間に合うなら一緒に行ってくれるとのことだった。
名無しは大丈夫といったが、その場から動く様子をみせなかった。
アルヴィンが不思議がって名無しの顔を見ていると、名無しの手がアルヴィンの頭に伸び整った髪を均すように撫で微笑む。
「とりあえず、お疲れ様ってやつ」
「お前、子供じゃないんだ、そんなんされて…っ」
「嫌だった?ごめん」
「いや別に…、お前撫でるの好きなのか?エリーゼといるとしょっちゅうやってるけど」
「ん?うん、なんか髪の毛がさらさらして気持ち良いから」
「…ったじゃねーか…」
「ん?なんかいった?」
「いいから戻るっていったんだよ」
「ん、そだね」
話し込みすぎたと思いやや早足で名無しは食堂に向かった。
少し戻りが遅かったためジュードに心配されたが何ら問題ないという。
アルヴィンも席につくと、調度食事が運ばれてくるところだった。
決勝について話をしていると、アルヴィンが相手がジュード好みの子だっだらどうするかとジュードに聞くと、顔を赤らめてジュードが関係ないとあわてる。
完全に遊ばれていると名無しは思いながらも、アルヴィンが楽しそうなことに安心感を覚えた。
和やかな会話を見て改めてユルゲンスが皆に礼を言うと、全員の料理が揃ったため食事をしようとユルゲンスが続けて言ったその時に、ユルゲンスと一緒にいた男が何かあったのか急いで駆け寄ってきた。
落ち着かない雰囲気に、皆が男に注目すると、この間の落石事故が人為的に行われたものだという報告だった。
その報告を聞いた瞬間、ミラが叫んだ。
「食事にはてをつけるな!」
「な、なに…?」
一口、口に運びそうになった名無しの匙を弾きミラが辺りに知らせるも、周りのもの達は次々と倒れていった。
急いでジュードとローエンが駆け寄ると
ローエンがメディシニアという水溶性の毒物が盛られていたと言う。
アルヴィンが食事を見つめ、他のメンバーとは違う雰囲気で顔をしかめた。
ローエンの言葉を聞き、ユルゲンス達は決勝の相手の仕業ではと言うが犯人に見当がついているミラがそれは違うとはっきり答えた。
名無しも、そこで毒を盛ったものに気がつきアルヴィンの方をみる。
「違うっ」
「わかってる、そんなのはいいのっ」
「…!」
「早く行きなさい!アルフレド!」
名無しの腕を一度引いたが、それではことが間に合わない可能性もあるので名無しはアルヴィンに早く一人で行くように促す。
その一言を聞き終わる前に、アルヴィンが食堂から走り去っていった。
ミラが止めようとしたが、その言葉が届く前に彼は去り、その場に残ったもの達は目の前に起きたことにただ混乱するばかりだった。
レイアに問い詰められたジュードがミラに説明を開示するよう頼んだ。
一同は場所を宿に変え、ミラの話を聞くことにした。
「恐らく、この事件の首謀者はアルクノアだ」
「ミラ…!いいの?」
「アルクノア?」
はじめて聞く言葉にジュードは首をかしげたが、名無しはミラがこの事を大っぴらに話すとは思っていなかったので驚きを隠せなかった。
ミラはアルクノアが自分の命を狙っている者達だといい毒を盛ったものという確信付けをした。
ローエンがあまりの手段に悲願の声を漏らしレイアがなぜ狙われているのかをミラに聞く。
ミラは、黒匣とアルクノアの関係性、そして黒匣とはなんなのかを踏まえて自分が狙われていることを説明した。
話をきき、ローエンが年長者として無知なのを悔やんだがミラがいままで水面下で行っていたのだから知らなくて当然だとローエンをフォローし、自分の力不足で皆を巻き込んでしまったと謝罪をする。
ここで、レイアがあることに気がつき名無しに話しかけた。
「ちょっとまって、ミラが一人でやってたのに名無しはアルクノアのこと、しってるみたいだったよね?」
「そういえば、名無しさっき…」
「状況が状況だものね…話すわ。15年前まで、私もそのアルクノアだったのよ」
「なんと…っ」
「イラートで名無しを襲ったのも、アルクノアで間違いない。元々名無しを旅に同行させた理由はアルクノアを誘き出すためだ」
「私もなんで狙われてるのかわかるようにってことでね」
「でもなんで…、15年前まではって」
「黒匣の事故でね、私一人が海に流されたの、今更狙われる理由は、たぶん槍をミラに狙われたから複製をするために技師の知識が最低限ある私を必要としたんじゃないかなって思ってる」
「ちょっとまって、」
ジュードが何か考えていた様子だったが、ようやく考えがまとまったらしく口を開く。
「けれど、名無しの食事にも毒が盛られていたとしたなら、それは成り立たないよ、技師が必要なら名無しを殺したら意味ないから!何か別の理由のはず…」
「あれれ?そうえば名無し、一口食べてなかった?!」
「ううん、ミラが止めてくれたから…」
「でも、ちょっと食べてたかも、知れないです」
「名無し?大丈夫なの?」
「食べてないから大丈夫だよ、なんともないし、ね?」
レイアに心配されていると、ユルゲンスが部屋に入ってきて状況を説明してくれた。
生き残ったのは、ミラが気がついたときに食事を放棄した一同だけであとは助かっていないという。
そして、決勝は中止ではなく明後日に持ち越しになるということだった。
まさかの決断に皆は驚いたが、委員会でも相当もめたらしくそれでも10年に一度なのでやめるということはないそうだった。
ユルゲンスがまだ戻らないアルヴィンを心配し、いないことを確認すると彼にも伝えるよう頼んできた。
その他の詳細は決まり次第連絡にくるということだった。
***
「そうだ名無しさん」
「は、はい」
「名無しさんは、食事の前はなにを?」
「エリーゼとレイアとトイレに…」
「戻りは別だった、その時には?」
「ちょっ、ちょっとユルゲンスさん、なに言ってるんですか?名無しは、ハンカチ忘れたから戻りが遅れただけで、ね、エリーゼ」
「はい、それで私たちが先に…」
「ユルゲンス、なにが言いたい」
ミラがまどろっこしい言い方にしびれを切らし率直にいうよう求めた。
ここまで言われては、何を聞こうとしているのかは嫌でもわかった。
しかし、ここで答えたのはユルゲンスではなくジュードであった。
「名無しは、本当に食事の口にしてないの?」
「ジュー…ド…君?」
「ジュードまでなに言ってるの、名無しがそんなことするわけ」
「イスラから、名無しさんが食事の厨房に向かったという話を聞いた」
レイアの言葉を待たずに、ユルゲンスが苦虫を噛んだような顔で言った。
「たまたま飽き時間ができ、こちらに向かう途中に見掛けたそうだ」
「ちょっと待ってください、なんで私がそんなこと」
「…名無しは、先にこの街にいたんだよね」
「やだ、ジュード君、なに言って」
「名無しじゃない、僕もそう思うけど」
「アルクノア…、ですか。あまりにも揃いすぎている…」
「ローエンさんまで、やだな、私にはみんなを狙う理由なんてないじゃない、なんで」
「名無し、本当…なの?」
「名無しが犯人…ですか?」
「あ…っ」
はめられた、名無しの脳裏をその言葉が一瞬で埋め尽くした瞬間だった。
今すぐにでもその言葉を発したかったが、ユルゲンスがいる前で彼女の素性を話すわけにもいかず、言葉が喉をつかえたままになった。
僅でも、名無しを疑うその目に名無しは自分を責める両親の影を見た。
たじろぐ名無しに、ミラが審議を確かめてきた。
名無しはもう一度自分はやっていないことを主張したが、ユルゲンスの視線が刺さるのが気になってしかたがなかった。
「お願い…信じて…、私はなにも!」
「名無しさん、あなたをあまり責めたくはない」
ユルゲンスの言葉は、慰めではなく自白をした方が、というニュアンスのもので間違いなかった。
そのときの、自分のアリバイを証明してくれるのはアルヴィンしかいない。
しかし、ミラがアルヴィンを疑っている以上そこに頼ることは叶わない。
どちらにしろここにはいない人物だ。
この場に名無しを助けてくれる存在がいなかった。
今すぐここから逃げ出したい、そんな気持ちが名無しを駆り立てていた。
だが、ここで逃げ出せば疑いは深まるばかりだなどと名無しに考えさせる余裕は既に重苦しい空気によって磨り潰されてしまってもいた。
見えないなにかに引っ張られるように、名無しの体はゆっくりと出口の方に向かっていた。
どん、と扉が背中にあたるのを確認するとそこで理性は吹き飛んだ。
無意識に、ただ本能的にドアノブにてをかけると名無しは走り出した。
階段の存在にも気がつかず、足を踏み外し転がり落ちてもなりふり構わず名無しは走った。
自分でも、どこに向かっているのか今なにが起こっているのかも理解できていなかったが、そんなことは今の名無しには関係なかった。
助けて欲しい、今すぐに。
その想いで名無しはとにかく走り、いつのまにか現れた家に夢中で飛び込んだ。
急いでドアを閉め、ドアを背もたれにずり落ちるように座り込む。
乱れたままの呼吸がなかなか整わず息が苦しかった、目の前のぼやけたままの視界に人がいるのがわかりその人物すがった。
「アル…私…私…っ」
「どうした、ジュード達は?お前一人か?」
「私やってないのに、なんで」
「とりあえず落ち着けっ手ぇ出せ」
アルヴィンに言われ手を出すと、名無しの手の震えが止まるまでアルヴィンが強く握る。
背中をさすられ呼吸を整え、何があったのかをアルヴィンにゆっくり話す。
「イスラさん、なんで…っ」
「…大方、奴等に名無しを差し出せば解放してやるとでも言われたんだろ、配膳したやつもグルだな、イスラに事情を聞きにいけば相手の思う壺でお仕舞いだ」
「私、どうすれば」
「今日はここにいろ、母さんも無事だ…、俺も今晩はここにいるから。…朝になったら話にいけばいい、お前ならわかってもらえるだろ」
「アル…っ」
大丈夫だ。
耳元に落ちた掠れた声が心強かった。
どうしようもない気持ちが溢れ、名無しはアルヴィンの胸にしがみつき泣いた。
名無しの肩を抱くアルヴィンの腕の力が強くなり痛かったが今はその痛みが逆に名無しに安心感を与えた。
夜が明けるまで、二人はレティシャの家で過ごした。
薄暗い部屋の窓にわずかに日の光がさしはじめ、名無しは朝だというのに気がついた。
部屋の奥にいたアルヴィンが名無しの横に座り飲み物を渡す。
飲み物を受け取り、名無しは窓に近づきほんの少しだけ窓を開けると日の出を眺めた。
それなりにレティシャの世話をし、一段落するとアルヴィンが身なりを整えて名無しに言った。
「…そろそろいくか」
「そう、だね」
「怖いか?」
「大丈夫、一晩考えたから」
「嘘つけ、震えんだろ」
「あ…、あはは、だめだなぁ…」
「お前はなんもしてないんだ、堂々としてればいい」
「うん」
背中を押され、名無しは外に出た。
エレベーターを下り宿に向かおうとすると、降りたところでミラに遭遇した。
まさかこの場にいるとは思っていなかったので、アルヴィンが驚く。
「っと、驚かすなよ」
「ここがお前の家というわけか」
「親の、だな」
「…やはり名無しも一緒か」
「ミラ…」
ミラの視線に耐えきれず、名無しがアルヴィンの後ろに隠れようとしたが、アルヴィンがそれを止めた。
大丈夫だ、小さくそういわれ名無しはアルヴィンのコートの裾を強く握り、ミラに向き直る。
アルヴィンが、ミラに抜け出したことを適当に謝罪し宿に向かおうと動くと、ミラがアルヴィンの胸ぐらを掴み壁に押し付けアルクノアとの関係について問いただした。
アルヴィンは最初とぼけたが、ミラがル・ロンドでの出来事を話し、以前から名無しとアルクノアとの関係は聞いていたというとアルヴィンは仕事を強要されてるとミラに答えた。
抜けたいがそうもいかない、その言葉を名無しも聞き胸に痛みが走った。
ミラはしばらく考え込み、母親のことだと察し口にする。
「それに、名無しは関与してない。むしろ人柱にされたようなもんだ。」
「どういうことだ…?」
「名無しが一人になるタイミングを作ろうとしてたんだろ、俺にも同じ指示があったが違う奴がやったんだろうな」
「では、イスラが見たという話は」
「狂言を強要されたんじゃないのか?なんでも有りの奴等だからな」
ミラから解放されたアルヴィンはスカーフを整えながら名無しのことを話した。
ミラはアルヴィンを解放すると少し考え込んだ。
その様子にアルヴィンが信じてくれるのかと聞くとミラはアルヴィンは嘘つきだったなと言い出す。
自嘲気味にアルヴィンが何を聞いても無駄だといったあとに、名無しは別だと付け加えた。
ミラが黙ってどこかに行こうとしたためどこにいくのかアルヴィンが聞く。
「どこいくんだよ」
「アルクノアの連中を探す」
「なら、俺もいくよ、仲間だろ?」
「勝手にしろ」
「あ、あの…私も」
「お前の無実も、奴等に証明させねばな」
「ミラ…っ」
ミラがアルヴィン達を見ずに答えると、そのまま歩き出した。
名無しが急いでミラの後をついていった。
橋の方を渡るとジュードたちに会った。
ジュードと目が合い思わず名無しが目線を逸らしたのに気がつき、ミラが名無しについて話をした。
アルクノアに名無しが狙われているのならば、疑いをかけさせ一人になったところを狙おうとしていたのではないかと言った。
ではイスラの話はどう説明をつけるのかと聞かれると、イスラに扮した奴が近づき、ユルゲンスに伝えたのだろうとこたえた。
「いった通り、目的のためならなんでもありの奴等だ。それしき簡単にやりのけるだろう」
「的確なところをつきタイミングを図っていたというところですか…、抜け目のない」
「酷い…」
ミラの話を聞き、皆が納得したようで其々から謝罪の言葉が出る。
やはりミラの存在は大きいものだと思う反面、自分の言葉とはそんなにも信用のないものなのかと、虚しいものが込み上げてきた。
「よかった…名無しが何もしてなくて…」
「ごめん、名無し、少しでも疑って」
「ううん、私じゃないってわかってもらえたらすごく嬉しいから…」
話が終わると、ジュードが突然いなくなったミラ達を責める。
アルヴィンが適当にごまかし、エリーゼがなにか言いたそうだと言い出した。
エリーゼに話を聞くと、途中イスラにあったらしくイスラがエリーゼを見るなり顔色をかえたというこだった。
先程の名無しの話もあり、ミラがイスラの名前に敏感に反応した。
「でも、逃げるみたいにどっかいっちゃったんだー」
「イスラさんにあったら話を聞こうね」
ジュードがエリーゼに言うと闘技場の鐘がなった。
鐘がなると、待ちの住人が闘技場にいかなくていいのかを聞いてきた。
そこで、ジュードがなぜ参加者だとわかったのかきくと、この時期に来る外の人はみな闘技大会目当てだからすぐわかるということだった。
その言葉を聞いてジュードが少し考え出したのでどうかしたのかを聞いたが、何か引っ掛かるものがあるということだったが、それよりも闘技大会に行こうとジュードが行ったため皆は闘技場に向かった。