SSS
ついったで書いた140字とSSのログページ
記事一覧
イエルヴ (ゼノクロ)
20150706(月)03:14
「私が…」言いかけた言葉が途中で止まる。伸ばした手が空を切り、相棒を抱えたイエルヴがその横を笑いながら通り過ぎていく。「私がいるじゃない…」低く小さな呟きはいつか彼に届くだろうか。そっと振り向いた視線の先で、胴体だけの相棒を抱いたイエルヴは、未だ涙を流して笑っていた。
ラオ (ゼノクロ)
20150703(金)03:16
無言で振り上げられた拳が頬に思い切り打ち込まれる。作り物などではない、生身の体に走ったどこか甘く柔らかな痛み。驚いて見下ろした先には薄く涙を浮べたヴィーゼの顔。「バカ!大バカ!ラオのバカ!」ぽかぽかと、続けざまに胸を叩かれる衝撃が。なぜだか無性に嬉しかった。
(あったかもしれない未来の話)鶴さに
20150702(木)03:19
「アハハ可愛い可愛い」人形を弄びながら笑う主に鶴丸の複雑そうな顔が向けられる。自分を模した人形を褒めるのはいいが男相手に可愛いはないだろう。再度向けた視線の先でぐりぐりと弄られている小さな自分。それに嫉妬する自分が、心底情けなくて泣けてきた。
(ねんどろ鶴で遊ぶ審神者)歌さに
20150626(金)03:24(主従逆転)
「主様!」
審神者の姿に気付くなり顔を綻ばせながら主の元へと走ってくる刀剣が一振り。一見少女のような姿をしているが、これでも審神者の初期刀として長らく近侍を務めている実力のある刀剣女士である。
「ああ、お帰り」と、審神者は駆け寄ってきた刀剣にふわりと微笑んでからその小さな頭を撫でてやる。しかしすぐに意地の悪い笑みを浮かべると、まるで子供を叱る教師のような声色で口を開く。
「でも、約束しただろう。僕と二人きりの時は何と呼ぶんだっけ?」
そう言われた刀剣はうっ…と言葉を詰まらせた後、主の顔を恥ずかしそうに見上げながら小さくその名を口にした。
「はい、…歌仙様」
よくできました、と再度撫でられた頭の下で真っ赤になってしまった刀剣の顔は、それでも幸せそうに綻んでいた。
さにじろ ※腐
20150612(金)12:41
戯れで交わした口付けは、酒と煙草が混じり合う最低の味がした。甘い雰囲気などそこにはなく、互いを射抜く視線すら、相手を殺さんばかりにギラついている。「最悪だ…」苦笑混じりの呟きは、はたしてどちらのものだったろうか。
ルー (ゼノクロ)
20150602(火)12:48
「ル・シルフェ。この命尽きるまであなたをお守りいたします」いつもと変わらぬ調子で紡がれた言葉に思考が止まる。ややあって、かあっと熱くなった顔で「ばっ!」と口にしながら見上げた顔。叫びたかった「バカじゃないの!?」は。空気を揺らすよりも早く、青い唇に優しく吸い込まれていった。
そねさに
20150503(日)22:19
本丸に着くなり走ってきた審神者らしき少女に泣きながら抱き付かれてしまった。先に来ていた浦島曰く「オレもやられた」らしい。寝る間も惜しんで自分達を探してくれたのだという小さな主。「来てくれて、ありがとう」そう呟いたくしゃくしゃの笑顔に、不思議と、救われるような気がした。
こぎさに
20150417(金)22:26
手入部屋の障子を開けると小さな主が白い虎と共に廊下で寝息を立てていた。大方私の帰りを待つ内に体力の限界が来たのだろう。起こさぬよう慎重にひょいとその体を横抱きにすると、不意に寝言で名を呼ばれ思わず口元が綻んだ。ここの者が過剰に主を構う理由が少し分かったような気がした。