Story.13 アリエタの夜
†
宿に着くと、ハールはフェスタを客室のある二階へと続く階段の前で一度待たせた。そしてまずは彼だけが二階へ来ると自身の部屋の扉に手を伸ばす。
「ただい……」
突然開く扉。取っ手に触れたか触れないかという早さだった。ほぼ同時に、目の前に広がる銀と白。
「うわっ!?」
「ハール!」
まるで飛び込むかのごとく、勢いよくリセが扉を開けたのだった。彼女はハールをその目に映すと僅かに眉根を寄せる。
「よかった、遅いから心配してたんだよ!」
「え、でも出掛けてくるって書い――」
「――てあったけど遅いよ!」
「わ、悪い……」
心配と、そして微かに怒ったような声色に思わず謝罪の言葉が落ちる。謝らなければならないほど自分に非があるのかは分からなかったが、いつも穏やかに喋る彼女を強い口調にさせてしまったことに対しては、少し申し訳なく思った。
「よかったぁ……」
「もー、だから大丈夫だって言ったじゃん」
「そうですよ、夜しかやってない店も結構ありますし、ハールだってたまにはそうことも――」
「違ぇよ」
「ハール君そうなの!? 意外!」
「だから違ぇっての!」
「ふお?」
話の内容が掴めていないらしいリセの後ろから顔を覗かせる二人にハールは反論する。リセとは違いこちらは心配などかけらもしていないように見受けられた。いや、して欲しいわけではないのだが。リセは自分を挟んで会話する三人の顔を交互に見ていたが、ふと階段下に目を留めた。
「……フェスタ!?」
部屋から一歩出ると彼女を見つめるリセ。その名前に驚き、フレイアとイズムも顔を覗かせた。注がれる四人分の視線。フェスタは、階段の下からやや気まずそうな瞳で見上げてきた。
「……今晩は」
宿に着くと、ハールはフェスタを客室のある二階へと続く階段の前で一度待たせた。そしてまずは彼だけが二階へ来ると自身の部屋の扉に手を伸ばす。
「ただい……」
突然開く扉。取っ手に触れたか触れないかという早さだった。ほぼ同時に、目の前に広がる銀と白。
「うわっ!?」
「ハール!」
まるで飛び込むかのごとく、勢いよくリセが扉を開けたのだった。彼女はハールをその目に映すと僅かに眉根を寄せる。
「よかった、遅いから心配してたんだよ!」
「え、でも出掛けてくるって書い――」
「――てあったけど遅いよ!」
「わ、悪い……」
心配と、そして微かに怒ったような声色に思わず謝罪の言葉が落ちる。謝らなければならないほど自分に非があるのかは分からなかったが、いつも穏やかに喋る彼女を強い口調にさせてしまったことに対しては、少し申し訳なく思った。
「よかったぁ……」
「もー、だから大丈夫だって言ったじゃん」
「そうですよ、夜しかやってない店も結構ありますし、ハールだってたまにはそうことも――」
「違ぇよ」
「ハール君そうなの!? 意外!」
「だから違ぇっての!」
「ふお?」
話の内容が掴めていないらしいリセの後ろから顔を覗かせる二人にハールは反論する。リセとは違いこちらは心配などかけらもしていないように見受けられた。いや、して欲しいわけではないのだが。リセは自分を挟んで会話する三人の顔を交互に見ていたが、ふと階段下に目を留めた。
「……フェスタ!?」
部屋から一歩出ると彼女を見つめるリセ。その名前に驚き、フレイアとイズムも顔を覗かせた。注がれる四人分の視線。フェスタは、階段の下からやや気まずそうな瞳で見上げてきた。
「……今晩は」