2章
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「初めまして!私レイア!」
「よろしくレイアちゃん、名無しよ」
「うん!」
闘技場に向かいながら一同は再会の挨拶を適当にすませた。
久々に会うことができ名無しは僅かな会話に心を踊らせた。
初対面である名無しとレイアはお互いに自己紹介を済ませる。
元気よくレイアが名無しに話しかけるため、お互いを知るのには短時間で十分なほどだった。
たくさんの話題を話しているうちに、レイアが名無しに新しく話題をふる。
「アルヴィン君の手紙の相手って名無しなの?」
「手紙?また突発な質問ね」
「女の人っていってたから、そうなのかって」
「まさか、誰から聞いたのそんなの」
「ジュードから!なんだー、てっきり名無しがアルヴィン君の恋人だと思っちゃったよー、つまんないの」
「レイア、そんなこと言ったら失礼だよ」
「ジュードこそ誰だか気にならないの?」
「僕は別に…」
「ふふ、女の子の方がこういう話は好きだものね」
久々に賑やかな会話ができ名無しはとても楽しかった。
ジュードとレイアがなにか言い合いを始めた。
レイアはジュードの幼馴染みだそうだ。
あの時一緒に旅をしていた時に見たジュードよりもレイアと話しているジュードはどこか雰囲気が違い、年齢相当な態度のように見え名無しには微笑ましかった。
さて、再会して気になるところはやはりミラの足のことである。
そんなにも早く治るものなのか、そして治っていたとしても容態はどうなのか名無しがミラに聞くと、ジュードの父親に医療ジンテクスという治療を施してもらったため早期の回復が可能になったということだった。
ミラの右足を見ると、そこには蒼い石が装置と一緒に足に嵌め込まれていた。
「よかった…ミラがまた歩けるようになって」
「うむ、ジュードの父親には感謝せねばな、ところで名無し。ここで何をしていたんだ?イル・ファンの方へ向かおうとしたのでは」
「それなんだけど、やっぱり無理みたいで…それでひょんなことでシャン・ドゥにって」
「先程の様子ですと、はやり名無しさんもをワイバーンを?」
「そういえば、さっきの話だと顔見知りみたいだったよね」
船着き場につき、船に乗り込むと名無しの話に、目の前に座ったローエンとジュードが加わる。
「始めにお願いしたときに大会が終わるまで待てないかって言われちゃって完全な足止め状態だったの」
「成る程…、では出場できる者がいなかったためそれまでに手が回らなかったのだろうな」
「んーなんで私の時には大会の代行の話し出してくれなかったのかしら」
「名無し弱そうだもんねぇ~」
「どういう意味よティポ」
横からティポに口を挟まれ名無しがティポを捕まえてぐにぐにと揉む。
もうひとつの船に乗っていたエリーゼが遠くから慌てて止めようとするが、名無しはじゃれたいだけなのでその手を止めようとしなかった。
散々揉んだあとに、ティポの形を整え闘技場につくなり名無しはエリーゼにティポを返すと後ろからアルヴィンに話しかけられ少し驚く。
「お前、楽しそうだな」
「そう?ふふ、そうかも皆にあえて嬉しいし、レイアちゃんと仲良くなれたし」
「ふーん」
「なにつまらない顔してるよ」
「そうか?いつも通り整った顔してると思うけど」
「でたそのキャラ…、でも、それはそうね」
「な…っ」
「狼狽えないでよ、恥ずかしい…」
「恥ずかしがるならさらっというなよ」
「だったら最初から言わないで」
「なになに?どうしたの?」
名無しとアルヴィンが言い合いを始めそうになった時、レイアが二人の会話に興味をもち交ざろうとしたがアルヴィンがあしらったため、レイアはほほを膨らます。
そんなレイアを見て名無しがなんでもないと答えると、レイアは何を期待していたのかつまらなさそうに話から外れる。
一行は闘技場の中で一人の男をみつけ話しかけた。
ユルゲンスというその男に話をし、準備を済ませ一行はすぐに予選に参加することにした。
実戦を行う会場に入ると、レイアが嬉しそうに興奮し出した。
体育会系なのかお祭り娘なのか、とにかく元気な子であると改めて名無しは思った。
ユルゲンス達は客席から見るということで、名無しもそちらに同行しようとしたため、ティポが疑問に思い話しかけた。
「あれ?名無しは一緒に戦わないの?」
「え、私もそっちでよかったの…?」
「名無し、一緒に戦いましょう」
「エリーゼの気持ちは嬉しいけど…あの、ユルゲンスさん」
「すまない、貴女も戦うとは思っていなくて先程エントリーした時に名前を入れていないんだ」
「だって、残念だけど応援組ね」
「では、名無しさんの応援が無駄にならないよう私本気を出さねばなりませんね」
「よくいうよ、爺さん」
「ほほほ、アルヴィンさんもよろしくお願いします」
「頑張ろうね、アルヴィン」
「優等生にまで言われちゃね」
「それでは、私たちは客席で見させてもらうよ」
ユルゲンス達に連れられ名無しも観客席から皆の活躍を見守ることにした。
ミラたちの実力はそれなりに知っているので、魔物などに手を煩わせる事はないだろう。
想定していた通りに、ジュード達は難なく予選をこなした。
ユルゲンスが皆を称賛すると、ティポが胸を張って当たり前だと言うと、ユルゲンスが愉快に笑った。
本選は明日だということで、明日に備えてユルゲンス達がミラたちに宿をとってくれたらしく、一行はその行為に甘え宿に向かうことにした。
宿につき各々で休息をとる。
名無しの分の宿までしっかりとってあり、名無しはどうしようか考えイスラにこの事をつたえようと思い一度外に行こうとすると、ミラにどこへ行くのか聞かれた。
「名無し、どこに行くのだ」
「こっちで今お世話になってる人がいて、今日ほこっちに泊まるからって言おうと思って」
「そうか、では戻ってきたら話がしたい」
「ん、ちょっと待っててね」
部屋をあとにし名無しはイスラの家に向かった。
イスラの家につくと早速イスラが何かあったのか聞いてきた。
事情を説明し、向こうの宿にいると言うことを話すとイスラの表情が少し曇った。
「今日、アルに会ったわ」
「イスラさんのところにも行ったんですね」
「ええ…それで、またしばらく私に看てもらいたいって…」
「はじめて聞きました…それ…」
「ねぇお願い、あなた自分でやりたいのよね、彼に言ってよあなたがやるって」
「出来るだけ、そうなるよう話してみますね」
「ええ…頼んだわ…、宿に戻るのよね、ごめんなさい引き留めて」
「いえ、それじゃあおやすみなさい」
イスラの家を後にして名無しはミラと話をするために宿に急いで戻った。
ミラはロビーのソファで待っていてくれたようで、中に入ると直ぐに話をしたい様子で場所を変えようと提案された。
ミラと二人で話すのだから、大体の話題は頭に浮かんでいたため、その提案を快く名無しは受け入れ適当な場所に移動した。
「それで話って?」
「どうということはない、一人でいる間アルクノアはどうだった」
「それが不思議なことにぱったりやんでるの、あんなに警戒したのになんでかなぁ」
「やはりか、名無し、お前とアルヴィンは昔馴染みだといっていたな」
「え、うん、…その口振りだとなんとなく言いたいことわかるかも」
「なら話は早い、名無し、お前の身を売る可能性があるのは奴だ」
ミラなりに気を遣っていたようだったが、名無しが確信に触れると躊躇を捨て率直に話を出してきた。
ミラのこういった真っ直ぐなところは話をする側としても安心感がある。
「私もそう思ってたけど、多分違うと思うな」
「何故そう言いきれる」
「ミラ達の時もそうだったけど、まどろっこしすぎるのよね。逃げようと思えば簡単に逃げられる状況だし、そうだと気がついたら怪しい発言ばっかりだもの」
「何か知っているのか?」
「残念だけどあまり、ミラの察する通りアルクノアに関係してることぐらいよ」
「そうか、名無しには悪いが何かあれば私は奴に容赦をするつもりなないぞ」
「ん、わかってる。その方がいいとおもってるし私には出来ないことだから、…ねぇミラ。一つお願いしてもいいかな」
「私にできることなら聞いてやろう、なんだ」
「アルのこと、信じてあげて」
「それは難しいな、捨て置けないところがありすぎる」
「アル、自分のこと話さないでしょ?だから、その時がきたら信じてあげてほしいの」
名無しがミラの目を真っ直ぐ見ていう。
ミラはなにも答えず、名無しの目を見つめ返すだけだったが、しばらくするとミラの中で返事が決まったらしく凛とした声が返ってきた。
「わかった、だが先程も言ったように何かあれば容赦はない、いいな?」
「うん、ありがとう」
「名無しも、ジュードと一緒で人のことが心配なのだな、人間とは不思議なものだ」
「突き詰めちゃえば自分のことなんだけどね、ミラだって皆のために頑張ってるじゃない」
「私のは使命だからな、やらなければならないのだ」
「その使命だって、何かのためを想わないと出来ないことじゃない?規模は違うけど想いは一緒なんじゃないかな」
「それもまた、人間らしい答えだな…くっ」
話をしていると、ミラが足の痛みを訴えた。
医療ジンテクスは運動神経に直接的に精霊術を施すもので、歩くという行為に使う神経を精霊術にまかせるようなものなのだ。
聞く限り天の恵みのような物だが治療の際、激しい痛みが生じるリスクもある。
「ミラ?足痛むの?」
「すまない、どうということはないのだが」
「どうせラコルムから歩き通しでさっき戦ったんでしょ?風も冷たくなったしもう戻りましょう」
「そうだな、では明日に備えるとしよう」
名無しはミラと一緒に宿屋に戻ると、先程イスラに言われたことをアルヴィンにいつ尋ねるか考えた。
今のタイミングで外に出てはミラに怪しまれるだろう、イスラに少し申し訳なさを感じつつも朝早く起きたときに話せばよいだろうと名無しは眠りについた。
***
翌朝、名無しはシャン・ドゥでの日の出を見るために街の真ん中にいた。
あの日日の出がみえると教えてもらってから日課のように早朝橋のところに通っている。
適当な朝食と飲み物を口にしながら今日も日の出を見ていた。
「鶏起こしの名無し、とかそのうちあだ名つくんじゃねーの?」
「それより早く鶏が起きてるから問題ないわね、おはようアル」
「おう、よく起きるなこんな時間に」
「あなたもね、おばさまのとこ行くの?」
「いや、名無しが出てくの見えたからな」
「…っ、そう、…。あ、食べる?」
「さんきゅ」
名無しは手に持っていた朝食を半分にしアルヴィンに渡した。
イラートで会ったときもこんなことがあったと思い耽っているとアルヴィンが同じことを言い、そうね、と一言名無しは返した。
名無しは、昨晩のイスラと話したことをアルヴィンに聞いた。
アルヴィンは、あくまでミラ達がこの町にいる間は名無しもミラといることの方が多くなるだろう考えその間だけもう一度頼んだのだといった。
イスラからそのようなことまでは聞いてないと言ったが、イスラにそこまで話す必要はないとアルヴィンはこたえた。
「名無し、イスラが可哀想とか思ってるのか?」
「可哀想っていうよりは、どうにかならないかなって、おばさまの事なら私見れるし…」
「お前の分俺が持つ代わりにって約束か…けど、そりゃ俺の分じゃない、イスラの分だ、とにかくミラ達に怪しまれないための一時処理だよ」
「うーん…」
「納得いかないって感じだな」
「何か隠してない?そんな感じ」
「なんもねーよ」
「そう?…んっし、そろそろ戻らないとミラ達に怪しまれちゃうかなー」
手に持っていた食事を平らげ名無しは背伸びをした。
アルヴィンもそれにつられて名無しから受け取ったものを口に放り入れた。
宿に戻る道で、何もないまま宙に揺れるアルヴィンの手を見て名無しがそれを掴んだ。
「…なっ、どうしたんだよ」
「皆の前じゃできないから、今のうちに」
「照れるならやるなっていってるだろ…」
「放したほうがいい?」
「いいよ、このままで」
そっぽを向いて言うアルヴィンの答えに名無しが笑顔になる。
宿につくまでのほんの数分のこの時間に名無しは幸せを感じた。
宿につく前に手を離し、二人は何事もないよう取り繕い中に入った。
ロビーにはまだ誰もいなく、また後でと挨拶をしそれぞれの部屋に戻ることにした。
部屋に戻ると、ミラが目を覚ましたところのようで挨拶をする。
どこかへいっていたのか聞かれたため、素直に日の出を見に行っていたと答えた。
ミラに続いてレイアとエリーゼも起き、準備をすまし部屋を出ると、丁度男性陣と合流できたため全員でロビーに向かった。
ロビーに下りるとそこにはユルゲンス達がミラ達を待っていた。
ユルゲンス達に大会の流れを説明されると、開始の鐘まで時間があることがわかり早速ミラが時間を使いたいと動こうとする。
アルヴィンとレイアはミラに同行し、ジュード、ローエン、エリーゼは町の観光をするということでそれぞれ動くことにした。
どちらにもついていない名無しに気がつきレイアが一緒に行こうと誘った。
「ねぇ名無し、もっとお話ししたいから一緒に行こうよ」
「私は、えっと」
レティシャの様子を見に行こうと思っていた名無しは少し答えに迷った。
アルヴィンの方を少し見ると、アルヴィンが察してくれたらしく口を開く。
「いいんじゃねーの?俺的には華が多い方が嬉しいしな」
「アルヴィン君が名無しをナンパしてるーナンパマンー!」
「嫉妬すんなよティポ、お前が可愛い女の子だったら混ぜてやるよ」
「ティ、ティポはこのままで充分可愛いです!」
「アルヴィン君の見る目なしー!フシアナー!」
「うっせぇ、綿抜くぞ」
ティポを捕まえてアルヴィンがティポを引き伸ばす。
二日連続の引き伸ばしは流石に布がだるだるになるんじゃないかと名無しは思ったが、アルヴィンの手から開放されたティポをみるとそうでもなかった。
いったいどんな素材でできているのだろう。
そんな風にじゃれていると、ミラがそろそろ出たいと一行を急かす。
ミラの言葉をきっかけに、それぞれ街に出掛けた。
結局ミラ達についていくことにした名無しはレイアと話ながら石像の方に向かう。
「名無しっていくつなの?私15」
「ふあー、若いなー…私は25、いいなー15歳」
「え、全然歳上だったの!びっくりー、ミラと変わらないと思った」
「ふふ、ありがとうお世辞でも嬉しいよ」
「俺でもわかったぐらいだからな、お前全然変わってねーし」
「ちょっと、子供っぽいって言いたいの?」
「いーや、充分大人だとは思ってるけど」
わざとらしくアルヴィンが視線を下げて言うとレイアがそれにきがつく。
当の名無しは気がついていない。
「あ、アルヴィン君今のはセクハラだよ!」
「おいおい、誤解だよ誤解、ミラ様と同じぐらいっていう例えだよ」
「それさらにアウトー!完全にアウトー!名無し、気を付けた方がいいよ!」
「えーっと、なんのこと?」
「な、レイアの勘違いだ」
「むむむむー、名無し!私が守ってあげるからねっ」
「へ?う、うん、ありがとう?」
名無しが完全に話のなかで置いてきぼりを食らいながらもとりあえず返事をした。
石像の前までつくと、ミラがそれより先にすすんだためこれを見るのではなかったのかと石像を指差しアルヴィンがきいた。
ミラは気にするなと一言だけいって辺りを見回した。
すると、奥からやって来た人物に気がつきレイアが手をふった。
「イスラさん!」
「怪我の具合はいいようね」
「はい、イスラさんのお陰です」
レイアの顔を見て満足そうに微笑むとイスラは名無しとアルヴィンの存在に気がついた。
イスラがしばらくアルヴィンを見ていると、彼がどうかしたのかとレイアが聞いた。
当然、イスラが話をごまかそうとしたが意外にもアルヴィンがその件について自分から話だした。
イスラを先生と呼ぶ様子から、利用しているにしても感謝はしているのだということが伺えた。
母親を看てもらっている旨を話すとミラとレイアが驚いた。
「お前の母親を?この街にいるのか?」
「ああ、だからアルヴィン君この街に詳しかったんだね」
「ちょっと具合が悪くてな、父親も兄弟もいないから、俺がいない間先生にお願いしてるんだ」
ミラが自分のことを話すアルヴィンをめずらしがったがその反応に対しアルヴィンは気のせいだといい、ただ母親を治してやり故郷にかえしたいと言った。
レイアがアルヴィンの母親の故郷について聞いてきた。
レイアに聞かれアルヴィンが空を遠く見上げていった。
「…めちゃくちゃな」
「そうか、手を貸せることがあればいってくれて構わないぞ」
ミラの言葉に、アルヴィンがどう答えていいのかわからずとりあえずの返事で、あればな、と答えた。
その言葉に素直に頼り、ミラにできることがあると言うのならばそれは決まっていた答えしかなかった。
それを答えるわけにもいかず、名無しも後ろ手で黙っていた。
「そういえば、名無し。お前はアルヴィンの昔馴染みだろ?何か故郷についてしらないのか?」
「え、ううん、残念ながら」
「へー、アルヴィン君と名無しって幼馴染みだったんだ」
「うん、っていっても昔二三年一緒にいたぐらいだけど」
「そーなんだー!ってことは感動の再会ぃ!みたいなので会ったの?」
「え、えっと」
名無しが回答に困っていると、遠くからユルゲンスがやって来た。
イスラがユルゲンスに駆け寄り話しかけると、ミラ達がイスラと一緒にいたのを疑問に思いユルゲンスが知り合いだったのかと聞いてきた。
レイアが肯定し、ユルゲンスとイスラの関係について聞き返す。
二人がしばらく見つめ会うと、ユルゲンスが彼女は婚約者だと言う。
レイアが二人に祝福の言葉を贈ると、照れ臭そうにユルゲンスは例を言う。
そして、ミラがワンテンポ遅れて反応を見せた。
「おお、あれか。結婚と言うやつだな。お前たちもネズミのようにたくさん子供を作るのだぞ」
「ミ、ミラ…」
「くくく…っ」
「ミラ、その発言には問題があると思うんだけど」
「なにがおかしい?」
ミラが理解をせずにいると、闘技場の鐘が街に響いた。
大会が始まる合図であるため、一行は会場に向かおうとしたが、イスラは仕事があるといってその場をあとにした。
ミラたちもユルゲンスにつれられ闘技場に向かった。
「ネズミって…ミラとんでもないこと言うなぁ…」
「くくく、流石に驚いたな」
「ミラってほんとに抜けてるところあるよね、知らないのかな…そんなことはないと思うんだけど…」
「その口振りだと名無しには知ってるって様子だな」
「な!知らないわけないじゃな…っあ、変なこと言わせないでよ!」
「お前がはじめに言ったんだろ!」
「二人とも、じゃれてないで着いたぞ」
ミラに怒られ、名無しは大人しく口を閉じた。
闘技場につくと、既にジュード達が到着しておりレイアがイスラとユルゲンスの事をジュードに話した。
母親の話しになるとジュードが心配そうにアルヴィンを見るも、アルヴィンが適当に受け答えた。
ミラがエリーゼに話しかけ、何かわかったかどうかを聞き、それに対しあまり収穫はなかったとジュードがこたえた。
なんのことかわからず、名無しがミラに聞くとエリーゼがシャン・ドゥの街並みに見覚えがあると言うことで、両親についてなにかないか街を見ていたと言うことだった。
各々で話をしていると大会がはじまるということで、エントリー外の名無しは観客席に行くためジュードたちとその場で別れることになる。
「よぉーっし燃えてきた!」
「レイア、無理しないでね?」
「もうジュードお節介!」
「ほほほ、爺も頑張りますか」
「私も、頑張ります!」
「エリーとボクの最強コンビでラクショーだぞぉ」
「熱いねぇ…おたくら」
「行くぞお前たち」
「皆、頑張ってね!」
一同を見送り名無しは客席に移動した。
「よろしくレイアちゃん、名無しよ」
「うん!」
闘技場に向かいながら一同は再会の挨拶を適当にすませた。
久々に会うことができ名無しは僅かな会話に心を踊らせた。
初対面である名無しとレイアはお互いに自己紹介を済ませる。
元気よくレイアが名無しに話しかけるため、お互いを知るのには短時間で十分なほどだった。
たくさんの話題を話しているうちに、レイアが名無しに新しく話題をふる。
「アルヴィン君の手紙の相手って名無しなの?」
「手紙?また突発な質問ね」
「女の人っていってたから、そうなのかって」
「まさか、誰から聞いたのそんなの」
「ジュードから!なんだー、てっきり名無しがアルヴィン君の恋人だと思っちゃったよー、つまんないの」
「レイア、そんなこと言ったら失礼だよ」
「ジュードこそ誰だか気にならないの?」
「僕は別に…」
「ふふ、女の子の方がこういう話は好きだものね」
久々に賑やかな会話ができ名無しはとても楽しかった。
ジュードとレイアがなにか言い合いを始めた。
レイアはジュードの幼馴染みだそうだ。
あの時一緒に旅をしていた時に見たジュードよりもレイアと話しているジュードはどこか雰囲気が違い、年齢相当な態度のように見え名無しには微笑ましかった。
さて、再会して気になるところはやはりミラの足のことである。
そんなにも早く治るものなのか、そして治っていたとしても容態はどうなのか名無しがミラに聞くと、ジュードの父親に医療ジンテクスという治療を施してもらったため早期の回復が可能になったということだった。
ミラの右足を見ると、そこには蒼い石が装置と一緒に足に嵌め込まれていた。
「よかった…ミラがまた歩けるようになって」
「うむ、ジュードの父親には感謝せねばな、ところで名無し。ここで何をしていたんだ?イル・ファンの方へ向かおうとしたのでは」
「それなんだけど、やっぱり無理みたいで…それでひょんなことでシャン・ドゥにって」
「先程の様子ですと、はやり名無しさんもをワイバーンを?」
「そういえば、さっきの話だと顔見知りみたいだったよね」
船着き場につき、船に乗り込むと名無しの話に、目の前に座ったローエンとジュードが加わる。
「始めにお願いしたときに大会が終わるまで待てないかって言われちゃって完全な足止め状態だったの」
「成る程…、では出場できる者がいなかったためそれまでに手が回らなかったのだろうな」
「んーなんで私の時には大会の代行の話し出してくれなかったのかしら」
「名無し弱そうだもんねぇ~」
「どういう意味よティポ」
横からティポに口を挟まれ名無しがティポを捕まえてぐにぐにと揉む。
もうひとつの船に乗っていたエリーゼが遠くから慌てて止めようとするが、名無しはじゃれたいだけなのでその手を止めようとしなかった。
散々揉んだあとに、ティポの形を整え闘技場につくなり名無しはエリーゼにティポを返すと後ろからアルヴィンに話しかけられ少し驚く。
「お前、楽しそうだな」
「そう?ふふ、そうかも皆にあえて嬉しいし、レイアちゃんと仲良くなれたし」
「ふーん」
「なにつまらない顔してるよ」
「そうか?いつも通り整った顔してると思うけど」
「でたそのキャラ…、でも、それはそうね」
「な…っ」
「狼狽えないでよ、恥ずかしい…」
「恥ずかしがるならさらっというなよ」
「だったら最初から言わないで」
「なになに?どうしたの?」
名無しとアルヴィンが言い合いを始めそうになった時、レイアが二人の会話に興味をもち交ざろうとしたがアルヴィンがあしらったため、レイアはほほを膨らます。
そんなレイアを見て名無しがなんでもないと答えると、レイアは何を期待していたのかつまらなさそうに話から外れる。
一行は闘技場の中で一人の男をみつけ話しかけた。
ユルゲンスというその男に話をし、準備を済ませ一行はすぐに予選に参加することにした。
実戦を行う会場に入ると、レイアが嬉しそうに興奮し出した。
体育会系なのかお祭り娘なのか、とにかく元気な子であると改めて名無しは思った。
ユルゲンス達は客席から見るということで、名無しもそちらに同行しようとしたため、ティポが疑問に思い話しかけた。
「あれ?名無しは一緒に戦わないの?」
「え、私もそっちでよかったの…?」
「名無し、一緒に戦いましょう」
「エリーゼの気持ちは嬉しいけど…あの、ユルゲンスさん」
「すまない、貴女も戦うとは思っていなくて先程エントリーした時に名前を入れていないんだ」
「だって、残念だけど応援組ね」
「では、名無しさんの応援が無駄にならないよう私本気を出さねばなりませんね」
「よくいうよ、爺さん」
「ほほほ、アルヴィンさんもよろしくお願いします」
「頑張ろうね、アルヴィン」
「優等生にまで言われちゃね」
「それでは、私たちは客席で見させてもらうよ」
ユルゲンス達に連れられ名無しも観客席から皆の活躍を見守ることにした。
ミラたちの実力はそれなりに知っているので、魔物などに手を煩わせる事はないだろう。
想定していた通りに、ジュード達は難なく予選をこなした。
ユルゲンスが皆を称賛すると、ティポが胸を張って当たり前だと言うと、ユルゲンスが愉快に笑った。
本選は明日だということで、明日に備えてユルゲンス達がミラたちに宿をとってくれたらしく、一行はその行為に甘え宿に向かうことにした。
宿につき各々で休息をとる。
名無しの分の宿までしっかりとってあり、名無しはどうしようか考えイスラにこの事をつたえようと思い一度外に行こうとすると、ミラにどこへ行くのか聞かれた。
「名無し、どこに行くのだ」
「こっちで今お世話になってる人がいて、今日ほこっちに泊まるからって言おうと思って」
「そうか、では戻ってきたら話がしたい」
「ん、ちょっと待っててね」
部屋をあとにし名無しはイスラの家に向かった。
イスラの家につくと早速イスラが何かあったのか聞いてきた。
事情を説明し、向こうの宿にいると言うことを話すとイスラの表情が少し曇った。
「今日、アルに会ったわ」
「イスラさんのところにも行ったんですね」
「ええ…それで、またしばらく私に看てもらいたいって…」
「はじめて聞きました…それ…」
「ねぇお願い、あなた自分でやりたいのよね、彼に言ってよあなたがやるって」
「出来るだけ、そうなるよう話してみますね」
「ええ…頼んだわ…、宿に戻るのよね、ごめんなさい引き留めて」
「いえ、それじゃあおやすみなさい」
イスラの家を後にして名無しはミラと話をするために宿に急いで戻った。
ミラはロビーのソファで待っていてくれたようで、中に入ると直ぐに話をしたい様子で場所を変えようと提案された。
ミラと二人で話すのだから、大体の話題は頭に浮かんでいたため、その提案を快く名無しは受け入れ適当な場所に移動した。
「それで話って?」
「どうということはない、一人でいる間アルクノアはどうだった」
「それが不思議なことにぱったりやんでるの、あんなに警戒したのになんでかなぁ」
「やはりか、名無し、お前とアルヴィンは昔馴染みだといっていたな」
「え、うん、…その口振りだとなんとなく言いたいことわかるかも」
「なら話は早い、名無し、お前の身を売る可能性があるのは奴だ」
ミラなりに気を遣っていたようだったが、名無しが確信に触れると躊躇を捨て率直に話を出してきた。
ミラのこういった真っ直ぐなところは話をする側としても安心感がある。
「私もそう思ってたけど、多分違うと思うな」
「何故そう言いきれる」
「ミラ達の時もそうだったけど、まどろっこしすぎるのよね。逃げようと思えば簡単に逃げられる状況だし、そうだと気がついたら怪しい発言ばっかりだもの」
「何か知っているのか?」
「残念だけどあまり、ミラの察する通りアルクノアに関係してることぐらいよ」
「そうか、名無しには悪いが何かあれば私は奴に容赦をするつもりなないぞ」
「ん、わかってる。その方がいいとおもってるし私には出来ないことだから、…ねぇミラ。一つお願いしてもいいかな」
「私にできることなら聞いてやろう、なんだ」
「アルのこと、信じてあげて」
「それは難しいな、捨て置けないところがありすぎる」
「アル、自分のこと話さないでしょ?だから、その時がきたら信じてあげてほしいの」
名無しがミラの目を真っ直ぐ見ていう。
ミラはなにも答えず、名無しの目を見つめ返すだけだったが、しばらくするとミラの中で返事が決まったらしく凛とした声が返ってきた。
「わかった、だが先程も言ったように何かあれば容赦はない、いいな?」
「うん、ありがとう」
「名無しも、ジュードと一緒で人のことが心配なのだな、人間とは不思議なものだ」
「突き詰めちゃえば自分のことなんだけどね、ミラだって皆のために頑張ってるじゃない」
「私のは使命だからな、やらなければならないのだ」
「その使命だって、何かのためを想わないと出来ないことじゃない?規模は違うけど想いは一緒なんじゃないかな」
「それもまた、人間らしい答えだな…くっ」
話をしていると、ミラが足の痛みを訴えた。
医療ジンテクスは運動神経に直接的に精霊術を施すもので、歩くという行為に使う神経を精霊術にまかせるようなものなのだ。
聞く限り天の恵みのような物だが治療の際、激しい痛みが生じるリスクもある。
「ミラ?足痛むの?」
「すまない、どうということはないのだが」
「どうせラコルムから歩き通しでさっき戦ったんでしょ?風も冷たくなったしもう戻りましょう」
「そうだな、では明日に備えるとしよう」
名無しはミラと一緒に宿屋に戻ると、先程イスラに言われたことをアルヴィンにいつ尋ねるか考えた。
今のタイミングで外に出てはミラに怪しまれるだろう、イスラに少し申し訳なさを感じつつも朝早く起きたときに話せばよいだろうと名無しは眠りについた。
***
翌朝、名無しはシャン・ドゥでの日の出を見るために街の真ん中にいた。
あの日日の出がみえると教えてもらってから日課のように早朝橋のところに通っている。
適当な朝食と飲み物を口にしながら今日も日の出を見ていた。
「鶏起こしの名無し、とかそのうちあだ名つくんじゃねーの?」
「それより早く鶏が起きてるから問題ないわね、おはようアル」
「おう、よく起きるなこんな時間に」
「あなたもね、おばさまのとこ行くの?」
「いや、名無しが出てくの見えたからな」
「…っ、そう、…。あ、食べる?」
「さんきゅ」
名無しは手に持っていた朝食を半分にしアルヴィンに渡した。
イラートで会ったときもこんなことがあったと思い耽っているとアルヴィンが同じことを言い、そうね、と一言名無しは返した。
名無しは、昨晩のイスラと話したことをアルヴィンに聞いた。
アルヴィンは、あくまでミラ達がこの町にいる間は名無しもミラといることの方が多くなるだろう考えその間だけもう一度頼んだのだといった。
イスラからそのようなことまでは聞いてないと言ったが、イスラにそこまで話す必要はないとアルヴィンはこたえた。
「名無し、イスラが可哀想とか思ってるのか?」
「可哀想っていうよりは、どうにかならないかなって、おばさまの事なら私見れるし…」
「お前の分俺が持つ代わりにって約束か…けど、そりゃ俺の分じゃない、イスラの分だ、とにかくミラ達に怪しまれないための一時処理だよ」
「うーん…」
「納得いかないって感じだな」
「何か隠してない?そんな感じ」
「なんもねーよ」
「そう?…んっし、そろそろ戻らないとミラ達に怪しまれちゃうかなー」
手に持っていた食事を平らげ名無しは背伸びをした。
アルヴィンもそれにつられて名無しから受け取ったものを口に放り入れた。
宿に戻る道で、何もないまま宙に揺れるアルヴィンの手を見て名無しがそれを掴んだ。
「…なっ、どうしたんだよ」
「皆の前じゃできないから、今のうちに」
「照れるならやるなっていってるだろ…」
「放したほうがいい?」
「いいよ、このままで」
そっぽを向いて言うアルヴィンの答えに名無しが笑顔になる。
宿につくまでのほんの数分のこの時間に名無しは幸せを感じた。
宿につく前に手を離し、二人は何事もないよう取り繕い中に入った。
ロビーにはまだ誰もいなく、また後でと挨拶をしそれぞれの部屋に戻ることにした。
部屋に戻ると、ミラが目を覚ましたところのようで挨拶をする。
どこかへいっていたのか聞かれたため、素直に日の出を見に行っていたと答えた。
ミラに続いてレイアとエリーゼも起き、準備をすまし部屋を出ると、丁度男性陣と合流できたため全員でロビーに向かった。
ロビーに下りるとそこにはユルゲンス達がミラ達を待っていた。
ユルゲンス達に大会の流れを説明されると、開始の鐘まで時間があることがわかり早速ミラが時間を使いたいと動こうとする。
アルヴィンとレイアはミラに同行し、ジュード、ローエン、エリーゼは町の観光をするということでそれぞれ動くことにした。
どちらにもついていない名無しに気がつきレイアが一緒に行こうと誘った。
「ねぇ名無し、もっとお話ししたいから一緒に行こうよ」
「私は、えっと」
レティシャの様子を見に行こうと思っていた名無しは少し答えに迷った。
アルヴィンの方を少し見ると、アルヴィンが察してくれたらしく口を開く。
「いいんじゃねーの?俺的には華が多い方が嬉しいしな」
「アルヴィン君が名無しをナンパしてるーナンパマンー!」
「嫉妬すんなよティポ、お前が可愛い女の子だったら混ぜてやるよ」
「ティ、ティポはこのままで充分可愛いです!」
「アルヴィン君の見る目なしー!フシアナー!」
「うっせぇ、綿抜くぞ」
ティポを捕まえてアルヴィンがティポを引き伸ばす。
二日連続の引き伸ばしは流石に布がだるだるになるんじゃないかと名無しは思ったが、アルヴィンの手から開放されたティポをみるとそうでもなかった。
いったいどんな素材でできているのだろう。
そんな風にじゃれていると、ミラがそろそろ出たいと一行を急かす。
ミラの言葉をきっかけに、それぞれ街に出掛けた。
結局ミラ達についていくことにした名無しはレイアと話ながら石像の方に向かう。
「名無しっていくつなの?私15」
「ふあー、若いなー…私は25、いいなー15歳」
「え、全然歳上だったの!びっくりー、ミラと変わらないと思った」
「ふふ、ありがとうお世辞でも嬉しいよ」
「俺でもわかったぐらいだからな、お前全然変わってねーし」
「ちょっと、子供っぽいって言いたいの?」
「いーや、充分大人だとは思ってるけど」
わざとらしくアルヴィンが視線を下げて言うとレイアがそれにきがつく。
当の名無しは気がついていない。
「あ、アルヴィン君今のはセクハラだよ!」
「おいおい、誤解だよ誤解、ミラ様と同じぐらいっていう例えだよ」
「それさらにアウトー!完全にアウトー!名無し、気を付けた方がいいよ!」
「えーっと、なんのこと?」
「な、レイアの勘違いだ」
「むむむむー、名無し!私が守ってあげるからねっ」
「へ?う、うん、ありがとう?」
名無しが完全に話のなかで置いてきぼりを食らいながらもとりあえず返事をした。
石像の前までつくと、ミラがそれより先にすすんだためこれを見るのではなかったのかと石像を指差しアルヴィンがきいた。
ミラは気にするなと一言だけいって辺りを見回した。
すると、奥からやって来た人物に気がつきレイアが手をふった。
「イスラさん!」
「怪我の具合はいいようね」
「はい、イスラさんのお陰です」
レイアの顔を見て満足そうに微笑むとイスラは名無しとアルヴィンの存在に気がついた。
イスラがしばらくアルヴィンを見ていると、彼がどうかしたのかとレイアが聞いた。
当然、イスラが話をごまかそうとしたが意外にもアルヴィンがその件について自分から話だした。
イスラを先生と呼ぶ様子から、利用しているにしても感謝はしているのだということが伺えた。
母親を看てもらっている旨を話すとミラとレイアが驚いた。
「お前の母親を?この街にいるのか?」
「ああ、だからアルヴィン君この街に詳しかったんだね」
「ちょっと具合が悪くてな、父親も兄弟もいないから、俺がいない間先生にお願いしてるんだ」
ミラが自分のことを話すアルヴィンをめずらしがったがその反応に対しアルヴィンは気のせいだといい、ただ母親を治してやり故郷にかえしたいと言った。
レイアがアルヴィンの母親の故郷について聞いてきた。
レイアに聞かれアルヴィンが空を遠く見上げていった。
「…めちゃくちゃな」
「そうか、手を貸せることがあればいってくれて構わないぞ」
ミラの言葉に、アルヴィンがどう答えていいのかわからずとりあえずの返事で、あればな、と答えた。
その言葉に素直に頼り、ミラにできることがあると言うのならばそれは決まっていた答えしかなかった。
それを答えるわけにもいかず、名無しも後ろ手で黙っていた。
「そういえば、名無し。お前はアルヴィンの昔馴染みだろ?何か故郷についてしらないのか?」
「え、ううん、残念ながら」
「へー、アルヴィン君と名無しって幼馴染みだったんだ」
「うん、っていっても昔二三年一緒にいたぐらいだけど」
「そーなんだー!ってことは感動の再会ぃ!みたいなので会ったの?」
「え、えっと」
名無しが回答に困っていると、遠くからユルゲンスがやって来た。
イスラがユルゲンスに駆け寄り話しかけると、ミラ達がイスラと一緒にいたのを疑問に思いユルゲンスが知り合いだったのかと聞いてきた。
レイアが肯定し、ユルゲンスとイスラの関係について聞き返す。
二人がしばらく見つめ会うと、ユルゲンスが彼女は婚約者だと言う。
レイアが二人に祝福の言葉を贈ると、照れ臭そうにユルゲンスは例を言う。
そして、ミラがワンテンポ遅れて反応を見せた。
「おお、あれか。結婚と言うやつだな。お前たちもネズミのようにたくさん子供を作るのだぞ」
「ミ、ミラ…」
「くくく…っ」
「ミラ、その発言には問題があると思うんだけど」
「なにがおかしい?」
ミラが理解をせずにいると、闘技場の鐘が街に響いた。
大会が始まる合図であるため、一行は会場に向かおうとしたが、イスラは仕事があるといってその場をあとにした。
ミラたちもユルゲンスにつれられ闘技場に向かった。
「ネズミって…ミラとんでもないこと言うなぁ…」
「くくく、流石に驚いたな」
「ミラってほんとに抜けてるところあるよね、知らないのかな…そんなことはないと思うんだけど…」
「その口振りだと名無しには知ってるって様子だな」
「な!知らないわけないじゃな…っあ、変なこと言わせないでよ!」
「お前がはじめに言ったんだろ!」
「二人とも、じゃれてないで着いたぞ」
ミラに怒られ、名無しは大人しく口を閉じた。
闘技場につくと、既にジュード達が到着しておりレイアがイスラとユルゲンスの事をジュードに話した。
母親の話しになるとジュードが心配そうにアルヴィンを見るも、アルヴィンが適当に受け答えた。
ミラがエリーゼに話しかけ、何かわかったかどうかを聞き、それに対しあまり収穫はなかったとジュードがこたえた。
なんのことかわからず、名無しがミラに聞くとエリーゼがシャン・ドゥの街並みに見覚えがあると言うことで、両親についてなにかないか街を見ていたと言うことだった。
各々で話をしていると大会がはじまるということで、エントリー外の名無しは観客席に行くためジュードたちとその場で別れることになる。
「よぉーっし燃えてきた!」
「レイア、無理しないでね?」
「もうジュードお節介!」
「ほほほ、爺も頑張りますか」
「私も、頑張ります!」
「エリーとボクの最強コンビでラクショーだぞぉ」
「熱いねぇ…おたくら」
「行くぞお前たち」
「皆、頑張ってね!」
一同を見送り名無しは客席に移動した。