Story.4 小さな盗人(前編)

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 『少女』は、目の前に置かれた豪奢な水盆に目を落とす。

 小さな波一つ無いその水面は、まるで鏡のよう。しかし、それはこの薄暗い室内を映してはいなかった。
 代わりに、森の景色と、煌めく二色の光を湛える髪の少女、金髪の少女、そして薄茶の髪の少年。
 『少女』は微かに碧の瞳を細めて、その三人の内の一人を見つめ、小さく小さく、鈴の転がるような可憐な声を紡いだ。

「みぃつけた……」

 桜の花弁のような繊細な唇に、微笑を乗せて。

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