Story.9 sugarcoat

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「――っ……」
 再び、少女がその腕に収まる。しかし、それは先程とはまた別の『少女』。
 〈少女〉よりはだいぶ背が低く、髪は短かった。しかし、外見など問題ではない。さっきと同じように、作業を繰り返した。他愛も無い。自分には簡単なことだった。しかし、この行為の意味自体が理解不能だった。それを求める人物の意図も。
 ――解ろうなんて、思いもしないが。
 気を失っている『少女』を床に下ろす。これで、自分に課せられた命令は一段落だ。後は――――   
(此処に、居続けるだけ)
 自分に選択権などといったモノは無い。
 顔を上げれば、小さな窓から陽が差し込み始めていた。
 暁、というやつだ。
 これを世界は毎日、幾度と無く、何回も繰り返す。すべてに、夜明けはくる。

 ただ、この時代には――……

 明け始めた空を映すガラスのような瞳からは、感情が読みとれない。まるで、それそのものが無いかのように。

 世界は今日も繰り返す。この時代には、けしてこないこと。

 もうすぐ、夜が明ける。

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