Story.13 アリエタの夜
†
「……成る程。ご無事で何よりです」
ハールとフェスタから事の経緯と――ただしハールが外出した理由などはぼかしつつ――顛末を聞いたイズムは、彼女に微笑む。そしてその表情のまま、ハールへと顔を向けた。
「で、つまるところ、このお人好しはまた揉め事に自ら進んで首を突っ込んでいたというわけですね」
笑みこそ浮かべてはいたものの、そこには明らかに別のものが滲んでいる。
「人助けが趣味なのか、もはや病気なのか……それともただの馬鹿なのか」
他の者がいるせいだろうか、声も柔らかいままであったが。
「結果を踏まえて、これ以上は何も言いませんけど」
「既にそれなりのことを言われてる気がするけどな」
「序の口程度にもなりませんよ。先が聞きたいんですか?」
「遠慮しとく」
あれからハールの口添えもあり、フェスタを部屋に招き入れることに異論は出なかった。夕方のように剣呑な空気になることもない。ベッドに座り会話を続けるハールとイズムのさらに隣に並んで腰を下ろしているのはリセ、そして、件の中心人物である。
「危なかったんだね……ハールと会えて良かったね、フェスタ」
「はい、助かりました。……本当に」
たった数時間前にも座っていた場所。ただ違うところは、一人で座っているのではないということと、あのとき対峙していた――というより彼女としては向き合っていたのであろう――白い少女も、隣に座っているということ。
「そういうわけだから、今夜はそっちの部屋に泊まらせてやって」
ハールは隣に座るリセと、そしてベッドの広さの問題で一人正面で椅子に座るフレイアに向けて言った。
「ん、いいよ」
「もちろん!」
元気良く返事するリセに、フェスタはどこか困ったように視線を落とす。そして改めてリセの方を向くと、言い辛そうに口を開いた。
「あの、夕方は……その、暴言を吐いてしまって……」
「ううん、私もフェスタの気に障ること言っちゃったみたいで、ごめんね……ダメだなぁ私、前にも同じようなことしちゃったのに」
そう言うと、リセは少し寂しそうに笑む。過去、キヨが自らの翼の色のせいで辛い経験したにもかかわらずそれについて触れてしまった。キヨは気にしていないようだったが、そうはいかない者もいるだろう。綺麗だと、素敵だと、たとえどんなに自分が良いと思って言ったことでも、相手にとってはどういうものかは分からない。そのようなこと分かるわけないと言われればそれまでだが、それでも触れてしまったのは事実だ。
「そんなことありませんわ、その、貴女のように仰しゃる人間は初めてで……」
「私は褒めてても、勝手なこと言うなって、思う人もいるよね……」
二人の会話を聞きながら、この調子であれば一晩同じ部屋にいても問題なさそうだと安堵するハール。
「――……?」
そのとき、ふと視線を感じた。
それはとても真っ直ぐで、真剣な色で何かを問うている蒼の瞳――……フレイアだった。
「……成る程。ご無事で何よりです」
ハールとフェスタから事の経緯と――ただしハールが外出した理由などはぼかしつつ――顛末を聞いたイズムは、彼女に微笑む。そしてその表情のまま、ハールへと顔を向けた。
「で、つまるところ、このお人好しはまた揉め事に自ら進んで首を突っ込んでいたというわけですね」
笑みこそ浮かべてはいたものの、そこには明らかに別のものが滲んでいる。
「人助けが趣味なのか、もはや病気なのか……それともただの馬鹿なのか」
他の者がいるせいだろうか、声も柔らかいままであったが。
「結果を踏まえて、これ以上は何も言いませんけど」
「既にそれなりのことを言われてる気がするけどな」
「序の口程度にもなりませんよ。先が聞きたいんですか?」
「遠慮しとく」
あれからハールの口添えもあり、フェスタを部屋に招き入れることに異論は出なかった。夕方のように剣呑な空気になることもない。ベッドに座り会話を続けるハールとイズムのさらに隣に並んで腰を下ろしているのはリセ、そして、件の中心人物である。
「危なかったんだね……ハールと会えて良かったね、フェスタ」
「はい、助かりました。……本当に」
たった数時間前にも座っていた場所。ただ違うところは、一人で座っているのではないということと、あのとき対峙していた――というより彼女としては向き合っていたのであろう――白い少女も、隣に座っているということ。
「そういうわけだから、今夜はそっちの部屋に泊まらせてやって」
ハールは隣に座るリセと、そしてベッドの広さの問題で一人正面で椅子に座るフレイアに向けて言った。
「ん、いいよ」
「もちろん!」
元気良く返事するリセに、フェスタはどこか困ったように視線を落とす。そして改めてリセの方を向くと、言い辛そうに口を開いた。
「あの、夕方は……その、暴言を吐いてしまって……」
「ううん、私もフェスタの気に障ること言っちゃったみたいで、ごめんね……ダメだなぁ私、前にも同じようなことしちゃったのに」
そう言うと、リセは少し寂しそうに笑む。過去、キヨが自らの翼の色のせいで辛い経験したにもかかわらずそれについて触れてしまった。キヨは気にしていないようだったが、そうはいかない者もいるだろう。綺麗だと、素敵だと、たとえどんなに自分が良いと思って言ったことでも、相手にとってはどういうものかは分からない。そのようなこと分かるわけないと言われればそれまでだが、それでも触れてしまったのは事実だ。
「そんなことありませんわ、その、貴女のように仰しゃる人間は初めてで……」
「私は褒めてても、勝手なこと言うなって、思う人もいるよね……」
二人の会話を聞きながら、この調子であれば一晩同じ部屋にいても問題なさそうだと安堵するハール。
「――……?」
そのとき、ふと視線を感じた。
それはとても真っ直ぐで、真剣な色で何かを問うている蒼の瞳――……フレイアだった。