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とうらぶlog

 
「…隣、いいですか?」
 問いに対する返答は待たず、縁側で瞑想に耽っていた江雪の横に気落ちした様子の審神者が半ば崩れるように腰を下ろした。
 珍しい事もあるものだと江雪は内心で思いながら、かと言って特に声をかけることもなく長い沈黙だけが二人の間に流れていく。
「………江雪さんは」
 不意に審神者がやはりどこか生気のない声で沈黙を破った。
「江雪さんは、本気で和睦を信じてるんですか?」
 唐突な問いに江雪の眉が僅かに上がる。
「…何故、そのような?」
「ちょっと、分からなくなってしまって…」
 自分が、何と戦っているのか。
 そう呟いたきり、審神者は立てて折った自身の膝へ顔を埋めてまた黙り込んでしまった。
 何と戦っているのか分からない。
 漠然とした言葉だがその答えが単なる『敵』でないことは江雪にも何となくだが理解できた。
 彼女は政府に認められた審神者でありながら少しばかり変わった存在でもあるのだ。
 歴史修正主義者や検非違使との戦いを指揮する事とは別に、どこか遠い世界で自らも前線へと赴き戦っている。
 きっと今の問い掛けも審神者自らが望まずに倒さなければならない相手の事を言っているのだろう、と江雪は考える。
「…あなたは、優しいのですね」
「臆病なだけですよ」
 苦笑混じりに言いながら顔を上げ、どこか虚ろな視線を空へと向ける審神者。
 擬似的に作り出された空には、ほとんど変化することのない澄み渡るような晴天が広がっていた。
「………雨、降らないかな」
 ぽつりと呟かれた言葉に江雪は「何故?」と首を傾げる。
「雨ってもの悲しいですけど、見ていると心が洗われるような気がするんですよね」
 何だか私の代わりに泣いてくれているような気がして。
 そう言ってへにゃりと笑った審神者を見て江雪は静かに目を閉じる。
 彼女が抱えているものが何なのかは分からない。けれど少しくらいならば、主の力になれることがあるはずだ。
「…待ちましょうか」
「えっ?」
「雨が降るのを、です。私には、共に待つことしか出来ませんが。その代わり、いつまでもお供しますよ」
 一瞬だけふわりと笑ってから再び目を閉じて瞑想を始めた江雪。
 空は相変わらず真っ青に染まったままだったが。目尻に薄く涙を浮かべ「ありがとうございます…」と呟いた審神者の心は、ほんの少しだけ洗われていたようだった。

(2015/05/03)
参加log/お題提供 #刀さに版深夜の審神者60分一本勝負
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