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SSS

ついったで書いた140字とSSのログページ

記事一覧

  • 歌さに

    20150819(水)02:04
     
    無防備に眠る主の口へそっと指を添えてみた。小さく柔らかな唇がひどく甘美に誘っている。艶めくそこへすいと指を滑らせて、寄せた耳元で意地悪く囁く。「もう、起きているんだろう?」図星の彼女の返事の代わり。甘く噛まれた指先が、笑えるくらいに愛おしかった。

    ( 唇をなぞる指先 )
    (何気ない日常の中、恋仲の歌さに)
  • にほさに

    20150818(火)02:26

     ぱしんと乾いた音が響き、じわりと頬が痛くなる。睨めつけるように相手を見れば怒気を孕んだ視線に射抜かれた。「あまり苛めてやるな」それだけ言って踵を返した主人の背に不思議と笑いが込み上げる。「愛されてるねぇ…」嘲るような呟きに、果たして彼女は気付いただろうか。

    (↓その後の話)
  • へしさに

    20150818(火)02:17
     
    出陣先から戻るなり無言で長谷部に抱き竦められた。絞め殺されそうな力とは対照的に消え入りそうな声が耳朶を打つ。「俺は、永遠にあなたのものです」僅かに震える背に腕を回しながら「当たり前だ」と言ってやれば更に強くなる腕の力。肩を濡らした暖かな水には気付かないふりをしてやろう。

    (黒田回想後の話)
  • ほたさに

    20150817(月)02:31
     
    わぁ…と零れた声にすぐ隣から笑いが聞こえる。恥ずかしさで俯き、しかしすぐに「ほら」と横を向かされた。夜空を舞う蛍たちが一斉に彼の元へ集まり一際幻想的に光っている。たった数日だけの光景に感動しながらも寂しさを感じれば「また来年も来ようよ」と見透かされ、不思議と泣きたくなるのだった。

    ( 来年もまた此処で )
    (返事の代わりにそっと彼の手を取った。赤い顔は夜が隠してくれたけど、繋いだ手の熱だけは、きっとバレてしまうだろうな)(夏の夜、蛍丸と審神者の話)
  • 歌さに

    20150815(土)02:36
     
    万屋からの帰り道。不意に差し出された右手を同じく右手で握り返すと「そうじゃない!」と怒られた。暫し考えてハッと気付き、途端赤く染まる顔。恐る恐る触れた左手が存外強く掴まれて、驚き見上げたその先にほんのり赤いとろけるような笑顔があった。私は今日、溶けてしまうのかもしれない。

    ( 手を握る )
  • 歌さに

    20150814(金)02:38
     
    とろりとした顔で名を呼ばれ本能的に喉が鳴った。あれ程注意しろと言ったのにまた飲まされてしまったらしい。酔いが回った小さな体を布団へ横たえ耳元へ囁く。「主、僕は言ったはずだよ?」身を捩り薄く開かれた唇を自分のそれで塞ぎながらそっと素肌へ手を触れた。「もう、容赦しないからね」
     
    (酔いどれ注意)
  • 燭さに

    20150809(日)02:44
     
    「刀剣男士に恋?無い無い無い!」とは、数日前の自分の言葉だ。仲の良い審神者とそんな内容の話になり、本心から発した言葉だったのだが。今、とある場所に身を潜め両手で赤い顔を覆っている私としては、そんな過去の自分に土下座して謝りたい気分である。
    「見つけた!」
     がさがさと草木を掻き分け、背後より現れた刀剣の姿に思わず「ひっ!」と悲鳴を上げる。再度逃げ出そうと体を動かすよりも先に、黒い手袋に包まれた近侍の――燭台切光忠の手が私の腕をはしと掴んだ。
    「ちょっと、何で逃げるんだい」
    「だっ、て……」
    理由を言おうとして、再び顔が熱くなる。言えるわけがないじゃないか。事故でしてしまった口付けが原因で君に恋をしました、だなんて。
     赤い顔を隠すように俯けば、もう片方の手が私の頬にそっと触れる。
    「ねえ、あるじ」
     突然、絡みつくような声色が耳朶を打ち、心臓が痛いくらい跳ね上がった。
    「勘違いだったらごめんね。もしかしたら、僕らは…」
     恋をしてしまったのかもしれない。
     そう耳元で囁かれ、全身の力が抜けていく。倒れそうになった私の体を支えてくれた光忠の手は不自然なほど熱かった。顔を上げ、ようやくまともに見た、僅かに赤い彼の顔。
     うるさいくらいの胸の音は、はたしてどちらのものだろうか。
     
  • ししさに

    20150802(日)02:48
     
     うりゃ!という声と共に獅子王の腕が私を背後から抱き竦める。突然のことに驚いて大仰に体を跳ねさせた拍子に、思わず手にしていた洗濯籠を手放してしまった。「あっ」とどちらともなく声を出して同じタイミングで手を伸ばせば、バランスを崩した両者の体が共に地面へ吸い寄せられていく。
    「いってー…」
     強かに背中を打ち付けた私の耳横で獅子王の声が聞こえ、目を開けば鼻先が触れあう程の距離にあった彼の顔。洗濯したばかりのシーツに塗れ、両者の顔が見る見るうちに赤く染まっていく。
    「なぁ…」
     不意に、獅子王の低い声が私の耳朶を打つ。そして、普段じゃれてくる時のような無邪気さとは程遠い顔で口を開いた。
    「口付けても、いいか?」
     至極真剣な双眸が、子供の遊びは終わりだと、そう静かに告げていた。
     
  • ジャスティン (ゼノクロ)

    20150710(金)03:03
     
    もう誰もいない場所に立って、彼の見ていた世界を見渡した。夕焼けに染まったミラの空。行き交う人々の笑い声。世界はこんなにも広いのに、どうして彼には『正義』しか見えていなかったのだろう。それを彼に問うことは、もう二度と出来ないのだけれど。

    (セグメントトピック:ジャスティンのよく居た場所)
  • ジャスティン (ゼノクロ)

    20150709(木)03:06
     
    頭上のサイコランチャーから放たれた光線が相手の体を撃ち貫く。ややあってからどっと地面へ倒れ込む彼はそれでも幸せそうに笑っていた。「やっぱり…君は…僕の……」止めて、言わないで、笑わないで。――君は僕のヒーローだよ。あの日の君の無垢な笑顔が、今も脳裏に焼き付いている。