Story.9 sugarcoat
「フレイア! フレイア…! ……ッ、何処……!?」
効率を考え、手分けして彼女を捜し始めた三人。とりあえず一時間は個人で行動し、もしリセかイズムが見付かったらその時点で魔法の光で合図、ハールが見付けたら先刻の場所で時間が経つのを待ち、そこで戻ってきた二人と合流、ということになっている。
今宵は月が綺麗だ。多少欠けてはいるものの、粋白の丸い光は透徹として、星屑を散りばめた夜空を美しく纏っていた。いつもなら見惚れている光景なのだが、生憎現在それはできない。余裕の問題と、それを共にしたい人間が居ない、という最も重要な問題によって。今はまだ大丈夫だが、近いうちには枯れてしまうであろう程の声を響かせ、リセは真夜中の森を早歩きで進んだ。呼ぶ名が木霊となって森中に響く。
「フレイ――……」
ふと、声が弱くなる。
いくら呼んだところで、姿を消したのは彼女からなのだ。果たしてその彼女が反応するかと言われると――――
「……きっと、大丈夫」
首を振ってその思考を払う。煌めく夜空の下、それとは逆の心境で、捜し人であり、そして友である少女の名を再び呼び始めた。