このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

幕間 風間進

 入隊式で倒れた出水公平という少年。トリオンが非常に多く、即戦力として期待されていた子だ。当の彼が倒れたと言うことで、会議が踊ったのはまだ数時間前のことだった。
 その出水が進の弟の──蒼也の後輩ということが発覚し、これ幸いと様子を見るようにと進が役割を押し付けられたのだった。
 ちなみに後輩と言っても学校が同じというわけでなく、小学生の頃に公園で遊んでいたらしい。その年下の友人と言う存在は進にとって初耳だったのだが、そういえば蒼也が急にある時期から一人で遊びに行くようになったな、と内心納得していたのだ。玉狛にある基地の近くに来ていたのも、もしかしたらその遊びの一環だったのかもしれない、と今になると思う。
 幼い頃から蒼也は同年代より大人びていて、進でさえもたまに年上と会話しているような気分になる程だった。何かを心配しているような、何かを憂いているような、遠い目をすることがあった。故に友人が出来にくいのか話を聞くことが少なかった弟に、後輩。進が喜んだのも無理はない。
 対近界民戦闘訓練を終え、軽くランク戦の説明をする。本来なら施設の案内等をする予定だったが、倒れた今日はもう帰って安静にしておけと、付き添いに蒼也をつけて出水を帰らせたのだ。
 二人の後ろ姿を見送る進の横に、進の師匠が現れた。

「んで、例の『弟の後輩』くんってのはどうだったんだ?」
「……林藤さん」

 進は、二人に振っていた手を下ろした。

「……まぁ、関わった感じ普通……というより普通過ぎる、ってのが印象でしたね。でも──戦闘訓練を嫌がっていた割にはトリオン兵に驚きもしなかったし……弧月を振るう姿は初心者っぽいのに、所々太刀筋がしっかりしている」

 加えて戦闘訓練では1分を切ったことを伝えれば、林藤が驚いた顔をした。ぽろりと咥えていた煙草が落ちる。

「……こりゃ迅の予知も実際に起きるか?」

 その落ちた煙草を拾い上げ師匠に渡した進は、林藤その煙草を灰皿に入れる横で溜息混じりに応じた。

「まだ出水くんが分岐点とは限りませんけどね……けれど俺の印象的にはその一端を握っている可能性はあるかと。……蒼也も含めて」
「ったくお前の身内だしな、近界民ってわけじゃないんだろうが……」

 からかうような林藤の言葉に、進は苦笑いを返す。

「……まあ予知のせいで、何気ない行動を懐疑的に見てしまっているだけかもしれないですし、決めつけは良くないですが……」
「だがなぁ、未来が変わったのは事実だ。それも迅が入隊式を見て、だ。」

 ︎︎林藤の目が、ふと真剣な色を帯びた。迅が見た未来。ここ最近、未来は頻繁に、大きく変わり続けている。それも、より最善の方向へ。

「……迅のことだから嘘ではないんでしょうが……でもあの出水くんが謎の光る弾を操ってたってのはまだ信じられない、というのが本音ですかね」
「お前の弟も変形するブレードを使ってるらしいじゃん?……それは迅もだが」
「それを言ったら小南は斧……斧か……」

 進が頭を抱えた。慕ってくれる年下の少女が斧を振り回す姿を想像した。忍田2号にだけはならないように切実に願う。

「ま、本当にそんな未来になるならエンジニアが頑張ってくれるさ」
「丸投げだ……ヘルプに回されても知らないですからね」

 飄々と笑う林藤を、じとりと進は見つめた。
1/1ページ
スキ