Story.15 きざはしの歌 -暁との邂逅-
「あっちに北皇星があるってことは、あっちが北だね」
白い指先が、濃紺の星空をなぞる。
「こうやってると、初めて魔法教えてもらった時のこと思い出すね」
星空の地図を読めるようになった彼女はくるりと振り返り、嬉しそうに彼へと笑いかけた。
「……どうしたんですか? 改まって魔法の練習に付き合って欲しいなんて。竜を倒せる方に教えることなんてもうないですよ」
彼――イズムはそう言い苦笑する。彼女が自分を呼び出す理由などこれくらいしか思い付かなかったが、案の定だった。まだ出力が不安定ではあるが、戦力としては数えられる程度ではある。この短期間でそこまで成長できるならばその手の養成所なら間違いなく成績優秀者だ。本当に初心者かという問いには答え辛いのだが。
「あ、あれは私一人の力じゃないし……! 戦うなら倒せるのも大切だけど……その、倒したく、なくて……」
あわあわと両手を振るが、すぐに胸元で握る。声がだんだんと小さくなるにつれ、それはゆっくりと下げられていった。
「成る程、つまりは対人で手加減できるようになりたいということですか」
「……だから、魔力制御の練習、付き合ってもらいたいなって」
「それ、回りくどくないですか?」
顎に手を添え、考えることほんの数秒。
「“習うより慣れろ”……というやつです」
彼は言うと、いつものように微笑んだ。