Story.10 幕間
「――そうだ、メノウちゃん」
白銀の髪の青年へ向けていた顔を黒絹の髪の少女へと戻し、彼女は言う。
「お願いがあるんだけど」
常に微笑みを絶やすことなく、彼女は可憐な声で続けた。
「はい」
『お願い』という言葉に、黒曜石の瞳は微かな期待を孕む。自分にとって、彼女の希望に従うことは喜びであり、それに応えることは幸せなのだ。
だが、少女の唇から零れた『お願い』は、
「世界を救う、お手伝い」
「――……え?」
朝食にしようか、と呼び掛けるいつもの声と同じ微笑みで。
何処までも日常的に、非日常的に。その願いは、小さな部屋に響いた。