Story.9 sugarcoat
†
「……さて」
二人が既に散っていった場所で、最後に一人残ったイズム。
彼女の、ふとした笑顔の間に見せる影は、薄々感じていた。そして、いつも明るいからこそ、それが暗く深いということも。光が強ければ強いほど、影が濃くなるというのは道理だ。その影がこういった形で現れるとは、さすがに予想していなかったが。
(……あんなに、必死な顔をして)
去り際のリセの表情を思出し、左手で不謹慎な笑みを隠す。追い掛けたなら、傷付くに決まっているのに。
そして、もう一人。
彼なら、もし自らの携帯水晶が奪われていなかったとしても、こうしていたのだろう。そういう人間だ。(……やっぱり馬鹿ですね、貴男は)
初めて会った時のことを思い出し、軽く苦笑する。そうだ、あの時も、自分より他人だった。
(……本当に)
――そのせいで、傷付く人間もいるというのに。そんな馬鹿と三年も付き合っているのだから、自分も人のことは言えないのだが。微笑を、一つ落として。
さて、そろそろ自分も行かなくては。
「……いい仲間をお持ちですね、フレイアさん」
「……さて」
二人が既に散っていった場所で、最後に一人残ったイズム。
彼女の、ふとした笑顔の間に見せる影は、薄々感じていた。そして、いつも明るいからこそ、それが暗く深いということも。光が強ければ強いほど、影が濃くなるというのは道理だ。その影がこういった形で現れるとは、さすがに予想していなかったが。
(……あんなに、必死な顔をして)
去り際のリセの表情を思出し、左手で不謹慎な笑みを隠す。追い掛けたなら、傷付くに決まっているのに。
そして、もう一人。
彼なら、もし自らの携帯水晶が奪われていなかったとしても、こうしていたのだろう。そういう人間だ。(……やっぱり馬鹿ですね、貴男は)
初めて会った時のことを思い出し、軽く苦笑する。そうだ、あの時も、自分より他人だった。
(……本当に)
――そのせいで、傷付く人間もいるというのに。そんな馬鹿と三年も付き合っているのだから、自分も人のことは言えないのだが。微笑を、一つ落として。
さて、そろそろ自分も行かなくては。
「……いい仲間をお持ちですね、フレイアさん」