あまい ものは だいじ ~アズールポーチ
悪霊蠢く無情の地…。無限冥王獄は亡者の園。欲望に凝り固まり心の自由を失った者が、魂ごと縛り付けられているゾーンだ。心に迷いを持つ者を引きずり込む魔性の地でもあり、負の力の吹き溜まりなわけなのだが、亡者達も普段は静かに漂っているだけなので割と平穏…というより、何もないが為に閑静なゾーンと言える。
肉体を持つ者は、通常は立ち入る事はありえない地なのだが、自由な浮幽霊特性を持つ者となると話しは別だった。
「技のデパート」の異名を持つ力士「百貨関」。若くして無念を抱き亡くなった彼の魂を核に、生前純粋に格闘技好きだった者達の魂が複数寄り集って誕生した複合霊「猫魂」。まだ見ぬ究極の「技」を極めるべく、彼(彼女?)はあらゆるゾーンを行き来していた。
限りなく、肉体に近い濃い魂の集まりである彼は、現世では「魔守」に属し、悪魔属「とっつぁんです」のフーリガンでもある。しかし実力者好きで気まぐれにゃんこな彼は、今や冥王獄の力の頂点に立ったアズールに心酔していた。
そしてアズールに現世に気になる存在があると知ると、冥王獄に属する亡者達のデータを全て調べ上げた猫魂は独断で、主が意中の相手との一時を過ごせる機会を設けようと、意図的に亡者らの魂の不法滞在を促していた。
実は今回、2月14日の訪問も、猫の仕事のおかげだった。この日にアズールが現世に赴けるようにと、数日前に親族の思いに応えて現世へ飛び立つ亡者の魂のかけらに彼が「ゆっくりして来てねv」とお願いした結果なのだった。
もうすぐ現世の日が昇る。冥王獄に帰ってくるアズールがどんな様子であるか、猫魂は楽しみで仕方なく、うずうず、わくわく、にゃふふ~ん♪な気持ちで待っていた。
そこへ、アズールの魂の一部を受け継ぎ「心産みの神」へ神化した、かつての幻次界の王子虹天使ダーツ…ダーツインヴォリアが訪れた。
命との関わりを禁じられた神となってしまった彼だが、ここの主が命の枠から外れているのをいい事に、わりとちょくちょく遊びに来ており、猫魂とも良い関係を築いていた。
「ずいぶん、ご機嫌なんですね、猫魂。」
浮かれている猫魂を見て、ダーツもほんわか笑みを浮かべながら声をかけた。
「あ~。ダーツさま~。いらっしゃいなのニャv
あのね、昨日、現世はバレンタインデーだったのニャ。アズールさま、きっと姫(ポーチの事)からチョコ貰って来るのニャ。きっとすっごく喜ぶと思うのニャ~vvv」
猫魂の中に一人だけいる女性の魂が、この乙女趣味でろまんちっくなイベントに萌えあがっているらしい。
「ね、ね?ダーツさまも、そう思うのニャ?」
ニコニコと訊ねる猫の期待を裏切る、微妙な戸惑い顔のダーツがそこにいた。
「にゃ??何か、変…??」
不安を覚えた猫がダーツにつめよる。
「アズール様…。」
遠慮がちに、ダーツが口を開いた。
「バレンタインの行事について、御存知でしょうか……?」
一瞬、二人の間を雪混じりの風が吹きぬけた。
「……。」
「………。」
はっきり言って、めちゃめちゃありえる事だった。
でも、いや、まさか、そんな…かなり天然な貴方(ダーツ)が知っているのに!(暴言)と、猫は暫く困惑していたが、現世から戻って来たアズールを迎えて、どうでも良くなった。
アズールが、姫がお土産に持たせてくれた焼き菓子を、ダーツと猫におすそ分けしてくれてたから。昨日の出来事を、話して聞かせてくれたから。
結果は、やはりアズールは、この日のチョコレートの意味を知らない様子なのだった。が、存外に満足している様なので、それはそれで、個人的にかな~りもどかしくはあるが、これ以上何も言わなくても良いだろうという結論に至った。
ただ一つ気の毒に思うのは、そんな彼の為にケーキを焼いた姫の心情で…。
『姫は、きっとアズールさまがお好きなのニャ。姫のためにも、もっとお二人一緒に過ごせるお時間を差し上げるのニャ☆』
大好きなアズールと、その姫の幸せを切に願う暴想猫は、亡者さん達の里帰りスケジュール管理の徹底を、心中硬く決意した。
そんな猫の忠義(?)を、アズールは、全く全然知る由もないのだった…。
そして、それから丁度一月後。
アズールは再びダーツと猫にお菓子のお土産をおすそ分けしてくれた。
それは、手作りのマシュマロ。どうやらポーチの手ほどきながら、アズールが卵白を泡立ててメレンゲを作ったらしい。
たまごって不思議なモノだな~。等と、珍しく楽しそうに感想を述べるアズールに、猫は顔には出さずに、じりじりいらだっていた。
『お気の毒に…!ホワイトデーも、これではいわば自給自足!!姫、おいたわしニャ~!!』
二人の逢瀬(?)の機会をセッティングはしても、口は出さない忠義な猫は回廊次元の狭間で人知れず涙するにとどめるのだった。
でも実は、ポーチはポーチで、そんなやりとりで結構幸せ感じちゃってるのだった。
…端から見たら、もしかして、それはそれで涙を誘う事態なのかもしれないが…。
いまだ砂糖菓子の似合う、二人の前途を勝手に憂い、今日も猫魂は亡者さん達に現世での長居をお願いするのだった。
おしまい
☆★☆★☆★☆★☆★☆
あとがき的トーク。
いかがでしたでしょうか?
「猫魂」の細かい設定は、シール裏書にない部分は全て私の捏造です。鵜呑みにしないで下さいネ☆
この猫はむしろ私の分身かと…(苦笑)。
「開花」シリーズは、ポーチに、タケルより好条件の恋人を作ってあげたくて生まれた、最早海王寺オリジナルな2000物語です(てか、同人作品はおおよそ、そういう物だと思いますけど)。
私、タケルvコーラルだったので~。アニメ見ている当初からアズールvポーチだったのですよ☆
以前ロッ○のサイトで公表されていた小説では、ポーチは別の人と華燭の典を迎えてしまいましたが、同人作品ですから、我が道爆想の方向で行かせて戴きます☆
ポーチの結婚願望は、「お仕えする方に嫁ぐこと」の様に見えていたので、天使様か、悪魔様じゃなきゃ、私は納得できないのです。アズールは属性なくなってる様ですが、存在として格上なヘッドだから問題ないのです。
(むしろ生死不明の方が余程問題なんだけど、そこはほら、解釈ひとつでどうとでもなるので。海王寺的にはアズールは某三只眼漫画の不死人なのよ☆)
読んでくださって、ありがとうございました☆
肉体を持つ者は、通常は立ち入る事はありえない地なのだが、自由な浮幽霊特性を持つ者となると話しは別だった。
「技のデパート」の異名を持つ力士「百貨関」。若くして無念を抱き亡くなった彼の魂を核に、生前純粋に格闘技好きだった者達の魂が複数寄り集って誕生した複合霊「猫魂」。まだ見ぬ究極の「技」を極めるべく、彼(彼女?)はあらゆるゾーンを行き来していた。
限りなく、肉体に近い濃い魂の集まりである彼は、現世では「魔守」に属し、悪魔属「とっつぁんです」のフーリガンでもある。しかし実力者好きで気まぐれにゃんこな彼は、今や冥王獄の力の頂点に立ったアズールに心酔していた。
そしてアズールに現世に気になる存在があると知ると、冥王獄に属する亡者達のデータを全て調べ上げた猫魂は独断で、主が意中の相手との一時を過ごせる機会を設けようと、意図的に亡者らの魂の不法滞在を促していた。
実は今回、2月14日の訪問も、猫の仕事のおかげだった。この日にアズールが現世に赴けるようにと、数日前に親族の思いに応えて現世へ飛び立つ亡者の魂のかけらに彼が「ゆっくりして来てねv」とお願いした結果なのだった。
もうすぐ現世の日が昇る。冥王獄に帰ってくるアズールがどんな様子であるか、猫魂は楽しみで仕方なく、うずうず、わくわく、にゃふふ~ん♪な気持ちで待っていた。
そこへ、アズールの魂の一部を受け継ぎ「心産みの神」へ神化した、かつての幻次界の王子虹天使ダーツ…ダーツインヴォリアが訪れた。
命との関わりを禁じられた神となってしまった彼だが、ここの主が命の枠から外れているのをいい事に、わりとちょくちょく遊びに来ており、猫魂とも良い関係を築いていた。
「ずいぶん、ご機嫌なんですね、猫魂。」
浮かれている猫魂を見て、ダーツもほんわか笑みを浮かべながら声をかけた。
「あ~。ダーツさま~。いらっしゃいなのニャv
あのね、昨日、現世はバレンタインデーだったのニャ。アズールさま、きっと姫(ポーチの事)からチョコ貰って来るのニャ。きっとすっごく喜ぶと思うのニャ~vvv」
猫魂の中に一人だけいる女性の魂が、この乙女趣味でろまんちっくなイベントに萌えあがっているらしい。
「ね、ね?ダーツさまも、そう思うのニャ?」
ニコニコと訊ねる猫の期待を裏切る、微妙な戸惑い顔のダーツがそこにいた。
「にゃ??何か、変…??」
不安を覚えた猫がダーツにつめよる。
「アズール様…。」
遠慮がちに、ダーツが口を開いた。
「バレンタインの行事について、御存知でしょうか……?」
一瞬、二人の間を雪混じりの風が吹きぬけた。
「……。」
「………。」
はっきり言って、めちゃめちゃありえる事だった。
でも、いや、まさか、そんな…かなり天然な貴方(ダーツ)が知っているのに!(暴言)と、猫は暫く困惑していたが、現世から戻って来たアズールを迎えて、どうでも良くなった。
アズールが、姫がお土産に持たせてくれた焼き菓子を、ダーツと猫におすそ分けしてくれてたから。昨日の出来事を、話して聞かせてくれたから。
結果は、やはりアズールは、この日のチョコレートの意味を知らない様子なのだった。が、存外に満足している様なので、それはそれで、個人的にかな~りもどかしくはあるが、これ以上何も言わなくても良いだろうという結論に至った。
ただ一つ気の毒に思うのは、そんな彼の為にケーキを焼いた姫の心情で…。
『姫は、きっとアズールさまがお好きなのニャ。姫のためにも、もっとお二人一緒に過ごせるお時間を差し上げるのニャ☆』
大好きなアズールと、その姫の幸せを切に願う暴想猫は、亡者さん達の里帰りスケジュール管理の徹底を、心中硬く決意した。
そんな猫の忠義(?)を、アズールは、全く全然知る由もないのだった…。
そして、それから丁度一月後。
アズールは再びダーツと猫にお菓子のお土産をおすそ分けしてくれた。
それは、手作りのマシュマロ。どうやらポーチの手ほどきながら、アズールが卵白を泡立ててメレンゲを作ったらしい。
たまごって不思議なモノだな~。等と、珍しく楽しそうに感想を述べるアズールに、猫は顔には出さずに、じりじりいらだっていた。
『お気の毒に…!ホワイトデーも、これではいわば自給自足!!姫、おいたわしニャ~!!』
二人の逢瀬(?)の機会をセッティングはしても、口は出さない忠義な猫は回廊次元の狭間で人知れず涙するにとどめるのだった。
でも実は、ポーチはポーチで、そんなやりとりで結構幸せ感じちゃってるのだった。
…端から見たら、もしかして、それはそれで涙を誘う事態なのかもしれないが…。
いまだ砂糖菓子の似合う、二人の前途を勝手に憂い、今日も猫魂は亡者さん達に現世での長居をお願いするのだった。
おしまい
☆★☆★☆★☆★☆★☆
あとがき的トーク。
いかがでしたでしょうか?
「猫魂」の細かい設定は、シール裏書にない部分は全て私の捏造です。鵜呑みにしないで下さいネ☆
この猫はむしろ私の分身かと…(苦笑)。
「開花」シリーズは、ポーチに、タケルより好条件の恋人を作ってあげたくて生まれた、最早海王寺オリジナルな2000物語です(てか、同人作品はおおよそ、そういう物だと思いますけど)。
私、タケルvコーラルだったので~。アニメ見ている当初からアズールvポーチだったのですよ☆
以前ロッ○のサイトで公表されていた小説では、ポーチは別の人と華燭の典を迎えてしまいましたが、同人作品ですから、我が道爆想の方向で行かせて戴きます☆
ポーチの結婚願望は、「お仕えする方に嫁ぐこと」の様に見えていたので、天使様か、悪魔様じゃなきゃ、私は納得できないのです。アズールは属性なくなってる様ですが、存在として格上なヘッドだから問題ないのです。
(むしろ生死不明の方が余程問題なんだけど、そこはほら、解釈ひとつでどうとでもなるので。海王寺的にはアズールは某三只眼漫画の不死人なのよ☆)
読んでくださって、ありがとうございました☆
2/2ページ