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 優しさと甘さが紙一重なように、優しさと阿呆もまた、紙一重なのではないだろうか。と、歌仙兼定は考える。
 月も沈み始めた薄暗い廊下で、いつも以上に眉間へと皺を寄せ、何をするでもなくじっと座り込む彼の背後にあるのは、使用中の札が掛かった手入れ部屋だ。
 出陣先で重傷を負った刀剣が担ぎ込まれ、それを追って涙目の主が部屋へと飛び込んでから既に半日以上。
 その間近侍である彼は、まるでただの物だった頃のようにその場から微動だにしなかった。
 理由は単純にして明快。
 いくら手負いで意識がないとはいえ、狭く薄暗い室内で主と他の男士とを二人きりになどさせたくなかったからだ。
 今はまだ時折鼻をすする音が聞こえるものの、もう半刻も経たない内に彼女は泣き疲れて眠ってしまうだろう。
 気弱なくせに警戒心が足りない彼女のこと。
 当然のように眠る男士の傍らで横になり、手入れが終わるまで同衾するであろう状況を想像すると、歌仙の眉間はますます深い皺を刻むのだった。

「ヒトの気も知らないで……」

 審神者に聞こえぬよう小さく零し、ため息と共に顔を上げる。
 いつの間にか月は隠れ、僅かに白む東の空。

──ああ、もう夜が明ける。

 しんと静まり返った明け方の本丸。
 残りの手入れ時間を確認し、歌仙は愛しい主を回収すべく部屋の戸へと手を掛けた。


 ほらもう朝になっちゃったよ

[ 17/01/10 ]
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