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――思えば、そんな予兆はあった気がする。
そんなことを考えながら、目の前のパンケーキと対峙していた。
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朝、カーテンを開けると厚ぼったい灰色の雲があたりを覆っていた。
ツキンと痛む頭を押さえながら、下へ降りると既に食事はできていた。
茹で卵と食パンと牛乳。
それをなんとか胃に収め、頭痛薬を2錠口へ放り込んだ。
そして、学校へ行き、授業へ向かい――そのときまで薬の効き目はほぼ無いに等しかった。
そのときまでは効き目が薄い薬だったのか、と首をかしげる程度だった。
疑問が確信に変わったのは5限目からだった。
胃がどうしようもなくムカムカするし、視界もぐるぐるして授業どころじゃなかった。
誤魔化すかのように机に突伏したが、いまだ回り続ける視界に苛立ちを募らせてた。
***
ようやく授業が終わり、冬弥たちと合流すると不意に冬弥が「今日はセカイで練習しよう」と言い出した。
――たしかに、この雨だしセカイで練習したほうがいいかもな、と窓越しからでもわかる雨の具合をみて頷いた。
セカイへ移動し、カフェに向かうと、パン、と独特の破裂音と共に煙ったい匂いがした。
驚いて目を瞑ってしまったから、目を開けるとクラッカーを持ったバーチャルシンガーと、こはねがいた。
「……っ、は?」
なんで、とかいろいろなことがよぎっては消えた。
「お誕生日、おめでとう!」
そして合わさった声で、今日が自分の誕生日だとようやく気づいた。
「そうか、今日誕生日か」
ぽつりとこぼすと「まさかあんた忘れてたの?」とニヤニヤしながら杏が言った。
音とクラッカーに驚きすぎて周囲を見れていなかったがよくよく見ると奥には大量のパンケーキがあった。
パンケーキの上にはこれでもかという程ホイップクリームが載せられていた。
視線に気づいたのか冬弥が恥ずかしそうについ張り切って作りすぎてしまったんだ、と笑った。
***
口に運ぶと甘ったるい風味が香った。
いつもだったらうまいと思うだろう。
だが、どうしても甘ったるい匂いと味が鼻につくだけだった。
なんとか食い切ったとき、冬弥が嬉しそうな顔をしていたのがなによりの救いで安堵だった。
――よかった、気づかれていない。
***
帰宅後、すぐ胃の奥がぐるぐると逆流するような感覚に、急いでトイレへ駆け込んだ。
「――ッえっ」
喉の奥が焼けるように熱くて、視界が滲んだ。
どうしようとか、冬弥に申し訳ないとか色々思う前に口の中が妙に気持ちの悪かった。
鏡の前で口をゆすいだとき、まだ甘ったるい匂いが残っていた。
微かに絵名の話し声が上の階から聞こえていた。
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