とうらぶlog
昼の暑さがすっかりと落ち着いた夕暮れ時。
全ての刀剣男士に休暇を与え、現世へと帰っていた審神者がやけに大きな荷物を持って本丸へと戻ってきた。
何故か得意気に開かれた荷物からは大小さまざまな花火が現れ、幼子のようにはしゃぐ主の提案で、夕餉の後に急遽花火大会が開催されることとなった。
「いくよ?」
片手に手持ち花火、片手に火をつける為の道具を持った審神者がそう言うと、彼女の近くに集まる短刀達が目をきらきらさせながら何度も頷く。
それを合図として火をつければ、眼前で色取り取りの火花が輝き出し薄闇の庭に鮮やかな明かりを灯し始めた。
皆しばしそれに見惚れた後、審神者に促されおっかなびっくり手にした花火へ火をつけていく。
初めは戸惑っていた刀剣達も次第に慣れていったようで、審神者から道具の使い方を教えてもらった後は我先にと花火に興じるもの、それを肴に酒を飲むものなど、皆それぞれに花火を楽しんでいるようだった。
「皆、楽しそうですね」
少しばかりはしゃぎ疲れたのか、皆の様子を離れた場所からぼんやり見つめていた審神者に突然声がかけられる。
驚きつつそちらを見やると、薄く笑みを浮かべた宗三左文字が小さな主を見下ろしていた。
意図的に距離を置いている彼にしては珍しいなと思いながらも、へにゃりと笑いながら「はい」と返事を返す審神者。
すると宗三はすぐに彼女から目を逸らし、明るく賑やかな方へと視線を流す。
「最初は、火を見て『綺麗』だなんて馬鹿馬鹿しいと思っていたんです」
どこか重い呟きに、審神者の表情があっ……と曇る。
「でも、不思議ですね。こうして見ていると、何だ本当に綺麗じゃないかって」
そう、思ったんです。
言って、審神者の方を向いた宗三の横顔を、誰かが打ち上げたであろう花火が照らす。
鮮やかで儚い光に浮かび上がった同じくらい儚げな笑みに、審神者は思わず見入ってしまった。
夜空を照らす大輪の花よりもあなたの方が綺麗じゃないですか。
そんな言葉を、胸の奥底にひっそりと隠したまま。
[ 2015/08/01 ]
参加log/お題提供 #深夜の真剣文字書き60分一本勝負
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