二人の瞬間~恋色のめぶき♡ ~アズールポーチ
思い出したのは、学生時代…転校生活を繰り返していた頃にお世話になった先生の言葉。
天使属の教師・満点才如は、自分が仕えるに相応しい未来の旦那様となる「運命の天使」を探し求めるポーチに、本当の姉の様に優しく諭したものだ。
「残念なことだけど、天使属・悪魔属に関わらず、殿方の中には時々『おおかみさん』になる方もいるの。ポーチちゃん、貴女は可愛いんだから、気をつけなきゃ、駄目よ?」
自分が可愛いなんてこと、満点先生に言われる随分前から自覚している。お日様に向かって胸を張って、仁王立ち出来る位の確固たる「自信」さえある程に。
だけど今までポーチが憧れアタックを試みる相手には、自分の容姿も魅力も、理解してはもらえなかった。
いや、理解されなかったのではない。多分、自分が憧れるのは正義感溢れる紳士達ばかりだったから、誰も葉目を外すような行動に出なかっただけに違いない、と、ポーチは自分のプライドを守っていた。
それじゃあ、今、自分と非常に密着状態にある、この少年は……?
はっと我に返り、ポーチは強い語調で声を上げた。
「ちょっと!いきなり危ないじゃないの!針持ってるのに、刺さったらどうするのよ!?怪我、してない??」
「そんなヘマはしない。」
ポーチの耳元にそう言った少年は、少女に覆い被さった体勢のまま少し上体を離した。
ほっとしたのも束の間、気が付くと少女の腕の自由はその顔を覗き込む少年の、先程華奢だと思ったばかりのその腕に戒められ、完全に奪われている。
逃れようと試みるも、かっちり抑えられた腕はびくともしなかった。
(お、男の子だ……っ!!)
改めて認識した途端、ポーチの全身を羞恥の熱が駆け巡った。高まり、早まる鼓動が震えとなってポーチを襲い、焦りの為か滲み始めた汗がじわりと肌を湿らせた。
赤と、碧のオッドアイを、いったいどれだけ見つめていただろうか。ふと、少年の長い睫毛が二人の交わる視線を遮ったかと思うと、アズールはその顔をポーチの…いわゆる谷間に沈めた。
「ひっ…!?」
己の首筋を滑る蒼い髪と…。唐突な感触に、少女は小さく悲鳴をあげる。初めて遭遇した事態にどう対処すれば良いのか判らず、ポーチは早まる自分の鼓動を全身で聴きながら、ただただ身を硬くしていた。
(な、なな、ななにがしたいの?なにをされてるの?どうなっちゃうっていうの~~~??!)
そんな少女の困惑を知ってか知らずか、アズールは少女の胸の中で吐息に近い呟きをもらす。
「温かくて、やわらかい…。優しい匂いがする…。母親というのも、こんな感じなのか…?」
その言葉で、少女の緊張は一気に解けていった。
(は、母親……?恋人とかじゃなくて、母親ぁ~~??!)
…むしろ脱力に近いかもしれない。ポーチの口元は引きつり、触角は萎れた葉の様に へろん…としな垂れた。
しかし同時に妙に納得し、脱力と共に少年に対する確かな愛おしさも感じ、苦笑してしまうポーチもいた。
姿は自分と同年代に見えても、今目の前にいるアズールはコドモなのだ。好奇心のままに動いているコドモ…。そう考えれば、この唐突な行動も納得いくではないか。
というより、むしろそういうことにしておきたい。
「…まあ…、あたしも、そのうち、なるかもだから、『感じ』は、そう違わないと思うけど……。」
脱力はしても、未だ治まらないドキドキに戸惑いながら、ポーチはやっとの思いでそう応えた。
「さっきタケル達とは、ずっとこのことを話していたんだ。」
又しても、唐突な切り返しをしつつ、顔をあげたアズールの頬は少し朱がさしていた。
それでも息を荒げたりすることはなく、いつもの調子で淡々と言葉を続ける。
「カンジーが図書館に行くって出て行った後、本についての話になったんだ。タケルは本って聞いた途端『勉強なんてごめんだ』と顔をしかめてたが、昔誰かに読んでもらった絵本の事を教えてくれた。そのうちゼウスが、何か女の写真が載ってる本の話をし始めて…。それから女のカタチとか触り心地とかの話になった。」
唐突に始まった話に、ポーチは絶句し、憤慨した。
(お…!お子ちゃま相手に何の話してんのよ!あんの好色おジジィちゃまはっ!!ヘッドのくせに~~★!★!★)
そんな少女の様子には気にも留めず、アズールはリズムを崩さず話し続ける。
「男と比べるとやわらかいとか、良い香りがするとか色々聞いてて、その内オマエの話になった。」
突然自分が話題に出てきた事に驚かされ、ポーチの憤りは一瞬吹き飛んだ。
「ゼウスは、『三、四年後が楽しみだ』と言ったんだが…俺は今でも充分だと思うって言った。そうしたらゼウスには笑われて、タケルはおとなしくなって…。」
思い出しながら話しているせいか、アズールの視線はどこか遠い。
「オマエはいつも親切だから、頼めば触らせてくれるかもしれないって言ったら、タケルにいきなり掴みかかられた。」
あの時自分は、確かに気が緩んでいた。油断していたとはいえ、タケルに容易に組み敷かれた事にショックを受けながら、どうしてタケルが激昂したのか考えるのに必死になっていた。そんな所へ、今自分の腕の中で何故か震えている少女が、鬼の形相で割り込んできたのだ。このギャップが、アズールには面白かった。
「だから、タケルはオマエの事、好きなのかもしれないと思った。」
(し、親切だから、何ですって~~?!!)
先程から、衝撃発言のハンマーで脳髄を連打されているポーチは、目の前が真っ暗になっていた。
そして、じわじわと湧き上がる不安を抑えつつ、
「さ、さっき…の…。す、すまないって…なによ?」
震える声で、やっとそれだけを口に出来た。
「好意を持たない奴に触られることは、女にとってはとんでもなく辛くて屈辱的な事だとゼウスが言っていた。それにオマエがもしタケルを好きだったら、ソウシソウアイの間に入る事だから、悪いかなと思った。でも…」
言葉を切る、少年の瞳に無邪気さと妖しさを同時に含む色が差す。
「オマエが俺に惚れてくれれば、何も問題ないだろう?」
「!!」
もぞりと、ポーチの背中に回された手が何かを探し当てた。
ビスチェタイプのワンピースの留め具が、外されたのかもしれない…。
頭の隅…遠くの方で身に訪れている危機に警告音が鳴り響いている。だけどポーチはそれが「そんなこと」に思えてしまう様なもっと大きな衝撃を受けていた。
無邪気な声音の少年の言葉で麻痺した思考は、一挙に押し寄せた憂鬱の津波に呑まれ、悲しみの海を漂っていた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆
はい。とちゅうがきトークも二回目です。
いかがでしたでしょうか?ヒロインも相手役も天然でごめんなさい★
特にアズールが…;ウチの設定のアズール、基本的にヘタレなもので(死)。加えて設定Bは特におバカなので…(ヘタレなくせに積極的。どんなや/爆)。『カッコ良くてクール』なアズールファンの方、申し訳ございません。
ラストまであらかた書き終わっているのですが、細かい描写を足したり消したり…を繰り返してます。小説も難しいです。世の中に簡単な物なんてないのかもしれませんが。イラストも漫画も試行錯誤ですもんねえ。
その内、挿絵的カットも各話1カットずつ載せていけたら…と思ってます。
vキャラクター設定話v
天助ポーチ
ヒロインです。設定Bのポーチ嬢は、遺伝子誕生の、割と普通の娘さんです。闘論の天才少女です。記憶力が良いので、口約束も忘れません。魔法とお勉強がかなりお得意です。(金ダライ以外にも色々出来ると思ってます。これは設定Aと共通です。)なので、お勉強関係(古文書解読とか)ではカンジー君とお話が合います☆
お子様に優しいお姉さんです。母性本能が強いので、身の回りのお子様達にお世話を焼いてしまいます。
二話目にして操の危機(?)を迎えてしまったポーチ嬢。「運命の天使様」を探していたハズなのに…?!という葛藤は、そんなにないかもしれませんが、さてさて、どんな展開になるやら…☆(←そらぞらしい?)
星戦使タケル
タケル君はAもBも遺伝子誕生です。体力勝負の格闘少年。魔力は高いのに魔法は不得手。お勉強も苦手ですが、おバカではない…ハズ(多分)。基本的に楽天家さんですが、ナイーブさんな部分もあります(ズレ気味に)。「戦使」は色々大変だと思います。
ウチのタケル君は、この時点で割とコーラルちゃんを女の子として気にしております。(書き手がタケルvコーラルですので☆)アズールvポーチを描く上では完っ璧に脇役ちゃんです☆(アイタタタ…;;)
本タイトルでは最大の被害者(冤罪)也★(合掌)
ではでは~。今回はここまで☆
次回を楽しみにしていただけたら幸いです。
2005年4月20日 海王寺 千愛
天使属の教師・満点才如は、自分が仕えるに相応しい未来の旦那様となる「運命の天使」を探し求めるポーチに、本当の姉の様に優しく諭したものだ。
「残念なことだけど、天使属・悪魔属に関わらず、殿方の中には時々『おおかみさん』になる方もいるの。ポーチちゃん、貴女は可愛いんだから、気をつけなきゃ、駄目よ?」
自分が可愛いなんてこと、満点先生に言われる随分前から自覚している。お日様に向かって胸を張って、仁王立ち出来る位の確固たる「自信」さえある程に。
だけど今までポーチが憧れアタックを試みる相手には、自分の容姿も魅力も、理解してはもらえなかった。
いや、理解されなかったのではない。多分、自分が憧れるのは正義感溢れる紳士達ばかりだったから、誰も葉目を外すような行動に出なかっただけに違いない、と、ポーチは自分のプライドを守っていた。
それじゃあ、今、自分と非常に密着状態にある、この少年は……?
はっと我に返り、ポーチは強い語調で声を上げた。
「ちょっと!いきなり危ないじゃないの!針持ってるのに、刺さったらどうするのよ!?怪我、してない??」
「そんなヘマはしない。」
ポーチの耳元にそう言った少年は、少女に覆い被さった体勢のまま少し上体を離した。
ほっとしたのも束の間、気が付くと少女の腕の自由はその顔を覗き込む少年の、先程華奢だと思ったばかりのその腕に戒められ、完全に奪われている。
逃れようと試みるも、かっちり抑えられた腕はびくともしなかった。
(お、男の子だ……っ!!)
改めて認識した途端、ポーチの全身を羞恥の熱が駆け巡った。高まり、早まる鼓動が震えとなってポーチを襲い、焦りの為か滲み始めた汗がじわりと肌を湿らせた。
赤と、碧のオッドアイを、いったいどれだけ見つめていただろうか。ふと、少年の長い睫毛が二人の交わる視線を遮ったかと思うと、アズールはその顔をポーチの…いわゆる谷間に沈めた。
「ひっ…!?」
己の首筋を滑る蒼い髪と…。唐突な感触に、少女は小さく悲鳴をあげる。初めて遭遇した事態にどう対処すれば良いのか判らず、ポーチは早まる自分の鼓動を全身で聴きながら、ただただ身を硬くしていた。
(な、なな、ななにがしたいの?なにをされてるの?どうなっちゃうっていうの~~~??!)
そんな少女の困惑を知ってか知らずか、アズールは少女の胸の中で吐息に近い呟きをもらす。
「温かくて、やわらかい…。優しい匂いがする…。母親というのも、こんな感じなのか…?」
その言葉で、少女の緊張は一気に解けていった。
(は、母親……?恋人とかじゃなくて、母親ぁ~~??!)
…むしろ脱力に近いかもしれない。ポーチの口元は引きつり、触角は萎れた葉の様に へろん…としな垂れた。
しかし同時に妙に納得し、脱力と共に少年に対する確かな愛おしさも感じ、苦笑してしまうポーチもいた。
姿は自分と同年代に見えても、今目の前にいるアズールはコドモなのだ。好奇心のままに動いているコドモ…。そう考えれば、この唐突な行動も納得いくではないか。
というより、むしろそういうことにしておきたい。
「…まあ…、あたしも、そのうち、なるかもだから、『感じ』は、そう違わないと思うけど……。」
脱力はしても、未だ治まらないドキドキに戸惑いながら、ポーチはやっとの思いでそう応えた。
「さっきタケル達とは、ずっとこのことを話していたんだ。」
又しても、唐突な切り返しをしつつ、顔をあげたアズールの頬は少し朱がさしていた。
それでも息を荒げたりすることはなく、いつもの調子で淡々と言葉を続ける。
「カンジーが図書館に行くって出て行った後、本についての話になったんだ。タケルは本って聞いた途端『勉強なんてごめんだ』と顔をしかめてたが、昔誰かに読んでもらった絵本の事を教えてくれた。そのうちゼウスが、何か女の写真が載ってる本の話をし始めて…。それから女のカタチとか触り心地とかの話になった。」
唐突に始まった話に、ポーチは絶句し、憤慨した。
(お…!お子ちゃま相手に何の話してんのよ!あんの好色おジジィちゃまはっ!!ヘッドのくせに~~★!★!★)
そんな少女の様子には気にも留めず、アズールはリズムを崩さず話し続ける。
「男と比べるとやわらかいとか、良い香りがするとか色々聞いてて、その内オマエの話になった。」
突然自分が話題に出てきた事に驚かされ、ポーチの憤りは一瞬吹き飛んだ。
「ゼウスは、『三、四年後が楽しみだ』と言ったんだが…俺は今でも充分だと思うって言った。そうしたらゼウスには笑われて、タケルはおとなしくなって…。」
思い出しながら話しているせいか、アズールの視線はどこか遠い。
「オマエはいつも親切だから、頼めば触らせてくれるかもしれないって言ったら、タケルにいきなり掴みかかられた。」
あの時自分は、確かに気が緩んでいた。油断していたとはいえ、タケルに容易に組み敷かれた事にショックを受けながら、どうしてタケルが激昂したのか考えるのに必死になっていた。そんな所へ、今自分の腕の中で何故か震えている少女が、鬼の形相で割り込んできたのだ。このギャップが、アズールには面白かった。
「だから、タケルはオマエの事、好きなのかもしれないと思った。」
(し、親切だから、何ですって~~?!!)
先程から、衝撃発言のハンマーで脳髄を連打されているポーチは、目の前が真っ暗になっていた。
そして、じわじわと湧き上がる不安を抑えつつ、
「さ、さっき…の…。す、すまないって…なによ?」
震える声で、やっとそれだけを口に出来た。
「好意を持たない奴に触られることは、女にとってはとんでもなく辛くて屈辱的な事だとゼウスが言っていた。それにオマエがもしタケルを好きだったら、ソウシソウアイの間に入る事だから、悪いかなと思った。でも…」
言葉を切る、少年の瞳に無邪気さと妖しさを同時に含む色が差す。
「オマエが俺に惚れてくれれば、何も問題ないだろう?」
「!!」
もぞりと、ポーチの背中に回された手が何かを探し当てた。
ビスチェタイプのワンピースの留め具が、外されたのかもしれない…。
頭の隅…遠くの方で身に訪れている危機に警告音が鳴り響いている。だけどポーチはそれが「そんなこと」に思えてしまう様なもっと大きな衝撃を受けていた。
無邪気な声音の少年の言葉で麻痺した思考は、一挙に押し寄せた憂鬱の津波に呑まれ、悲しみの海を漂っていた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆
はい。とちゅうがきトークも二回目です。
いかがでしたでしょうか?ヒロインも相手役も天然でごめんなさい★
特にアズールが…;ウチの設定のアズール、基本的にヘタレなもので(死)。加えて設定Bは特におバカなので…(ヘタレなくせに積極的。どんなや/爆)。『カッコ良くてクール』なアズールファンの方、申し訳ございません。
ラストまであらかた書き終わっているのですが、細かい描写を足したり消したり…を繰り返してます。小説も難しいです。世の中に簡単な物なんてないのかもしれませんが。イラストも漫画も試行錯誤ですもんねえ。
その内、挿絵的カットも各話1カットずつ載せていけたら…と思ってます。
vキャラクター設定話v
天助ポーチ
ヒロインです。設定Bのポーチ嬢は、遺伝子誕生の、割と普通の娘さんです。闘論の天才少女です。記憶力が良いので、口約束も忘れません。魔法とお勉強がかなりお得意です。(金ダライ以外にも色々出来ると思ってます。これは設定Aと共通です。)なので、お勉強関係(古文書解読とか)ではカンジー君とお話が合います☆
お子様に優しいお姉さんです。母性本能が強いので、身の回りのお子様達にお世話を焼いてしまいます。
二話目にして操の危機(?)を迎えてしまったポーチ嬢。「運命の天使様」を探していたハズなのに…?!という葛藤は、そんなにないかもしれませんが、さてさて、どんな展開になるやら…☆(←そらぞらしい?)
星戦使タケル
タケル君はAもBも遺伝子誕生です。体力勝負の格闘少年。魔力は高いのに魔法は不得手。お勉強も苦手ですが、おバカではない…ハズ(多分)。基本的に楽天家さんですが、ナイーブさんな部分もあります(ズレ気味に)。「戦使」は色々大変だと思います。
ウチのタケル君は、この時点で割とコーラルちゃんを女の子として気にしております。(書き手がタケルvコーラルですので☆)アズールvポーチを描く上では完っ璧に脇役ちゃんです☆(アイタタタ…;;)
本タイトルでは最大の被害者(冤罪)也★(合掌)
ではでは~。今回はここまで☆
次回を楽しみにしていただけたら幸いです。
2005年4月20日 海王寺 千愛