Story.7 星宿の地図
「……終わった?」
「そうですね」
ハールが軽く剣を振り、刀身に絡まった血液を払う。その足元には毛皮を赤黒く染めた魔物の抜け殻があった。
「こいつら、いくらか町役場で報奨金でねぇかな」
「期待はできませんね」
「そろそろヤバいんだよなー……」
剣に付いた血や膏(あぶら)を布であらかた拭き取ってから携帯水晶にしまうと、深い溜め息をつく。
「出発するとき僕が足しましたけど、厳しいですか?」
「今すぐどうにかしないとってワケじゃねぇけど、ある程度の予備は欲しいだろ」
「最後に換金したのっていつです」
「リセ拾う前」
賞金の懸かっている魔物は、狩人が生息場所まで出向いて討ち取り、確かに始末したという証拠、もしくはその死骸自体を役所や自警団に提示すると賞金が貰えるというのが一般的で、証拠品としては主に牙が用いられる。生きている魔物から牙を奪うことはほぼ不可能であるし、もしまかり成功したとしても牙が無ければ人も襲えず狩りもできないゆえ危険は無くなるということだ。賞金の懸っていない魔物でも報奨金が貰える場合もあるが、危険性や種によるため、今回のような魔物では望み薄だろう。先日倒した双頭の銀狼であれば話は別だが、あのときはそれどころではなかったため仕方がない。
「西部ならとにかく、この辺りじゃな……」
「戦える人間が三人もいることですし、多少難易度が高くてもまとめて大きい金額が入ればいいんですけどね」
少々切実な会話は、夕風に流されていく。思ったより時間はかからなかったものの、見上げた空は日暮れの金に紺青が染み渡り始めていた。
――――魔物に襲われかけた直後に女将を台所に立たせるわけにはいかなかったゆえ、結局夕食は有りものを煮込んだシチューをイズムが作った。同席した彼女の口数は少なかったものの顔色はだいぶ良くなっており、心配は要らなそうである。ちなみに、夕食がシチューになった理由はというと、
「好きなんです、シチュー」
だ、そうである。
「そうですね」
ハールが軽く剣を振り、刀身に絡まった血液を払う。その足元には毛皮を赤黒く染めた魔物の抜け殻があった。
「こいつら、いくらか町役場で報奨金でねぇかな」
「期待はできませんね」
「そろそろヤバいんだよなー……」
剣に付いた血や膏(あぶら)を布であらかた拭き取ってから携帯水晶にしまうと、深い溜め息をつく。
「出発するとき僕が足しましたけど、厳しいですか?」
「今すぐどうにかしないとってワケじゃねぇけど、ある程度の予備は欲しいだろ」
「最後に換金したのっていつです」
「リセ拾う前」
賞金の懸かっている魔物は、狩人が生息場所まで出向いて討ち取り、確かに始末したという証拠、もしくはその死骸自体を役所や自警団に提示すると賞金が貰えるというのが一般的で、証拠品としては主に牙が用いられる。生きている魔物から牙を奪うことはほぼ不可能であるし、もしまかり成功したとしても牙が無ければ人も襲えず狩りもできないゆえ危険は無くなるということだ。賞金の懸っていない魔物でも報奨金が貰える場合もあるが、危険性や種によるため、今回のような魔物では望み薄だろう。先日倒した双頭の銀狼であれば話は別だが、あのときはそれどころではなかったため仕方がない。
「西部ならとにかく、この辺りじゃな……」
「戦える人間が三人もいることですし、多少難易度が高くてもまとめて大きい金額が入ればいいんですけどね」
少々切実な会話は、夕風に流されていく。思ったより時間はかからなかったものの、見上げた空は日暮れの金に紺青が染み渡り始めていた。
――――魔物に襲われかけた直後に女将を台所に立たせるわけにはいかなかったゆえ、結局夕食は有りものを煮込んだシチューをイズムが作った。同席した彼女の口数は少なかったものの顔色はだいぶ良くなっており、心配は要らなそうである。ちなみに、夕食がシチューになった理由はというと、
「好きなんです、シチュー」
だ、そうである。