Story.16 きざはしの歌 -1/2の景色-
彼女の歌を聴いた瞬間、ああ、“反対”だと思った。
それは、風に震える水面だった。浅瀬の漣だった。少し不安げに揺れ惑うからこそ、きらきらときらめいているような。
そんな歌声が、我らが歌姫とは反対だと思ったのだ。髪も心も真っ赤な暁姫のそれは、誰も彼もの耳に――その奥にまで届いてほしい、届け、届かせてみせるという強い意志を束ねた、真っ直ぐに走る目映い光。ぶれず、揺れず。一点の曇りもなく、迷いもなく。まるで命をくべているかの如く、煌々と燃える。
だから、だからこそ――
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