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邂逅の夜
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シャボンディの泡が風に弾けて、消える。
クロコダイルは紫煙を燻らせながら、無言で船へと戻った。
甲板で待っていたダズ・ボーネスが姿勢を正す。
「ボス…、随分と騒がしかったようですが。」
クロコダイルは淡々と答えた。
「あぁ。”神様”を1人、砂塵にしてやった。」
ダズの目が一瞬だけ動く。
「…天竜人を?」
「クハハハ!そう言ってた奴もいたなァ。…ミイラの出来は上々だ。」
風がざらりと砂を運ぶ。
ダズはそれ以上、何も言わなかった。
長年仕えてきた男でも、クロコダイルの”怒り”に踏み込むほど愚かではない。
クロコダイルの腕にはまだダリアの姿があった。
ぐったりと眠るように気を失っている。
ダズが一瞥して問う。
「その女が例の?」
「…あぁ。使えるかもしれねェ道具だ。」
「道具、ですか。」
「この海で生き残るには水と知識がいる。この女はどちらも持っている。利用してやるのさ、クハハハハ。」
冷たい声。けれど、その眼差しの奥には見えない揺らぎがほんの一瞬だけ宿った。
ダズは黙って頷き、船室の方を指し示す。
クロコダイルはダリアを抱えたまま、自身の部屋の重い扉を開けた。その部屋の奥には、バナナワニが泳ぐ水槽。その傍らには、鉄格子で仕切られた檻があった。その中に簡素な寝台と机だけがある。
「…あんなゴミ共の手元に置くには惜しいが、俺なら有効に使うことが出来る。」
陰湿な笑みを浮かべながらそう呟くと、
ダリアを檻の中に放り投げ、扉を閉めた。
鉄が噛み合う音が静かな部屋に響く。
彼女が薄く目を開けた時、クロコダイルは既に背を向けていた。重い足音と共に、彼の声が部屋の外へ消える。
「安心しろ、水の魔女。俺はお前を殺さねェ。…まだ、な。」
葉巻の残り香が漂い、冷たい鉄の匂いと混じり合う。
檻の中のダリアは、自分の心がどちらの熱で震えているのかわからなかった。
______砂の檻に水が閉じ込められた夜だった。
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