Story.2 優しさの代償
高らかにそう言うと見事にウインクを決めて右手を前方に伸ばし、びしっと二人に人差し指を向けてポーズをとる。
「フレイアちゃん参上っ! 大丈夫? そこの少年少女!」
赤、青、黄の三色の重ね付けしたブレスレットと、その腕に巻いたバンダナが風に揺れた。
彼女は光の雫を散らせる豊かな金髪を二つに結い上げ、頭にはゴーグルを付けていた。大きく腹部を見せる短い上衣に太腿までのショートパンツという比較的露出が多い服装ではあるのだが、艶っぽいというよりは健康的な少女らしさを受ける。
「……っと!」
実に軽い身のこなしで地面に降り立つと、活発そうな大きな瞳が二人を映す。可愛らしい顔立ちだった。見る限り、少女とハールより年下のようである。
「やー、ちょっと登場かっこよすぎ!? タイミング良すぎたよね!? あーっ、もう自分に惚れちゃいそうな完璧さ!」
自らを『フレイア』と名乗った少女は彼女らに駆け寄り、弾けるような元気な笑みを向ける。
「え? あ、あぁ……」
「う、ん……」
テンションの高さにイマイチ付いていけず、そのままどう対応していいかも分からず固まると少女とハール。しかし彼女はそんな様子にお構い無しだ。
「あれ、アタシの弓の超絶技巧に驚いて声も出ないかなっ? それとも、もしやアタシのあまりの可愛さに、本当に惚れちゃったぁ?」
「え、いや」
ハールに悪戯っぽく笑いかける。何と無く、距離の近さのせいか気まずくて顔を背けた。すると、つい先程フレイアが倒した魔物が目に入る。
「――……!」
よく見ると、それらは全て眸を射抜かれていた。動く標的の小さな眼球に寸分の狂いもなく矢を命中させるとは、相当の技術を持っているという事に他ならなかった。若干失礼ながらも、人は見掛けによらないということを改めて実感する。
彼女は携帯水晶に弓矢一式をしまうと、今度は少女に顔を向ける。
「んで、もしやお二人さんはコレなのかなぁ?」
両手で、ハートマークであろう形を作る。少女は手をぶんぶんと横に振って、即答した。
「違うよ……っ」
「えー、そなの? 面白くないなぁ……」
その答えに一瞬不満げに首を傾げるが、「ま、いっか」とすぐに言った。何とも切り替えが早い。
「じゃあさじゃあさ、二人の名前は?」
瞬間、僅かに空気が硬くなる。ハールは隣にいる少女が息を呑んだのを感じた。
「――……助けてくれてありがとな。悪いけど、急いでるからこれで、」
「あれっ、名乗れないってことはー」
が、不自然な話の切り替えを許さないフレイア。
「もしかしてー、……悪い人?」