Story.8 古の殺戮者
†
「それよりさ、さっきハール君、何考えてたの?」
「……別に、何も」
「ハール君、分かりやすすぎ。……リセ達のコト考えてたんでしょー?」
「別に……」
悪戯っ子の笑みを口元に浮かべるフレイア。
「なーに? 妬いてるの?」
「なっ……!?」
ハールが動揺したのを良いことに、さらに顔を近付けて覗き込む。
「どっちにどっちに?」
「ったく違うっての……どっちにって、どういうことだよ」
ハールはそれをかわすと、首は動かさずに目だけをフレイアに遣る。
「リセをイズム君に取られて妬いてるのか、イズム君をリセに取られて妬いてるのかってコト」
「はぁ!? どっちでもねぇよ!」
「そうなのー?」
「当たり前だろ!」
残念そうなフレイアを横目で見つつ、第一、後者はヤバイだろ、と呆れながらツッコミを入れる。
「……いつの間にあんなに打ち解けたのかって、少し思っただけ」
自分が今まで面倒を見てきた相手と、自らの親友が急に仲良くなったのが微妙なところなのかもしれない。
「ハール君かわいい」
「どこがだよ……」
「いーじゃんいーじゃん、仲良きコトは美しきかなってねっ」
からかわれた後でも一応答えてくれるところが彼らしいと笑みを浮かべ、話を続ける。パンは食べ終わって無くなってしまい、空いた手をどうするか一瞬考えたが、結果、膝を抱えた。食後は眠たくたるというのが道理な訳で。少しだけ重さを増した瞼を感じ、それに比例して顔から表情が消えていく。
「……ハール君はそれを表に出さないだけでしょ? それはそれでいいんじゃないかな……だって、仲間って、そーゆーモノなんでしょ? 表面に出さなくったって、ちゃんと繋ってるの。……無駄に表現するより、イイんじゃない」
膝に顔を乗せ、最後の方は興味無さ気に締めるフレイア。首を傾げるようにして、晴天の空に視線を放る。
「……良く解んないけどさ」
「何か他人事だな」
「え……そうかな?」
空から視線を落とし、きょとんとした目を向けてくるフレイアに、何となくそう言う風に聞こえただけ、と返すハール。今の会話からすると、『自らの知らないことを知識と想像だけで語っている』ような気がしたのだ。……そんな訳、ないのだが。
「お前も、“そーゆーモノ”に入ってんじゃねぇの」
「え…………?」
フレイアは大きな目をさらに見開き、驚いたようにハールを見つめる。昼食を咀嚼している横顔は、何事も無かったかのようにその後無言だった。
そんなハールを見つめながら、フレイアは、微笑んだ。
それは、今にも風へと消えてしまいそうなほどに何処か脆く、儚いまでに、淋しそうに。
――そして彼の言葉に、返事はしなかった。
「それよりさ、さっきハール君、何考えてたの?」
「……別に、何も」
「ハール君、分かりやすすぎ。……リセ達のコト考えてたんでしょー?」
「別に……」
悪戯っ子の笑みを口元に浮かべるフレイア。
「なーに? 妬いてるの?」
「なっ……!?」
ハールが動揺したのを良いことに、さらに顔を近付けて覗き込む。
「どっちにどっちに?」
「ったく違うっての……どっちにって、どういうことだよ」
ハールはそれをかわすと、首は動かさずに目だけをフレイアに遣る。
「リセをイズム君に取られて妬いてるのか、イズム君をリセに取られて妬いてるのかってコト」
「はぁ!? どっちでもねぇよ!」
「そうなのー?」
「当たり前だろ!」
残念そうなフレイアを横目で見つつ、第一、後者はヤバイだろ、と呆れながらツッコミを入れる。
「……いつの間にあんなに打ち解けたのかって、少し思っただけ」
自分が今まで面倒を見てきた相手と、自らの親友が急に仲良くなったのが微妙なところなのかもしれない。
「ハール君かわいい」
「どこがだよ……」
「いーじゃんいーじゃん、仲良きコトは美しきかなってねっ」
からかわれた後でも一応答えてくれるところが彼らしいと笑みを浮かべ、話を続ける。パンは食べ終わって無くなってしまい、空いた手をどうするか一瞬考えたが、結果、膝を抱えた。食後は眠たくたるというのが道理な訳で。少しだけ重さを増した瞼を感じ、それに比例して顔から表情が消えていく。
「……ハール君はそれを表に出さないだけでしょ? それはそれでいいんじゃないかな……だって、仲間って、そーゆーモノなんでしょ? 表面に出さなくったって、ちゃんと繋ってるの。……無駄に表現するより、イイんじゃない」
膝に顔を乗せ、最後の方は興味無さ気に締めるフレイア。首を傾げるようにして、晴天の空に視線を放る。
「……良く解んないけどさ」
「何か他人事だな」
「え……そうかな?」
空から視線を落とし、きょとんとした目を向けてくるフレイアに、何となくそう言う風に聞こえただけ、と返すハール。今の会話からすると、『自らの知らないことを知識と想像だけで語っている』ような気がしたのだ。……そんな訳、ないのだが。
「お前も、“そーゆーモノ”に入ってんじゃねぇの」
「え…………?」
フレイアは大きな目をさらに見開き、驚いたようにハールを見つめる。昼食を咀嚼している横顔は、何事も無かったかのようにその後無言だった。
そんなハールを見つめながら、フレイアは、微笑んだ。
それは、今にも風へと消えてしまいそうなほどに何処か脆く、儚いまでに、淋しそうに。
――そして彼の言葉に、返事はしなかった。