Story.8 古の殺戮者
†
――――事態が片付くのは早かった。
二人でも事足りる上に飛び道具が追加されたのだから、それもそのはずである。加えて現在四人がいるリィースメイル東部はグレムアラウドから距離があるため、生息している魔物は危険性が比較的低い下位のものが多数を占めているということもあるだろう。
「なあ、こいつらも傷なかったか?」
「はい、昨日の群れよりは少なかったように思えましたけど」
「あ、それ変だと思ったんだよねー。昨日戦ってたのもだったの?」
フレイアが弓をしまい二人に問いかける。ハールがセシルの話に出てきた魔物増殖の件と、それに関連した予想を簡単に説明すると彼女は「ああ」と小さく呟く。予想の話に入る前に自分で理解に至ったのであろうことは、表情の変化で見てとれた。
「大物の話に気がいってたけど、そういえばそんなこと言ってたねぇ」
視線を今しがた倒した魔物の死骸に落として言う。ある個体の首筋には、明らかに同種の物であると思われる牙傷が残っていた。
「……まぁ、魔物とはいえ同族同士で殺し合うなんて、気分のいい話じゃないね」
その時だった。
突如、頭上から一筋の黒い影。真っ直ぐに降下したその先に居たのは――――
「ふ、ぁッ!?」
間近で風を切る音。咄嗟にリセは自身を庇うように右手を振り上げる。
「――――っ!」
瞬間、手の平に熱が迸った。焼けるように熱い、熱い。痛みをそう錯覚しているのか、それとも噴き出す自身の血液がそう感じさせるのか。視認はできなかったが、魔物に違いない。肉を裂いたのは爪だろうか牙だろうか。どこまで、抉れているのだろうか。熱が痛みに変わる瞬間に怯えつつ、恐る恐る瞼を開ける。思いの外、次の攻撃はない。顔を庇った腕の隙間から視界に入ったのは――――
――――事態が片付くのは早かった。
二人でも事足りる上に飛び道具が追加されたのだから、それもそのはずである。加えて現在四人がいるリィースメイル東部はグレムアラウドから距離があるため、生息している魔物は危険性が比較的低い下位のものが多数を占めているということもあるだろう。
「なあ、こいつらも傷なかったか?」
「はい、昨日の群れよりは少なかったように思えましたけど」
「あ、それ変だと思ったんだよねー。昨日戦ってたのもだったの?」
フレイアが弓をしまい二人に問いかける。ハールがセシルの話に出てきた魔物増殖の件と、それに関連した予想を簡単に説明すると彼女は「ああ」と小さく呟く。予想の話に入る前に自分で理解に至ったのであろうことは、表情の変化で見てとれた。
「大物の話に気がいってたけど、そういえばそんなこと言ってたねぇ」
視線を今しがた倒した魔物の死骸に落として言う。ある個体の首筋には、明らかに同種の物であると思われる牙傷が残っていた。
「……まぁ、魔物とはいえ同族同士で殺し合うなんて、気分のいい話じゃないね」
その時だった。
突如、頭上から一筋の黒い影。真っ直ぐに降下したその先に居たのは――――
「ふ、ぁッ!?」
間近で風を切る音。咄嗟にリセは自身を庇うように右手を振り上げる。
「――――っ!」
瞬間、手の平に熱が迸った。焼けるように熱い、熱い。痛みをそう錯覚しているのか、それとも噴き出す自身の血液がそう感じさせるのか。視認はできなかったが、魔物に違いない。肉を裂いたのは爪だろうか牙だろうか。どこまで、抉れているのだろうか。熱が痛みに変わる瞬間に怯えつつ、恐る恐る瞼を開ける。思いの外、次の攻撃はない。顔を庇った腕の隙間から視界に入ったのは――――