Story.7 星宿の地図
話は数時間前まで遡る。
「……あ。分かれ道」
道の途中、リセをはじめとし、四人は目の前に現れた分岐点に足を止めた。
「ハール君、コレどっちだっけー?」
フレイアはそう言いながら道と道の間の地面に刺された路標に目をやり、書かれている文字を読み上げる。
「左は『アーディア街道』。右は……山みたいだね。あっ、けど……」
「どっちにしろ、『アリエタ』には着くな」
地図を広げ、確認しながらハール。
「『アーディア街道』は舗装されているし、宿屋も所々にある」
少しだけ背伸びをして、リセも地図を覗き込もうとする。それに気付いたハールは彼女にもよく見えるように手の位置を下げた。
「だけど此方を通ると山を迂回していくことになるから、アリエタまで結構かかるな……この距離だと――……休憩を入れて、六日ってとこだな」
「えっ、そんなにかかるのっ?」
彼女達が今まで通過してきた町々は割と距離が近く、長くても三日間歩き通せば着ける程度の位置関係にあった為、その倍の日数はかなり長く感じる。軽く目を見開くリセの隣からイズムが口を挟んだ。
「右側だと、どうなんです?」
「右はそのまま山を突っ切って行くから、大方……二、三日だろ。まぁ、舗装も何もねぇけど」
「速さを取るか、安全を取るかですね」
図面上の距離を実単位に置き換え言うハール。それを聞き、イズムは「どうしましょうか?」と続けた。
地図を囲み、暫し思案する四人。内三人は、この辺りに多く出没する魔物であれば難無く倒せる程度の実力の持ち主である。ゆえにそれらが多く生息する山に入ろうと別に躊躇する事柄でもない気がするのだが、全くの無傷で済むという保証もないし、賞金の出ない魔物は出来るだけ相手にしたくないというのが本音だ。
しかし、日数の大幅な短縮が魅力であることは確かである。
「……ぃよおっし、右行こ右っ!」
思案の沈黙を破る元気な声を上げたフレイアに、一同の視線が集まる。
「その心は?」
「そっちの方が楽しそうだからです!」
「日数は関係なしか」
ハールのツッコミを華麗にスルーし、イズムの問いに手を上げ答えるフレイア。そして少し不満げな顔になると人差し指を立てて続けた。
「だってさー、前この街道通ったコトあるんだけど、同じような景色ばっかでつまんなかったんだもん」
舗装をされている道といえば、延々と石畳やら煉瓦やらが続いていることだろう。地方のしがない一街道に楽しさを求めるのは、かなり酷だと思うのだが。一応彼女なりの解釈としては、周りの景色に変化があれば、退屈には分類されないらしい。
「フレイア、ここ通ったことあるんだ?」
リセは微かに弾んだ声で訊く。初めて出逢った日より前の経緯は彼女からなに一つとして聞いていなかった為、些細なことだが、話してくれたということに嬉しさを覚えた。
「うん、まぁ、ちょっと前にね」
だが当のフレイアはそれ以上話す気はない、もしくはその話題に興味が無いらしく、話を打ち切るように目を地図に落とした。リセはこれ以上深く追求することはできない雰囲気を感じとり、口を噤む。別に拒否された訳では無い。会話の流れだ。
(……と、思う)
「――で、異論は?」
ハールが確認をとる。しかし特に反対する理由も無いので、そのまま一行の足は右の道へと運ばれた。
「……あ。分かれ道」
道の途中、リセをはじめとし、四人は目の前に現れた分岐点に足を止めた。
「ハール君、コレどっちだっけー?」
フレイアはそう言いながら道と道の間の地面に刺された路標に目をやり、書かれている文字を読み上げる。
「左は『アーディア街道』。右は……山みたいだね。あっ、けど……」
「どっちにしろ、『アリエタ』には着くな」
地図を広げ、確認しながらハール。
「『アーディア街道』は舗装されているし、宿屋も所々にある」
少しだけ背伸びをして、リセも地図を覗き込もうとする。それに気付いたハールは彼女にもよく見えるように手の位置を下げた。
「だけど此方を通ると山を迂回していくことになるから、アリエタまで結構かかるな……この距離だと――……休憩を入れて、六日ってとこだな」
「えっ、そんなにかかるのっ?」
彼女達が今まで通過してきた町々は割と距離が近く、長くても三日間歩き通せば着ける程度の位置関係にあった為、その倍の日数はかなり長く感じる。軽く目を見開くリセの隣からイズムが口を挟んだ。
「右側だと、どうなんです?」
「右はそのまま山を突っ切って行くから、大方……二、三日だろ。まぁ、舗装も何もねぇけど」
「速さを取るか、安全を取るかですね」
図面上の距離を実単位に置き換え言うハール。それを聞き、イズムは「どうしましょうか?」と続けた。
地図を囲み、暫し思案する四人。内三人は、この辺りに多く出没する魔物であれば難無く倒せる程度の実力の持ち主である。ゆえにそれらが多く生息する山に入ろうと別に躊躇する事柄でもない気がするのだが、全くの無傷で済むという保証もないし、賞金の出ない魔物は出来るだけ相手にしたくないというのが本音だ。
しかし、日数の大幅な短縮が魅力であることは確かである。
「……ぃよおっし、右行こ右っ!」
思案の沈黙を破る元気な声を上げたフレイアに、一同の視線が集まる。
「その心は?」
「そっちの方が楽しそうだからです!」
「日数は関係なしか」
ハールのツッコミを華麗にスルーし、イズムの問いに手を上げ答えるフレイア。そして少し不満げな顔になると人差し指を立てて続けた。
「だってさー、前この街道通ったコトあるんだけど、同じような景色ばっかでつまんなかったんだもん」
舗装をされている道といえば、延々と石畳やら煉瓦やらが続いていることだろう。地方のしがない一街道に楽しさを求めるのは、かなり酷だと思うのだが。一応彼女なりの解釈としては、周りの景色に変化があれば、退屈には分類されないらしい。
「フレイア、ここ通ったことあるんだ?」
リセは微かに弾んだ声で訊く。初めて出逢った日より前の経緯は彼女からなに一つとして聞いていなかった為、些細なことだが、話してくれたということに嬉しさを覚えた。
「うん、まぁ、ちょっと前にね」
だが当のフレイアはそれ以上話す気はない、もしくはその話題に興味が無いらしく、話を打ち切るように目を地図に落とした。リセはこれ以上深く追求することはできない雰囲気を感じとり、口を噤む。別に拒否された訳では無い。会話の流れだ。
(……と、思う)
「――で、異論は?」
ハールが確認をとる。しかし特に反対する理由も無いので、そのまま一行の足は右の道へと運ばれた。