Story.14 約束


「想うあまりに見えなくなりがちだけど、自分の大切なひとは、自分が思っているほど弱くない」

 ココレットの言葉といい、カテリナの言葉といい、響きの表面しか触れていなかったのかもしない。今こうして旅をして、重ねてきたものがあって、ようやく解ってきた。一人で旅をしていただけではけして解らなかったであろうこと。
 その時よりは、変われたのだろうか。『種』が――芽吹き出したのだろうか。
 そして、それは、昨夜フレイアが音もなく紡いだ言葉あってのものだということも、今なら感じられる。

「……――信じる」

 あの時のフレイアの透明な言葉。
 あの夜を越えた彼女だからこそ、言えた言葉。
 たった今フェスタが目の前で見せてくれた『彼』への決意は、それそのものだ。だからこそ、彼女は強い。それが足りなかったからこそ、自分は弱かった。
 きっと今まで、当たり前のように理解していると思い込んでいて、できていなかったこと。

 今此処に至るまでの短い時のなかで、それぞれ変わったものがあるのだろう。

 リセにも、

 ハールにも、

 フレイアにも、

 イズムにも、

 フェスタにも。

 様々な事と、人と交差して変わった自分と――――変わらないモノを抱えて、新しい地へと歩み出す。

「どうなさいましたの、ハールさん」
「ぼーっとしてると、置いていきますよ」
「早く行かないと、天気悪くなっちゃうよー!」

 向けられる声に陰りはなく、

「ハール、行こう!」

 差し延べられる白い手に、もう傷はない。

「……ああ」

 ――そうして五人は、千年樹が見守る港町を後にした。
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